2017 Fiscal Year Research-status Report
新規融合プロセスを用いた血管ネットワークを有する三次元硬組織の構築
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17K01396
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
本田 みちよ 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (20384175)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管新生 / 骨再生 / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マイクロビーズと血管新生因子を組み合わせ、血管侵入をサポートできる骨再生環境を作出することを目的としている。さらに、足場材料となるビーズと細胞を複合化する際には、毛細血管網を有する血管内皮細胞と骨芽細胞からなる骨膜様シートをビーズへ被覆する。このプロセスを用いると理論的には血管新入を促進し、三次元的な構造を有する骨組織の「タネ」を創製できると作業仮説を立てた。さらに、その「タネ」を積層することで、シート由来の細胞からマイクロビーズ間にも血管ネットワークを構築することができると考えた。そこで、本研究では、足場材料としてこれまでに創製に成功しているスキャフォルド(AFS) を基盤材料として用い、これを小型化することを提案している。また、コントロールとしてNEOBONEを利用し、さらに血管新生誘導因子の一つであるperiostinを担持させ、マイクロビーズへの細胞や組織の侵入性について評価することとした。今年度は、ビーズの元となるスキャフォルドとコントロールビーズへperiostinを担持させ、ラット背部皮下へ埋入することによりその生体内反応と血管新生能について評価した。 微細構造の異なる2種類の足場材において、細胞は内部までに侵入していた。特に気孔率の高いAFSでは非常に高い細胞増殖性と侵入性を観察することができた。また、periostinによる血管新生能の有効性について調べるために、血管新生のマーカーとなるタンパク質について、組織学的観察を行ったところ、2種類の足場材においてマーカータンパク質の発現が認められた。また、それらは、periostinが存在することにより有意に発現量が増大した。以上のことから、血管新生能を有するperiostinを担持させた足場材において、微細構造を制御することにより内部への血管新生も制御できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、足場材料の微小化を行うための基盤材料として、水酸アパタイト(HAp)からなる気孔率の異なる多孔質スキャフォルドApatite-fiber Scaffold (AFS)と市販品の顆粒状ビーズを用いて、血管新生能を有するperiostinを担持させることにより、その生体内反応(細胞侵入性・血管新生能)をin vitro, in vivoにおいて評価した。はじめに、材料の微小化(ビーズ化)についてであるが、ハンドリング性、すなわち、機械的強度を向上させるためには、足場材の気孔率を70~80%程度に向上させる必要性があることが分かった。しかしながら、気孔率を低下させることは、細胞の侵入性を低下させることにつながり、細胞が材料の表面上に局在する傾向が高まった。一方、高気孔率のスキャフォルドにおいては、足場材内部にまで細胞の侵入を確認できた。これに対して、気孔部では両足場材において細胞の良好な侵入が見られ、細胞侵入可能な気孔径を有することが重要であることが明らかになった。また、両足場材ともにperiostinを担持させたことにより、細胞の侵入性が促進され、さらに、血管内皮細胞のマーカーであるCD31や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を発現する細胞が多数見られた。新たに形成された血管は骨形成に必要な栄養素の運搬を担うだけでなく、血管新生は骨の形成に連動することがわかっている。Periostinを担持させた足場材を利用することで、三次元的な構造を有する骨組織の「タネ」を創製できる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、骨膜様シートの創製とその生物学的評価およびマイクロビーズと骨膜様シートの複合化とその生物学的評価に取り組む予定である。 平成30年度は、ビーズを被覆するための細胞には、血管内皮細胞と骨芽細胞からなる骨膜に類似した細胞シートを利用する。先行研究の結果から、毛細血管網を有する細胞シートを作製するためには、細胞種によって各細胞の混合比率や用いる培地などの培養条件を調整する必要があることが分かっている。本研究では、ヒト骨肉腫由来骨芽細胞MG-63とヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを用い、細胞シートの作製を試みる。この時、ビーズを完全に被覆できるシートを得るために、培養基材には、温度応答性細胞培養基材等(Up Cell; materialstoday, 7, 42-47 (2004))を利用する。高密度な血管ネットワークを有し、高い骨分化レベルを発現し、かつ、ビーズとの複合化が可能なハンドリング性を有する条件を決定する。この際、シート単体での血管形成能、骨分化能についても生物学的評価を実施する。
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Research Products
(8 results)