2019 Fiscal Year Research-status Report
高度数理解析と超音波による生体内弾性特性分布の高精度計測
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17K01406
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐藤 雅弘 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (90132563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 英之 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (00344698)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 医用超音波 / 数値解析 / 生体内ずり波 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓が肝硬変に至る前段階がある.それが肝臓組織の線維化である.すなわち,肝細胞障害が繰り返されることで,瘢痕組織が形成される.それが進行して,肝硬変に至る.また,線維化が肝臓がんの発生要因の一つであるという研究もある.そこで,ずり波伝播と線維化の進行との間に相関があれば,診断に有効であると考える. そのことから,線維化した肝臓内をずり波が伝搬する時,その位相速度がどのようになるか興味がある.肝線維構造は,バイナリデータ (0,1) の行列で構成する.線維化により硬化した部分を1とした.1データの範囲は,数値解析における1離散間隔の正方形とする.データ0の部分が正常肝細胞である.ここでは正常部位のずり波速度を1 m/sとした.また,データの不連続性を避けるため,5×5マスの値を使って,全体を平滑化し,その中心をマスの値とした.すなわち,各マスの値を25で割って和をとり,平均値を中央のマスの値とした. ずり波の位相速度に関連しそうなパラメータは,線維化組織のずり波速度と波長(周波数)の二つと考える.そこで,線維化組織のずり波速度と周波数を種々変えて,ずり波の位相速度がどうなるか調べた.2次元長方形領域を伝播するずり波平面波が,線維化組織内を進行する様子を計算した.上下面は対称条件を課し,左面にずり応力の正弦波1周期(ハン窓をかけたもの)を与えた.線維化部分の横波速度を2~5 m/sの4通りとし,周波数を5~60 Hzまで5 Hz刻みで変えて計算した.長さ方向に2点取り,その点での時間波形の位相差から,ずり波速度を推定した. 解析結果から,周波数が変化しても,位相速度は数%しか変わらないことがわかった.一方,位相速度は,正常部(横波速度 1 m/s)と線維化部の横波速度との平均より,約 1.1~1.2倍ほど速くなることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【目標】対象とする生体を肝臓に絞った。(1)ずり弾性波の発生と病変部における反射,透過,回折の様子を解析する。自由境界で囲まれた生体領域を考え,P波の影響,弾性表面波の発生,なども同時に確認する。(2)病変部を肝臓の線維化組織とし,線維化部分を解析しやすいようにモデル化し,その中を伝搬するずり弾性波の特性を調べる。(3)正常組織から線維化組織にずり波を入射させ,反射,透過,回折特性を調べる。(4)エコー装置を使って,ずり波を観測し,生体組織のずり波速度分布を求めることができるかシミュレーションによって検討する。 【進捗】(1)P波は,直流に近く,全く影響しないことを確認した。自由表面に弾性表面波が伝搬した。病変部のサイズが波長よりも小さい時,反射・回折はわからなかった。しかし,病変部の境界周囲に,境界波と思われる波動が見つかった。そこで,病変部と正常部の2次元平面境界に,ずり波平面波を正常部側から入射したときの反射屈折特性を解析し,波数が虚数の漏洩弾性境界波が存在することを確認した。(2)線維化部分の横波速度を2~5 m/sの4通りとし,周波数を5~60 Hzまで5 Hz刻みで変えて計算した.長さ方向に2点取り,その点での時間波形の位相差から,ずり波速度を推定した.その結果,周波数が変化しても,位相速度は数%しか変わらないことがわかる.一方,位相速度の値は,正常部(横波速度 1 m/s)と線維化部分の横波速度との平均より高い.約 1.1~1.2倍ほど速くなっている.(3),(4)についても,解析を行い定性的な考察を行った。定量的な解析については,今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度で,研究期間は終了した。今後,さらに定量的な考察を行っていきたい。進捗状況に示した(3)正常組織から線維化組織にずり波を入射させ,反射,透過,回折特性を調べる,(4)エコー装置を使って,ずり波を観測し,生体組織のずり波速度分布を求めることができるかシミュレーションによって検討する,に対して,手法の検討,定性的実験は完了したので,今後,定量的な面から実用に向けて実験を続けていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのパンデミックの影響で,年度末に予定されていた研究発表会がすべて中止となった。そのため,旅費が手つかずのまま残った。また,研究成果を論文として投稿中である。この採否がまだ決定していない。採録が決定したら,論文掲載代に予算を使用したい。そこで剰余予算を次年度に持ち越す申請を行い,許可された。
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Research Products
(3 results)