2017 Fiscal Year Research-status Report
動的ストレッチ刺激に対する骨芽細胞カルシウムシグナル制御機構の解明
Project/Area Number |
17K01361
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
佐藤 克也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (10403651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 和幸 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00229759)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞バイオメカニクス / メカノトランスダクション / MEMS / 力学刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,30分程度の持続的な繰り返し伸縮刺激の付与を可能とするための細胞伸展マイクロデバイスの改良を行った.具体的には,繰り返しの変形にによって破損する恐れのあった弾性ヒンジアーム部を廃した,新しい構造の細胞伸展アレイデバイスの設計および製作を行った. このデバイスでは,シリコーンエラストマー製のシートを感光性樹脂であるSU-8のブロックによって直接カバーガラス上に固定する構造を採用し,既存のデバイスにおいて破損が懸念されていた弾性ヒンジ構造を廃することに成功した.また,ストレッチシートに変形を与えるための金属針を設置する接続部にも,伸縮の往復運動に対応した新しい構造を採用した.これらの改良により,1Hzの繰り返し周期で30分間の連続した伸縮刺激の付与を達成することができた. 一方,当初の計画では,細胞に付与する繰り返し伸縮刺激の周波数は1Hzから30Hz程度を想定していた.金属針を駆動するピエゾアクチュエーターに所望の伸縮運動をさせるために様々に変化させた駆動電圧を印加して細胞伸展アレイデバイスの動作を確認したところ,1Hzから30Hzの全ての周波数帯において均一なストレッチシートの変形が得られるわけではなく,特定の駆動周波数においてストレッチシートに生じる引張りひずみが極端に小さくなるあるいは大きくなる場合があることが分かった.これは,ピエゾアクチュエーターおよび金属針を保持するマイクロマニピュレーターのマウント部の剛性が不足しており,これによって特定の周波数において共振現象が生じていることが原因として考えられた. 1Hzから30Hz程度の周波数帯域において,所望の繰り返し伸縮刺激の付与を実現するために,マイクロマニピュレーターおよびピエゾを保持するマウントを既成品ではなく剛性を高めた自作品とすることでこの問題を解決することを目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,30分程度の持続的な繰り返し伸縮刺激の付与を達成するための細胞伸展マイクロデバイス改良を計画していた. 研究の進捗状況としては,当初の懸念事項であった繰り返し変形による破損の恐れがあった弾性ヒンジアーム部について,これを廃した新規の細胞伸展マイクロアレイデバイスを開発することに成功した.その結果,1Hzで30分間程度の繰り返し伸縮刺激の付与が実現できることを確認した.この点については,当初の計画通りに研究を進めることが出来た. 一方,繰り返し伸縮刺激の周波数については,当初の計画では1Hzから30Hz程度の周波数帯域で繰り返し伸縮刺激を付与する計画であった.しかしながら,実際にこれらの周波数帯域で細胞伸展マイクロアレイデバイスの駆動実験を行ったところ,ある特定の周波数において,想定した変形量よりも大幅に小さいあるいは大きい引張りひずみがストレッチシートに生じることが分かった.この点については,当初の計画では想定していなかった問題であり,デバイスを駆動するピエゾアクチュエーターおよびマイクロマニピュレーターのマウント方法を改良する必要がある. 上記のような問題が生じたが,所望の引張りひずみを付与できない周波数はある特定の周波数のみであり,その周波数を除けば当初の目標であった30分程度の持続的な繰り返し伸縮刺激の付与は可能であり,当初の計画に対して研究は概ね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には,まず前年度に生じた問題である,1Hzから30Hz程度の周波数帯のある周波数において,細胞伸展マイクロアレイデバイスに所望の引張りひずみを付与できないという問題について,対策を講じる.具体的には,ピエゾアクチュエーターおよびマイクロマニピュレーターのマウント部を剛性を高めた自作品とすることで共振周波数を高周波数側へと変化させ,本研究で使用する1Hzから30Hz程度の周波数帯では所望の繰り返し伸縮刺激の付与を達成する. デバイス駆動部の改良に続いて,当初の計画である繰り返し周波数や引張りひずみ振幅を変化させた場合の細胞のカルシウムシグナル応答特性変化について明らかにする実験を開始する.
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Causes of Carryover |
当初予定していた所要額に対して,実支出額が小さくなり次年度使用額が発生した理由は,当初計画していた消耗品の所要額に対して,実際に使用し購入した消耗品の支出額が小さかったためである. 次年度の支出計画において次年度使用額は消耗品の購入に充てる計画である.研究計画の進捗が順調であれば,次年度において使用する細胞培養試薬関連の消耗品は所要額が増える見込みであるため,その増加分に充当する.
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