2018 Fiscal Year Research-status Report
経膣分娩と閉経が尿禁制機構に与えるリスクを実験形態学的観点から解析する
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17K01523
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
津森 登志子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (30217377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 外尿道括約筋 / type2B線維 / 膣拡張処理 / 蛍光多重免疫染色 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の解析では、経膣分娩モデルとして膣拡張処理を行ったラットを用いて、処理4週後の外尿道括約筋(external urethral sphincter, EUS)における筋繊維タイプ別の影響を予備的に検討した。その結果、メスラットEUS近位部のみに存在するtype 2B線維が選択的に減数・萎縮していたが、EUS近位から遠位まで全層にわたって存在するtype2A線維には大きな変化は認められなかった。よって今年度は、経腟分娩モデルのEUSに生じる筋繊維損傷の変化を処理直後から3週間まで経時的に追跡すると同時に、処理後8週経過した時点で損傷筋が回復しているかどうかについて蛍光多重免疫染色を用いて明らかにすることを目的とした。膣拡張処理3日、1・2・3・8週間後のEUS試料を線維タイプ別のマーカーを用いて多重免疫染色すると、膣拡張処理3日目ですでに括約筋近位部に局在するtype2B繊維は萎縮像を呈し、その状態が1~3週間後まで継続していることが明らかになった。8週間経過した試料でもtype2B繊維の減少・萎縮像を呈したケースが多く観察された。さらに、再生筋のマーカーであるembryonic myosin heavy chain(eMHC)の抗体を用いて上記試料を免疫染色した結果、処理直後はEUSの近位から遠位部まで全層に渡って陽性筋線維が検出されたが、それらは経時的に減少し、8週間後にはほとんど近位部筋層にしか検出できなかった。これらの結果は、EUSを構成する筋線維のうちtype2B線維が一時的な圧迫・虚血による影響を最も強く受けて不可逆的に変性し、一旦変性するとほとんど再生する可能性がないことを示し、経腟分娩を含む長時間の尿道圧迫がEUSの尿道閉鎖機能不全に繋がるリスクを示唆することができた点で意義深いと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
詳細に経時的な変化を観察するため、膣拡張処理3日、1・2・3・8週間後での組織採取時期を設定し、それぞれの時期で試料を採取することにしていたが(各6~7試料)、昨年度7月の豪雨災害に伴う大学内断水などの影響で動物の購入・飼育・実験処置等ができない時期があり、計画通りに材料採取自体ができなかった。よって、年度末の段階で、試料約半数程度で凍結切片作成、多重蛍光免疫染色、標本観察と写真撮影が終了していない。 なお、膣拡張処理ラットのEUSにおける筋線維損傷の様態について、予備的にまず処理後4週間という時点での変化をまとめて電子ジャーナルに投稿した(Journal of Antomical Science and Research Vol.1.No1:5)。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度に採取した試料のうち、まだ凍結切片作成・多重蛍光免疫染色が終了していない試料の処理を終了させる。次に膣拡張処理後3日、1~8週間後すべての試料について、KEYENCE BZ-700を用いて必要な画像取得を行い、画像解析によりEUS矢状断面積全体における筋繊維サブタイプごとの面積比率を出して比較し、統計学的処理を行う。数値解析終了後にすべてのデータをまとめ、論文執筆を行い Anatomical Record(予定)に投稿する。 さらに今年度は、閉経モデルとしてリタイヤラットに卵巣除去を行い、8週間経過した尿道周囲組織を対象として、尿道粘膜ヒダの形成・EUSの筋繊維構成・EUSにおける一酸化窒素の発現様態などに的を絞って無処理群と比較検討し、閉経が尿道周囲組織、特に尿道閉鎖に関連する構造物にどのような変化をもたらすかについて、形態解析を行う。得られた結果は2020年3月の解剖学会・全国学術集会で発表し、最終的に論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
動物実験を実施して試料採取の予定にしていた7月~8月にかけて広島豪雨災害の影響を受けた関係で、動物実験実施が滞り、学部生リサーチアシスタントの雇用も当初予定通りにできない時期があった。そのことで謝金を十分活用できなかった。また当該テーマでの学会発表をしなかったために旅費も使用しなかった。今年度はリサーチアシスタントの雇用を計画的に行うとともに、現在データをまとめる段階にきている昨年度分の実験結果について、論文校閲を受けた後に投稿する過程を控えているので、予定通りに経費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)