2018 Fiscal Year Research-status Report
堆積平野の地震波伝播を考慮した建築物のリアルタイム地震応答予測
Project/Area Number |
17K01333
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Research Institution | Railway Technical Research Institute |
Principal Investigator |
津野 靖士 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 鉄道地震工学研究センター, 副主任研究員 (50644738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 浩明 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00212291)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 堆積平野 / 北摂地域 / 2018年大阪府北部の地震 / 表層地盤 / サイト増幅 / 計測震度 / 微動アレー探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
北摂地域から20km程度離れた箇所で2018年6月18日に大阪府北部の地震(Mj 6.1)が発生し、余震データを取得することにより北摂地域に対して異なる震央方位から得られる地震動を新たに分析することが可能であるため、2018年6月18日に発生した大阪府北部の地震(Mj 6.1)の余震観測と構造調査を実施した。本研究では北摂地域を現地調査地とし、計9地点において2018年6月21日から約2ヶ月半の間、連続余震観測を実施し、地下構造と地震動特性との関係を把握した。 大阪府北部の本震では、北摂地域に位置する箕面市粟生外院において震度6弱が観測され、北摂地域において大きな地震動入力があったことが示唆された。そのため、2018年6月18日に発生した大阪府北部の地震の後、粟生外院1地点および北摂地域の他8地点において、余震観測を実施した。取得した余震データを分析した結果、他の北摂地域では粟生外院よりも大きな計測震度が観測された地点があることが分かった。余震観測データを用いて、岩盤サイトに対するスペクトル比を算出した結果、本震時震度6弱を観測した粟生外院と同等あるいはそれ以上に、表層地盤により地震動が増幅される地点があることが示された。特に、北摂地域の中心部に位置する余震観測点E06では周波数3Hz以上の地震動が大きく増幅されることが分かった。各観測点における余震データの計測震度を用いて、粟生外院に対する計測震度(SI)差を算出した結果、E06は粟生外院よりも計測震度で1程度大きくなる傾向があることが分かった。また、微動アレー探査による構造調査結果より、E06は他余震観測点と比較して深さ10m程度の表層に、S波速度がより低速度である堆積層が存在することが分かった。以上より、2018年大阪府北部地震では、表層構造の差異により北摂地域で地震動分布が異なったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本テーマの研究開発では、“リファレンス観測点の地震記録を利用して、長周期地震動と高層建築物応答をリアルタイムで予測する手法を開発する”ことを主目的としている。一方で、2011年東北地方太平洋沖地震では、関東平野で卓越していた周期2~3秒の地震動に対して実体波成分の寄与が大きかったことが指摘されており、北摂地域における鉛直方向地下構造の不均質性より増幅される実体波について、2018年大阪府北部の地震で取得したデータを利用して検討した。上記「研究実績の概要」に示したように、2018年6月18日に発生した大阪府北部の地震(Mj 6.1)において、北摂地域に位置する粟生外院では震度6弱が観測されたが、その要因として表層地盤の増幅効果が大きいことが明らかとなった。 本余震データの分析により、実体波はサイト直下の地震動増幅の影響を受けるため、実体波地震動を早期予測する際は、現在公開されているKiK-netの地中地震計で取得された地震データとサイト直下の地下構造によるグリーン関数を利用することで地表面の地震動を予測することが有効である。一方で、堆積層を伝播する表面波地震動を早期予測する際は、現在公開されているK-NETやKiK-netの地中地震計で取得された地震データと堆積平野を伝播するグリーン関数を利用することで地表面の地震動を予測することが有効である。
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Strategy for Future Research Activity |
実体波が卓越する地震動と表面波が卓越する地震動を早期予測することを目的として、鉛直方向(実体波対象)と水平方向(表面波対象)に対する堆積平野の地震波伝播について、関東平野を対象としてリファレンス地点から対象地点のグリーン関数を抽出する。また、建築物のリアルタイム地震応答予測を実施するため、東工大・すずかけ台キャンパスの高層建築物に設置された地震計で観測された地震記録を収集・整理し、建築物の振動特性あるいはグリーン関数を評価する。さらに、簡易に微動データから建築物の振動特性あるいはグリーン関数を評価することが可能かを検討する。最後に、関東平野を対象として、表面波が堆積層を伝播するグリーン関数と建築物のグリーン関数を掛け合わせることで、リファレンス地点の地震データから建築物のリアルタイム地震応答予測を行い、その予測精度について検討する。
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