2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来神経移植による認知機能回復の試みと神経再生メカニズムの解析
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17K01378
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤原 成芳 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (50365425)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経移植 / 認知症 / ヒトiPS細胞 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度も、ヒトiPS(hiPS)細胞から神経幹/前駆細胞を分化誘導し、認知症モデルマウス(PDAPPマウス)に移植する実験に関しては継続して行った。これまで同様にモリス水迷路(MWM)を用いて認知機能改善評価を行った。低下した認知機能が神経移植により改善できる事について十分に再現性を得ることが出来た。実験数は50例以上となっている。 認知機能改善の見られたマウスの脳サンプルに於いて、嗅内野近傍に神経トレーサーを挿入したところ、移植神経細胞を中心に強い軸索の伸張のシグナルが見られた。このサンプルにシナプス形成マーカーであるシナプシンやシナプトフィジンに対する抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、移植神経細胞が移植神経細胞間でシナプスを形成し新しい神経回路を形成している可能性と、移植神経細胞がレシピエントの神経細胞とシナプスを形成してレシピエントの神経回路を再生している可能性が示唆される結果を得た。 さらにGABA神経のマーカー(VGAT)に対する抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、海馬内における再生された神経回路には主にGABA神経が局在していることが判明している。 これらの結果から、海馬内における主たる再生神経はGABA神経であり、移植によるGABA神経の再生と軸索の再構成が、認知機能の改善に寄与している可能性が考えられる。 この実験の過程で2つ新たな知見が得られた。1つは神経移植により、認知機能のみならずMWMにおけるマウスの行動様式が改善すること、もう1つは移植部位とは遠位にある大脳基底核、内側中隔部位に移植細胞由来の神経細胞が存在し、この神経細胞はコリン神経であることの2点である。現在、これらの新しい知見に対する詳細な検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、平成30年度の予定であったトレーサーを用いる実験と軸索形成に関する実験を予定通り行えたことが挙げられる。また平成30年度の研究過程で、神経移植により、認知機能のみならずMWMにおけるマウスの行動様式が改善すること、また移植部位とは遠位にある大脳基底核、内側中隔部位に移植細胞由来の神経細胞が存在し、この神経細胞はコリン神経であるという予想外の知見を得ることが出来、このことについて現在検討を始めていることがおおむね順調に進展していることの理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度に向けては、当初移植神経細胞の生着、移動におけるケモカインやケモカインk受容体、及び細胞細胞接着因子の関与に関する検討を行う事を予定としていたが、先に述べたように平成30年度の研究過程で、神経移植により、認知機能のみならずMWMにおけるマウスの行動様式が改善すること、また移植部位とは遠位にある大脳基底核、内側中隔部位に移植細胞由来の神経細胞が存在し、この神経細胞はコリン神経であるという実験結果を得たことから、こちらの方が重要度が高いと考えこの2つを中心に検討する予定である。行動様式についてはMWMのパラメーターについてより詳細に解析を行い、また大脳基底核、内側中隔部位に局在する神経細胞については組織免疫染色を中心に行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度内に発注した消耗品の納品が間に合わず、次年度使用額が生じた。少額なので、翌年度の研究計画は変更無く行う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Propionate-producing bacteria in the intestine may associate with skewed responses of IL10-producing regulatory T cells in patients with relapsing polychondritis.2018
Author(s)
Shimizu J, Kubota T, Takada E, Takai K, Fujiwara N, Arimitsu N, Murayama MA, Ueda Y, Wakisaka S, Suzuki T, Suzuki N
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Journal Title
PLoS One
Volume: 20
Pages: e0203657
DOI
Peer Reviewed
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