2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞配置と力学的刺激の複合効果がもたらす毛髪および皮膚附属器官の完全生体外再生
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17K01369
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮田 昌悟 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70376515)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 毛包再生 / 物質拡散 / 三次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は毛乳頭および表皮細胞への分化を想定する2種の幹細胞を層状に配置したマイクロゲルビーズ作製技術を確立した.手法としては,低接着性または通常の細胞培養シャーレ上にコラーゲン溶液に懸濁したマウスES細胞をマイクロインジェクタで滴下し,さらに直上にマウス胎児由来表皮細胞を含むコラーゲン溶液を滴下することで層状のマイクロゲルビーズ構造を構築した.さらに,第1層にあらかじめ生理活性物質を包含するゲル層を用意することでゲルビーズ中心部から外縁に向かう生理活性物質の濃度勾配を構築し,それぞれの細胞の分化および2種細胞の相互作用を誘発することで毛髪組織の形成をはかった.その結果,2種の細胞の境界部で内部に角質層を有する同心円状の構造体,すなわち毛包様組織の形成を認めた.また,数値解析による生理活性物質の拡散速度評価を行ったところ,濃度勾配の形成はゲルビーズ作製後の2-5時間程度に限定され,初期の短時間の濃度勾配の形成が毛包様組織の構築に重要であることが明らかとなった. 本年度はさらに上記,毛包様組織に力学的刺激を印加するためのデバイス開発のための基礎的なデータの取得を目的として,皮膚由来の細胞が組織のリモデリングを行う際に組織内部に生じる収縮力の測定を実施した.手法としては,ヒト新生児由来の細胞をコラーゲンゲルに包埋し,端部を固定してさらに一端を荷重検出器に接続することで組織のリモデリング糧における収縮力のモニタリングを行った.その結果,包含される細胞数や培養液への添加因子の有無により収縮力の変化が異なることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通りにマイクロゲルインジェクションを応用した複数種の細胞を層状に包含するマイクロゲルビーズ作製技術を構築している.さらに,ビーズ中心層に生理活性物質含有層を構築し,ビーズ外縁部に向かって濃度勾配を形成させることで毛包様組織の形成を認めるまでに至った. その一方で,当初予定していたせん断力は毛髪組織形成に適する力学的因子ではない可能性が懸念されたことから,予定していた力学的刺激の印加デバイスの開発ではなく,皮膚系細胞が組織リモデリングを行う際の収縮力の測定を行うこととした.そのため,予定していた力学的因子の印加デバイス開発は未達であったが,皮膚系組織のリモデリング過程における収縮力のリアルタイム計測によって実際に組織のリモデリングにおいて必要な力学的因子が明らかになった点の意義は大きいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果により,毛包由来組織を形成可能な培養組織の構築が可能となり,さらにその際に印加すべき力学的因子についても明らかになってきている.次年度は特に力学的因子に着目し,力学的因子の与え方が皮膚系組織のリモデリングに与える影響を明らかにすることで,最終目的である大規模な生体外での毛髪組織再生技術を実現するための知見を得る.
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