2018 Fiscal Year Research-status Report
新規融合プロセスを用いた血管ネットワークを有する三次元硬組織の構築
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17K01396
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
本田 みちよ 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (20384175)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管新生 / 骨再生 / バイオマテリアル / スキャフォルド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マイクロビーズと血管新生因子を組み合わせ、血管侵入をサポートできる骨再生環境を作出することを目的としている。さらに、足場材料となる材料と細胞を複合化する際には、毛細血管網を有する血管内皮細胞と骨芽細胞からなる骨膜様シートを材料へ被覆する。このトップダウンプロセスを用いると理論的には血管新入を促進し、三次元的な構造を有する骨組織の「タネ」を創製できると作業仮説を立てた。 今年度は、材料を被覆するための骨膜様シートの作製とその生物学的評価を実施した。細胞には血管内皮細胞と骨芽細胞を用い、これらを共培養することにより、毛細血管構造を有するシート状の細胞の作製を試みた。その結果、2つの細胞を共培養することにより、骨芽細胞の分化レベルが著しく上昇し、培養1週間程度で毛細血管網が形成されることが明らかになった。さらに、この時、形成された血管様構造の周辺には、骨分化マーカータンパク質の高い発現が認められた。また、異なる2つの細胞間にはギャップジャンクションが形成されていることも分かり、これを介して両細胞がシグナルを伝達することで、骨分化と毛細血管網の形成を促進させていると推察された。一方、骨芽細胞と血管内皮細胞を2週間以上培養することで、骨芽細胞単独で培養した場合に比べ、細胞外マトリックスが旺盛に合成されていることも確認した。細胞外マトリックスが十分形成された細胞は細胞-細胞間で強固な結合が形成されており、弱い物理刺激を加えるだけで細胞をシート状のまま培養皿から剥離することが可能であることが分かった。さらに、この細胞シートはピンセット等でハンドリングすることができ、今後材料を被覆する際に必要となる力学的強度を有していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、材料を被覆するための骨膜様シートの作製とその生物学的評価を実施した。 先行研究の結果から、用いる細胞種の増殖能に依存し、骨芽細胞と血管内皮細胞の混合比率によって骨分化レベルが変化することを明らかにしている。そこで、本研究では、まず、共培養時の最適な培養条件を決定することを試みた。その結果、本研究で用いた骨芽細胞(MG-63)と血管内皮細胞(HUVEC)の混合比が1:4である時、高密度な血管ネットワークを有し、高い骨分化レベルを発現する細胞集合体を得ることができた。一方で、培養日数の経過と共に、培養系におけるHUVECの割合自体は減少することが分かった。また、この時、共培養することにより形成されたスフェロイド状の細胞塊に注目すると、紫色に濃染されたアルカリフォスファターゼ(ALP)活性が高いものと褐色に染色されたALP活性が低いものが混在していたが、細胞塊の周囲には必ず毛細血管様構造の細胞が局在していた。 一方、骨芽細胞と血管内皮細胞の共培養は、骨分化の初期に影響が強いとの報告が多いが、骨分化後期における影響については不明な点が多い。そこで、骨分化後期のマーカーであるオステオカルシンの発現について調査した結果、スフェロイド状の細胞塊はオステオカルシンを発現しており、その周囲には血管内皮細胞のマーカ-タンパク質が局在している様子が観察された。また、Alizarin red S染色によりカルシウムの沈着について調べたところ、細胞塊を中心にカルシウムが沈着している様子も観察された。これらの結果は、骨芽細胞と血管内皮細胞を共培養すると、骨分化の初期だけではなく、骨分化の後期においても分化を促進することが可能であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、材料と骨膜様シートの複合化とその生物学的評価を実施する計画である。具体的には、これまでに検討した種々の形状の材料を骨膜様シートで被覆することにより骨のタネを作製する。ここで材料内部へ細胞を侵入させるためには、physicalな修飾を用いる予定である。それにより、細胞‐細胞間の接着、結合が可能となると考えている。さらに、細胞侵入を促進するだけではなく、ボトムアップにより構築する立体組織表面にも高密度な血管ネットワークを形成できるよう、培地の循環や酸素の供給について検討する。得られた立体構造体をこれまでと同様に、生物学的な評価を実施し、新規融合プロセスを用いた血管ネットワークを有する三次元硬組織体の機能性について評価する。
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Research Products
(8 results)