2018 Fiscal Year Research-status Report
地震時の斜面災害に対する緊急輸送道路の復旧性に関する研究
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17K01343
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
酒井 久和 法政大学, デザイン工学部, 教授 (00360371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 祐輔 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00346082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 道路規制 / 斜面 / 盛土 / 地震動 / 復旧性 / 道路ネットワーク / ディープラーニング / 孤立 |
Outline of Annual Research Achievements |
①粒子法の一種であるSPH法により,2008年岩手・宮城内陸地震の際の荒砥沢地すべりの再現解析を行った.砂岩・シルト岩が地震時の間隙水圧に伴いせん断強度が低下したことが考えられ,残留内部摩擦角を見かけのせん断抵抗角まで低減することにより,実被害の流動量・残留変形の特徴が良好に再現された.人工粘性の値を適切に設定することで,荒砥沢地すべりの様な大変形を伴う問題に対してもSPH法が適用可能であることを示した. ②各自治体の斜面カルテに加え,実行雨量,地質図,土壌図,植生図等を使用するとともに,斜面の安定性に関する地質学的な知見を反映させることで,斜面崩壊発生の因子の把握,共分散構造分析に基づいた検討を行った.既往の理学的研究成果と整合する傾向がみられたが,適合度が必ずしも十分ではなく,パス図の改良が必要である. ③中山間地域の道路ネットワークにおいて,地震時斜面崩壊によって引き起こされる道路閉塞の発生確率を考慮した集落の孤立に関わる冗長性の評価手法を検討した.実在する道路ネットワークを対象とした場合,星谷・山本(2002)のRedundancy Indexを用いた評価では,連結確率に基づく評価に対する優位性は見いだせなかった. ④道路盛土に甚大な被害を受けた111箇所の地震被害データを基にしてディープラーニングを用いた分析と予測を行った.その際,過学習を防ぐためのDropoutと,効率化と学習率の設定が不要なAdamを導入,交差検証による評価を用いた改良モデルで検証をした.結果,データが少なく実用できるモデルは構築できなかったが,将来的には有効性があることが確認された. ⑤法政大学,鳥取大学,台湾成功大学,京都大学の研究者によるミニシンポジウムを実施した.また,近畿地方整備局道路部,東日本大震災時に陣頭指揮にあたった調整官から災害対応,復旧時の状況について聞き取り調査を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時は平成30年度に,①地震時における斜面の崩壊解析の感度分析による簡易耐震性評価手法の改善と崩壊規模の検討②崩壊規模と道路復旧期間との相関分析,を計画していた. ①詳細解析手法について,解析プログラムの3次元化,安定化,並列計算による高速化と,感度分析による実崩壊現象の再現が実施できた.また,簡易的耐震性評価手法について,当初計画になかった実行雨量を加え,新たに共分散構造分析を導入した.いずれも改善の余地はあるものの手法の大幅な進展があった. ②道路復旧期間の予測について,数量化理論第Ⅰ類に加えてディープラーニングによる検討を行った.また,当初予定にはなかったが,道路の復旧期間に影響を及ぼす要因について,国土交通省の担当者に聞き取り調査を実施した. ③共同研究者の鳥取大学小野教授,海外共同研究者の台湾成功大学WU教授に加えて,京都大学の研究者によるミニシンポジウムを開催し,研究成果の公表並びに質疑応答による問題点,課題の抽出を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
①SPH法プログラムおよび簡易耐震性評価手法の改良を引き続き行う. ②30年度国土交通省への聞き取り調査によって,協力会社が道路復旧期間に大きな影響を与えることが判明した.31年度は,東北地方太平洋沖地震で道路啓開に携わった協力会社に聞き取り調査を行い,そのデータを道路復旧期間の予測に反映させる. ③地震時斜面崩壊によって引き起こされる道路閉塞の発生確率を考慮して,道路ネットワークの冗長性評価を行う.
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Causes of Carryover |
平成30年度に実施予定であった,当該年度の研究成果のとりまとめのための研究代表者との打ち合わせの日程調整がつかず,メールのやり取りで実施したため,未使用額が生じた. 平成30年度の研究成果のとりまとめに関わる研究代表者との打ち合わせを今年度の早い時期に実施することとし,未使用額はその経費に充てることにしたい.
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