2018 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症作用を有する機能性タンパク質フィルムの創製と炎症性疾患治療への応用
Project/Area Number |
17K01401
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山添 泰宗 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (00402793)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質 / 活性酸素 / 腸炎 / フィルム / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性疾患の病変部では、過剰な活性酸素や炎症性サイトカインが存在し、病気の悪化の原因となっている。そこで、炎症性疾患の治療薬として、活性酸素を除去する酵素や炎症性サイトカインに結合する抗体などのタンパク質が注目されている。本研究では、4種類のタンパク質(SOD、カタラーゼ、抗体、アルブミン)を用いて、活性酸素や炎症性サイトカインを除去する機能を備えたタンパク質フィルムを作製し、潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸炎の治療に応用することを目的としている。 本年度は主に、マウスの腸を用いて、炎症が起こっている腸の表面にタンパク質フィルムを接触させる方法について検討を行った。方法としては、マウスの腸とほぼ同じ太さ(外径 3 mm)のシリコン製チューブの外表面にフィルムをコーティングしたデバイスを大腸に挿入する方法と微小なタンパク質フィルム(直径 100~500μm)の分散液を腸の内部に投与し、腸の表面にフィルムを付着させる方法の2通りを検討した。これらの結果、①実験手技や今後の医療応用への展開を考慮した場合、微小フィルムを投与する方法が望ましいとの結論を得た、②微小フィルムのサイズが小さいほど、腸の表面に貼り付きやすい傾向があることが分かった、③微小フィルムの表面をポリエチレンイミン(正電荷ポリマー)やカーボポール(架橋型アクリル酸共重合体)などの高分子化合物でコートすることで腸への付着性が向上することが分かった。 これらに加え、フィルム内部のタンパク質の高次構造変化を円偏光二色性(CD)を利用して、定量的に評価する手法を確立することができた。また、フィルムに組み込んだ抗体が1ヶ月の長期保存後も抗原結合能を保持していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、タンパク質フィルムの作製とフィルムのin vivo評価を目的としている。フィルムに関しては、得られた研究結果をもとに、これまでの研究において蓄積しているデータも合わせて、2本の論文をまとめることができた。また、フィルムのin vivo評価に着手し、腸の表面へのフィルムの付着方法について有用な知見を得ることができた。さらに、ミエロペルオキシダーゼ活性を指標に、腸の炎症の程度を定量的に評価する手法を確立することができた。以上のことより、現在までのところ、目標達成に向けて研究がおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質フィルムを大腸炎モデルマウスの腸の表面に効率よく貼り付け、腸に付着したフィルムの抗炎症効果によって腸炎を改善させる。また、①大腸液は弱アルカリ性である、②腸炎の進行により、腸組織のpHが酸性側に傾く、③大腸の内部は、溶液で満たされた環境ではない、ことを考慮し、タンパク質フィルムの耐アルカリ性、耐酸性、耐乾燥性、についての評価を行う。
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Causes of Carryover |
H30年度の予算に関して、消耗品費と人件費が当初の予想額を下回ったため、次年度への繰り越しとなった。 経費の主要な用途は実験補助員の人件費である。また、研究成果を発表するための経費(国内旅費、学会参加費、英語論文の校閲費)や消耗品費[各種タンパク質(SOD、カタラーゼ、アルブミン)、酵素活性測定キット、動物実験関連(実験用マウス、シリンジ、DSS試薬)]を計上している。
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