2017 Fiscal Year Research-status Report
ケミカルダイレクトリプログラミングによるヒト網膜色素上皮細胞の直接誘導法の開発
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17K01365
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
倉橋 敏裕 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00596570)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界初のiPS細胞の臨床応用は加齢黄斑変性の治療に適用された。一方で、ES/iPS 細胞を用いた臨床応用では、残存する多能性幹細胞の混入や遺伝子導入による予期せぬ腫瘍化リスク、時間・コストを要するといった問題点の克服が必要とされている。そうした問題点を克服する手法として、ある種の体細胞から他の種類の体細胞を、多能性幹細胞を経ることなく直接誘導する手法(ダイレクトリプログラミングと呼ばれる)が近年注目されおり、これまでにいくつかの細胞種に関して報告されてきた。しかし、それらはいずれも遺伝子導入を伴うもので、移植後の腫瘍化リスクの問題点などが依然のこる。そこで所属研究室では、そうした遺伝子導入を用いた既存のダイレクトリプログラミングの問題点も克服する目的で、遺伝子導入を用いずに低分子化合物を用いたダイレクトリプログラミング法の開発に取り組んだ。その結果、ヒト線維芽細胞を神経細胞や褐色脂肪細胞へ直接誘導する手法の開発に成功した。本研究では、この直接誘導法(ケミカルダイレクトリプログラミングと呼ぶ)を改変・発展させ、社会的要求度、臨床応用への技術的基盤が整っている点に着目し、網膜色素上皮(RPE)細胞を低分子化合物で直接誘導する手法の開発を目指す。これまでに、神経細胞直接誘導の場合と同様に線維芽細胞特異的な遺伝子発現を減少させ、形態的に上皮様細胞へ誘導する低分子化合物の組み合わせを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経細胞の直接誘導に用いた低分子化合物を改変することにより、網膜色素上皮細胞の直接誘導法の開発を試みているが、並行して、抜本的に神経細胞誘導とは異なる手法による直接誘導法の開発も検討している。そこで、低分子化合物の組み合わせをより迅速に評価し、より簡便に細胞分化の状況を確認するために、網膜色素上皮細胞に特異的に発現しているマーカー遺伝子のプロモーター領域を緑色蛍光タンパク質(GFP)の上流に挿入したレンチウィルスベクターを構築した。現在までに、そのレンチウィルスベクターをヒト線維芽細胞に導入したレポーターシステムを作製した。また、ポジティブコントロールとして用いる目的で、既に網膜色素上皮細胞への分化誘導系が確立されているiPS細胞に同様のレポーターベクターを挿入したレポーターシステムも作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、神経細胞の直接誘導に用いた低分子化合物を改変することにより網膜色素上皮細胞の直接誘導法の開発を試みるとともに、抜本的に異なる低分子化合物の組み合わせを検討する。その際に、初年度に作製した網膜色素上皮細胞特異的レポーターシステムを用いて、より広範な化合物の検討を試みる。
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