2019 Fiscal Year Research-status Report
語性失読の障害機序の解明と、それに基づいた訓練手技の開発に関する研究
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17K01446
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠藤 佳子 東北大学, 大学病院, 言語聴覚士 (60569466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 竜作 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (00411372)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 純粋失読 / 語性失読 / 語彙判断 / 言語訓練 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の対象となった失読症例1例について、その失読症状をさらに詳細に検討し、症例報告を行った。20歳代の右利き女性、大卒。乗用車と接触し受傷。脳挫傷、外傷性クモ膜下出血、急性硬膜下血腫の診断で開頭血腫除去術及び外減圧術が施行された。5ヶ月後に自宅退院し、外来リハビリを継続していた。頭部MRIでは、左側頭葉下部~後頭葉、両側前頭葉底面内側に脳挫傷を認めた。神経学的には右同名性半盲、言語としては失名辞失語で、漢字/仮名の読み及び漢字の書字の障害を認めた。失読は、受傷8年後には日常的に支障ない程度まで回復していたが、「形の似ている文字は間違えやすい」と自覚していた。本症例に対し、受傷8年後に、PCを用いて、平仮名4文字からなる単語、および無意味綴り各10個を以下の条件で提示し、音読を求めた。4文字すべてを正しく音読した場合を正答とした。 (a)4文字を同時に0.4秒提示、(b)4文字を同時に0.8秒提示、(c) 1文字づつを0.1秒づつ順に提示(計0.4秒)、(d) 1文字づつを0.1秒提示、その後0.1秒の間隔を空けて次の文字提示(計0.8秒)。結果は、正答数が、(a)単語9/10、無意味綴り6/10、(b)単語10/10、無意味綴り8/10、(c)単語8/10、無意味綴り2/10、(d) 単語10/10、無意味綴り5/10だった。このことから、本症例は、文字の携帯は瞬時に把握できているが、形態と音韻を結合させる段階に何らかの障害があることが示された。本症例の失読の発現機序は、複数文字の同時把握の障害である同時失認によるものとは異なる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
20代の症例1例について詳細に検討し症例報告をすることはできたが、他の症例についてはまだ詳細な検討あできていない。また、研究に協力する症例数も少ない。失読の発現機序として文字の同時失認を想定していたが、それ以外の要因も検討しなくてはならない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、症例数が不足しているので、他の協力病院などにも依頼し、症例数を増やす予定である。症例は、左半球広報領域の限局損傷例、例えば脳卒中などによる失読症例が望ましく、そのような症例に積極的に課題を依頼するが、脳腫瘍や交通外傷など、必ずしも局所損傷を示唆しない症例においても、失読を主症状としている症例であれば、積極的に課題を実施し、その反応特徴を検討したい。
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Causes of Carryover |
症例を集めるための他機関との往来や、他機関への協力金などを使用する予定であったが、予定よりもその費用が少な買ったため、次年度に使用することとした。
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Research Products
(1 results)