2018 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器疾患に対する複合的介入によるリハビリテーション戦略の構築
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17K01547
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
今北 英高 畿央大学, 健康科学部, 教授 (00412148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 直人 広島大学, 医歯薬保健学研究科(保), 講師 (90584178)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 呼吸器疾患モデル / 運動療法 / 酸素療法 / 栄養療法 / 複合的介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年9月、世界保健機関は世界人口の92%が汚染された大気中で生活しており、大気汚染に関連して年間約300万人が死亡していると報告した。呼吸器疾患は大気汚染や喫煙、ウィルスやアレルギー反応などによって罹患率が上昇する。前述したとおり、慢性閉塞性肺疾(COPD)や肺炎など呼吸器疾患は世界的に増加しており、2020年には心臓病・脳卒中に次ぐ世界の死亡原因の第3位になると予想されている。わが国においてもCOPDの潜在患者数は530万人にも達すると報告されている。呼吸器疾患は、呼吸機能に悪影響を及ぼすだけでなく、下肢骨格筋の最大随意収縮力の低下や横隔膜筋線維の遅筋化、代謝亢進による体重減少と栄養障害なども報告されており、現在では骨格筋機能異常や栄養障害、全身性炎症などを呈する全身性疾患として捉えられている。 Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD 2011)では呼吸リハビリテーションに関して、運動療法は全てのCOPD患者に対して有用で、運動耐容能および息切れや疲労感の症状改善が得られるとされており、酸素療法は1日15時間を超える長時間の酸素吸入を行うと、重度の低酸素血症患者の生存率を高めると示されている。 本研究の目的は、肺気腫における肺組織・筋組織の形態・機能変化について相互の因果関係を検証し、同モデルにおける複合的介入法を精査することで、より効果的な治療エビデンスを創出する。具体的に運動療法、栄養療法、酸素療法の3種類の治療介入を実施し、肺組織・筋組織の変化を生理学的・生化学的・組織化学的・分子生物学的側面から検証、呼吸リハビリテーションにおける新たな治療戦略を構築することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、実験設備を整えるとともに、呼吸器疾患モデルラットを作成、その病態(特に炎症性変化)を分析すること、さらには栄養療法として分岐鎖アミノ酸(BCAA)を摂取することで骨格筋どのような影響を及ぼすかを実験した。その結果、対照群と比較し、BCAAを摂取した群では、筋湿重量や筋線維径が増加したが、同じようにBCAAを摂取したCOPDモデル群では筋湿重量などに変化はなかった。このことは、COPDによる異化作用がBCAA摂取による同化作用を打ち消してしまった結果ではないかと考えている。今後、さらに他の介入と合わせて解明していく。 また、これらの実験結果は、今年度11月に開催される日本基礎理学療法学会にて発表する予定であり、現在サンプルの分析、データ処理を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の実験設備の整備として、酸素ルームおよび濃縮酸素装置の設置を計画し、予定通り設置することが出来た。基礎データとして、この酸素ルームは1.2、1.25、1.3気圧まで上昇可能で、酸素濃縮装置と組み合わせることで30-40%の酸素環境を室内にてコントロールできる。今年度は、この高気圧酸素ルームを使用して、運動療法や栄養療法と組み合わせて、COPDモデルにおけるリハビリテーション戦略を構築する。
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Causes of Carryover |
今年度に機器整備を考えていた酸素ルームは、大学の設備として整備できたため、備品計上していた予算が残った。しかし、学内における研究業務以外(教育業務や会議、委員会等)が増え、かつ講義における担当教科の変更などがあり、教育におけるエフォートが大きくなったことで、研究の進捗が遅れることが予想されたたっめ、研究補助員を雇用した。酸素ルームの購入金額と研究補助員の人件費の差額が今回の残額として生じた。次年度は最終年度でもあるため、さらに研究を推進するため、消耗品や人権費、少額機器などにこの残額を含めた次年度研究費補助金を充当し、完結できるよう努める。
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