2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の多様なバランス制御方略を考慮した転倒危険因子の解明と介入プログラムの開発
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17K01479
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
笹川 俊 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (90551565)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 立位 / バランス / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常高齢者の安静立位足圧中心(CoP)動揺について、その時空間パターンにおける個人差を、複数の要約統計量を用いて検討した。要約統計量には、CoPの標準偏差および平均速度を用いた。その結果、CoP標準偏差と平均速度には、被験者間に、相関のない、同程度のばらつきが観察された。また、CoP標準偏差はCoP動揺における低周波成分(0-0.5 Hz)と強く相関し、CoP平均速度はCoP動揺における中・高周波成分(0.5-1.5 Hz)と強く相関することが明らかになった。これらの結果は、加齢にともなう立位バランスの不安定化には、大きく、CoP動揺の低周波成分が顕在化するタイプ、中・高周波成分が顕在化するタイプ、の2つがあることを意味する。今年度はさらに、立位バランスが不安定化する神経学的要因について、制御の主働筋である下腿三頭筋にストレッチ刺激を加え、立位バランス制御に対する事後効果を検討することによって検討した。被験者(若齢健常者)は、25度の足関節背屈ストレッチ刺激(3分間)の後、5分間の安静立位姿勢を保持した。その結果、ストレッチ直後(約15秒後まで)に、身体重心加速度に1 Hz近傍の特徴的な変調が観察され、その背景には、I群からのフィードバックが関与していることが示唆された。今回1 Hz近傍に観察された身体重心加速度の変調は、上述のCoP動揺における中・高周波成分の増大と類似するものであり、本研究から得られた一連の知見は、立位バランスの加齢変化を生じさせる神経メカニズムについてのヒントを与えるものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度までの目標として、高齢者の立位動揺パターンを類型化し転倒リスクとの関連を明らかにすること、バランス能力の加齢変化を生じさせる神経メカニズムを明らかにすること、を掲げていた。これらの目標は概ね達成できたたが、どのような立位動揺パターンが転倒リスクと関連しているのかは、まだ明らかにできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに大きな規模の高齢者を対象として、立位動揺の測定と転倒に関する質問紙調査を合わせて実施することによって、転倒リスクと関連する立位動揺パターンについて明らかにする計画である。
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Causes of Carryover |
測定のフィールドを確保するために時間を要しており、当初計画していた実験が実施できていないためである。フィールドが確保でき次第、機材を購入し、実験を実施する計画である。
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