2017 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中片麻痺上肢の運動イメージ能力を表現する定量的評価手法の開発と臨床応用
Project/Area Number |
17K01546
|
Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
森岡 周 畿央大学, 健康科学部, 教授 (20388903)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 脳卒中 / 上肢運動障害 / 片麻痺 / 運動イメージ / 身体使用頻度 / 機能回復 / 両手協調運動課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究では,両手協調運動課題(bimanual circle-line coordination task:BCT)を用いて,運動イメージ能力を定量的に調べ,運動イメージ能力が片麻痺上肢の運動機能や麻痺肢の使用頻度に関係するかを明らかにする。対象は認知障害のない脳卒中片麻痺患者31名である。BCTにはタブレット型PCを使用し,その課題はunimanual-line(UL):非麻痺側のみで直線を描く条件,bimanual circle-line(B-CL):非麻痺側で直線を描き麻痺側で円を描く条件,imagery circle-line(I-CL):非麻痺側で直線を描き麻痺側で円を描くイメージを行う3条件で行い,各々12秒間3セット実施した。描かれた直線を記録した。解析は軌跡を1周期ごとに分解し,その歪みを数値化するためにovalization index(OI)を求めた。OIは[X軸データの標準偏差/Y軸データの標準偏差]×100により算出した。運動麻痺の評価にはFugl-Meyer Motor Assessment(FMA),日常生活での使用頻度にはMotor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU),動作の質にはMALのQuality of Movemen(QOM)を用いて評価した。一元配置分散分析後,多重比較検定(t-検定)を用い3条件のOI値を比較した。また,I-CLのOIとFMA,AOUおよびQOMの関係を調べるためにピアソン相関係数を求めた。有意水準は5%とした。ULに対しB-CLおよびI-CLのOIで有意な増加を認めた(p<0.00001)。I-CLのOIとFMAの間に有意な相関がみられないものの,I-CLのOIとAOM(r=0.3883,p<0.0154)およびQOM(r=0.3885,p=0.0153)に有意な相関関係を認めた。本結果から,非麻痺側で直線を描き,麻痺側で円を描くイメージを行う条件であっても有意な楕円化を認めた。すなわち,運動イメージの存在を定量的に確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十分な臨床データの採取・分析に成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
急性期から慢性期までの症例を中心に縦断的分析を行う。対象は平成29年度から継続的調査が可能であった50名とする。前述した手続きでOIを1週間ごとに記録し、その変化率を算出する。また、その変化率と運動障害、ADL、認知障害などの各検査項目の改善率の関係を調べる。さらに、運動イメージ想起が起こり運動機能回復する例、運動イメージ想起が起こりづらく回復しない例、あるいは逸脱する例の特徴をクラスター分析など、適切な統計手法を用いて明確にする。また、多チャンネル脳波計(現有機器:BioSemi社Active Two system;最大128ch)を用いて、BCT時、安静時、上肢の実運動時の脳波を適宜記録し、事象関連脳電位、時間周波数解析、standardized low resolution brain electromagnetic tomography (sLORETA)解析などを試み、その活動の変化や有意に変化した領域を明らかにする。また、コネクティビティ解析を用いて、関連領域間の機能的神経結合についても明らかにする。なお、こうした手続きを用いて神経活動を明確にするプロトコルは、申請者らの先行研究によって既に検証済みである(Takamura, Morioka, Brain 2016)。これらの解析から、先のクラスター分析によって明確化した運動イメージ想起が可能で運動機能が回復した例の脳活動パターンを同定する。なお、年齢をマッチさせた健常者でも同様の脳活動を検出し比較検証する。
|
Research Products
(6 results)