2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of quantitative analysis method for biofilm using DNA and RNA information, which is applied to evaluation of infection diseases about medical materials.
Project/Area Number |
17K01442
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
小川 亜希子 鈴鹿工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (90455139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 定量 / 遺伝子発現 / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度までに、大腸菌を対象として浮遊状態の細胞とバイオフィルム形成状態の細胞からRNAを抽出し、マイクロアレイを用いて遺伝子発現状態のデータを取得した。2021年度は、得られたマイクロアレイデータを元に解析を行い、浮遊状態とバイオフィルム状態間での遺伝子発現を比較した。 マイクロアレイ解析にて、遺伝子発現が確認された遺伝子数は8000程度であり、その約9割は双方で発現が確認された。一方、浮遊状態でのみ発現していた遺伝子数はバイオフィルム状態でのみ発現していた遺伝子数よりも約6倍多かった。バイオフィルム状態でのみ発現していたsfmDは、線毛合成に作用する外膜に存在するタンパク質である。また、浮遊状態でのみ発現していたfliOは、鞭毛タンパク質である。前者は材料表面への細胞付着に働くと考えられ、後者は細胞の遊泳に働いており、どちらのタンパク質の発現状態も、細胞の状態を反映している。 しかしながら、実施したマイクロアレイには(1)シグナル検出に必要なラベル標識化において、浮遊状態とバイオフィルム状態間で標識化効率が異なっており、両者間の真の発現状態を反映していない可能性、(2)実験条件ごとの試験数が少なく、統計的な比較が困難である、問題点が挙げられる。そのため、更に両者間で遺伝子発現を比較せねばならない。2022年度は、RNA-seqを利用して遺伝子発現解析を実施し、マイクロアレイ解析結果と比較しつつ、バイオフィルム定量に利用可能な遺伝子種を確定し、それらの遺伝子を利用したバイオフィルム定量を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マイクロアレイ法での網羅的な遺伝子発現解析について、取得したデータは統計的に(有意差を)検定するために必要な条件を満たしておらず、解析結果を元にしてバイオフィルム定量のための遺伝子を決定するには、望まれる結果が得られない可能性が高い。しかしながら、マイクロアレイ法での解析は(1)受託先がない、(2)自身でデータを取得するための設備がない、という理由から再度行うことは困難である。従って、RNA-seqを利用した網羅的遺伝子発現解析を実施予定である。 今後はRNA-seqによって得られる遺伝子発現解析結果とマイクロアレイ法による遺伝子発現解析結果を複合的に利用し、バイオフィルム定量に利用する遺伝子種を決定していく。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度までに構築したバイオフィルム形成装置を利用し、大腸菌でバイオフィルム状態と浮遊状態の細胞からRNAを抽出し、それを元にしてRNA-seq法による遺伝子発現解析を実施する。そこで得られた情報を元にして、バイオフィルム定量に利用するターゲット遺伝子を複数種決定する。決定した遺伝子について、バイオフィルム形成段階ごとの遺伝子発現量をRT-qPCR法で測定し、バイオフィルム定量の測定系を構築する。 続いて、医療器具に使用されている種々の材料でバイオフィルム形成試験を実施し、構築した測定系を利用して材料のバイオフィルム形成特性を定量する。
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Causes of Carryover |
2021年度は育児休業から復帰した直後だったこともあり、本研究の再開時期が大幅に遅れてしまった(10月再開)。さらに、実験データの解析に当初予定していた期間(1ヶ月)よりも長期間を有し(3ヶ月)、得られた解析結果も次の実験に進めるためには信頼性に不安のあるものとなった。 2022年度は、遺伝子発現解析方法をRNA-seqに変え、網羅的な遺伝子発現解析を行う。その解析結果とこれまでに得られた解析結果を合わせてターゲット遺伝子群を決定し、バイオフィルム定量系を確立させる。次いで、確立した定量系にて医療器具材料のバイオフィルム特性を定量化していく。
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