2019 Fiscal Year Research-status Report
感情表現の強さが制御された音声刺激による認知症患者の感情認知機能の評価
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17K01570
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| Research Institution | Nagoya City University |
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Principal Investigator |
中村 篤 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 教授 (50396206)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 千晶 社会福祉法人仁至会認知症介護研究・研修大府センター(研究部、研修部), 研究部, 研究主幹 (30794276)
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| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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| Keywords | 介護予防・支援技術 / 認知症 / 音声コミュニケーション / 声質変換 / 感情強度制御 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
認知症の症状進行に伴うコミュニケーション障害は、周囲の人々との交流を阻害するだけでなく、本人の不安・孤独感を高め、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia : BPSD)出現の一要因となり、QOLへ悪影響を与える。さらに、BPSDが介護家族や介護スタッフの負担や葛藤を助長し、ストレスを増幅させる。これにより、介護者自身がうつ病に罹患するリスクや、不適切な関わりから認知症の人を混乱させてしまい、BPSDを悪化させる等の悪循環を生じる可能性がある。よって、認知症患者とのコミュニケーションの在り方について検討することは重要である。
本研究では発話に込められた「喜び」、「怒り」等の感情韻律の認知機能の特徴を明らかにし、認知症患者との音声によるコミュニケーションを維持するための具体的、かつ客観的知見を得ることを目的とする。これにより、介護家族や介護職員等がコミュニケーションを取る際に、どのような「話しかけ方」が認知症患者との意思疎通や信頼関係の構築に有用であるかの指針策定に繋げたいと考える。
2019年度は、認知症介護発話音声データの整備をさらに進める(中村)とともに、実験用音声刺激の精緻化を図り（中村）、健常な若年者および高齢者を対象として，感情音声の理解に加齢が与える影響について調査した（齊藤、中村）。引き続き認知症高齢者を対象とした被験者実験を年度内に実施する計画であったが、新型コロナウイルス感染症への対応のため、これは保留している。
なお、高齢者の感情音声理解について検討した内容の一部について、昨年度、日本音響学会誌への論文投稿を行い、採録決定の結果を得た（齊藤、中村）。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に作成した3感情（Happiness (H)、Neutral (N)、Anger (A)）を含む介護発話による、感情量の制御された音声刺激を使用し、健常な若年者および高齢者を対象として、感情音声の理解に加齢が与える影響について調査した。
検査対象者は健常若年者28名、および健常高齢者25名とし、静穏環境が保たれた一室で、検査対象者にスピーカからの感情音声刺激を聴取してもらった。検査課題は介護発話文12種類×演劇経験者2名×感情ペア6種類（AH、HA、HN、NH、AN、NA）×感情強度5段階＝720問とし、該当する感情について強制選択法での解答を求めた。
結果の分散分析から、健常な高齢者は若年者よりも有意に感情理解の正答率が低下することが示された。これは、感情強度が原音声と同等の感情量レベルをもつ音声刺激の段階から生じていた。さらに、感情ペア毎ではAHとHAで加齢によるとみられる正答率の低下が認められた。これは、angerとhappinessは元々感情表現におけるF0の変化の幅が大きく、感情の理解をその特徴に相対的に強く依存しているものとみられ、その特徴が平坦化によって消失することで、とりわけ感情表現を捉えにくくなるためと考えられる。
これらの内容を、情報処理学会 第17回高齢社会デザイン研究発表会にて発表し、また、高齢者の感情理解に関する論文が日本音響学会誌に採録された。
なお、上記の研究発表会は、コロナ感染症蔓延のため、実開催が見送られ、ディスカッションの機会を得ることができなかった。また、当初予定していた、認知症高齢者を被験者とする実験も、同様の理由で年度内の実施を見送ることとなった。これらについては、期間延長をお認め頂いたことで、次年度に繰り越して取り組むこととなる。
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| Strategy for Future Research Activity |
認知症高齢者を被験者とする実験について、次年度の実施を目指す。
認知症介護発話音声データベース公開のための整備についても引き続き進める。
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| Causes of Carryover |
報告年度第四四半期における新型コロナウイルス感染症蔓延により、認知症高齢者等を集めての被験者実験の年度内実施が極めて困難となった。これを次年度のしかるべき時期に先送りして実施するため、予算の一部を繰り越すこととなった。
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