2019 Fiscal Year Research-status Report
Aβ蓄積に伴う味覚障害の発症機序解明とアルツハイマー病早期診断法の開発
Project/Area Number |
17K01416
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
橋本 弘司 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (20237936)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 哲也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (20305022)
國安 明彦 崇城大学, 薬学部, 教授 (90241348)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 大脳皮質味覚野 / 視床味覚野 / 扁桃体 / 逆行性投射 / 自家蛍光減弱法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新たなMRI技術(位相差強調画像化法:PADRE)を用いて、ベータアミロイド沈着によるアルツハイマー型認知症の味覚障害を非侵襲かつ早期に見出す診断法の確立を目的としている。令和元年度は1)大脳皮質味覚野及びその周辺部からの逆攻勢経路の解明と2)味覚閾値検出装置の評価及び改良に関して取り組んだ。 1)に関しては脳切片の赤色自家蛍光の効果的な減弱法を見出し、ラット大脳皮質味覚野とその周辺部から視床味覚野への神経投射を明らかにし、味と匂学会2019および第18回国際シンポジウム味覚嗅覚の分子神経機構での発表を行った。 視床味覚野への逆行性投射様式を元に大脳皮質味覚野の範囲を検討したところ、視床味覚野から大脳皮質味覚野への投射は、電気生理学的味覚野およびその背側部および尾側部からも投射していることが分かった。さらに、扁桃体基底外側核BLAからから大脳皮質味覚野への投射も明らかになり、結合腕周囲核から扁桃体中心外側核CeLへ送られた味覚情報は扁桃体内でCeL-BLA間の連絡を経た後、BLAから大脳皮質味覚野へ連絡されることが示唆された。このことは大脳皮質味覚野が味覚の情報だけではなく、衝動や学習などの情報も同時に処理していることが示唆される。 2)に関しては、味覚閾値検出装置の評価を行い、味刺激に関するプロトコルに要求する動作が含まれていなかったため、ハードウェア、ソフトウェアの改良をメルクエスト株機器会社とともに引き続き行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和元年度に予定していた1)大脳皮質味覚野及びその周辺部からの逆行性経路の解明に関しては実験を完了し論文投稿準備中である。この実験を遂行するにあたり、脳切片の強烈な自家蛍光減弱法の確立に予想以上の時間を要した。ゼラチンコートスライドグラスに張り付けた切片を風乾後、水素化ホウ素ナトリウム溶液および硫酸銅溶液に浸潤して自家蛍光を減弱できることは実験計画の早期から見出していたが、切片自体がこれらの処理により膨潤し剥がれ落ちるため、追加の実験が必要になった。追加実験により処理前にホルマリン固定でこれを防げることを見出し逆行性投射細胞の画像を取得出来た。その後、Adobe Illustratorを用いて投射様式の解析を行ったが、投射した各細胞にマーキングする作業にも予想以上に大きな労力を費やした。 新たなMRI技術の確立に関して、2019年1月3日に熊本西部で発生した震度6の地震の影響により、動物用MRIが故障し2020年5月現在修理が完了しておらず使用できない状態が続いている。故障当初、修理が早期に完了することを期待しMRI撮像に伴う経費を取り置いていたが、予想以上に長期に渡っているため、味覚閾値検出装置の改良に重点を置いた計画への見直しを行った。 令和2年5月現在、MRIの修理の進歩状況を見て、残りのデータ取得が可能になればMRIでの計画を継続する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
視床味覚野から大脳皮質味覚野への投射様式の研究に関しては実験が完了し、国際共同研究を行っているフロリダ州立大学のSpector教授との協議も行っているので、8月を目途に論文投稿を行う。 2020年5月時において、熊本大学薬学部の動物用MRIの修理が完了しておらず1年以上稼働していないが、修理の努力は引き続き行われている。現在修理中のMRIの再稼働が整い次第、共同研究者とともに老人斑蓄積トランスジェニックマウスでの実験を再開して追加のデータを取得し、老人斑検出技術の確立を目指す。 さらに、老人斑蓄積トランスジェニックマウスを用いて老人斑の蓄積量と味覚閾値の変化を検討する予定であったが、実現性が低くなったため、味覚閾値検出装置の改良を行いつつ、痴呆モデルを模した嗅球切除ラットの味覚閾値及び嫌悪学習の変化の研究を行う。
|
Causes of Carryover |
国際共同研究先であるフロリダ州立大学のSpector教授との研究打ち合わせのための渡米費を計上しておりましたが、2019年11月4-5日に行われたISMNTOP2019国際学会で九州大学に招待講演で来日され、熊本大学にも立ち寄って頂いた折に、充分な研究打ち合わせが出来たため、渡米の必要性が無くなりました。 老人斑蓄積トランスジェニックを用いた、老人斑の量と味覚閾値の変化を検討する予定でしたが、2019年1月3日に熊本西部で発生した震度6の地震の影響により熊本大学薬学部の動物用MRI装置がクエンチして故障し、修理後に実験を再開できるように研究経費を確保しています。8月を目途に修理が完了していない場合にはリッキングテスト装置の特注大型ボトルの購入を予定しています。 研究計画の見直しに伴い、リッキングテスト装置を追加購入しましたが、ハードウェア、ソフトウェアの改良が次年度も引き続き必要になりましたので主に間接経費を確保しております。
|
Research Products
(3 results)