2017 Fiscal Year Research-status Report
Research on vulnerable elderly group at accumulated risks in rural area
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17K01574
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
河口 明人 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (70214608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 正晴 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (10382475)
佐藤 洋一郎 北海道科学大学, 保健医療学部, 講師 (20433518)
細谷 志帆 北海道科学大学, 保健医療学部, 助教 (40736386)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域在住高齢者 / 包括ケアシステム / 独居高齢者 / サルコペニア / 日常生活活動ADL / 生活の質QOL / ソーシャル・キャピタル / オーラルフレイル |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)介護リスク環境の過疎地域在住の独居高齢者についての解析 過疎地域在住の65歳以上の在宅自立高齢者において、社会的孤立のリスクおよびストレス環境である独居が、日常生活活動およびQOL(生活の質SF-36)におよぼす影響をソーシャル・キャピタル(対人信頼性・社会的不平等感)の測定とともに評価した。対象者の4割が独居であり、独居理由は配偶者との死別が最も多く、非独居高齢者と比較して、「身体の痛み」や社会生活上の困難を感じる割合が多かったが、老研式手段的日常活動指標(ADL)が比較的保たれ、また「活力」などの生活態度が有意に高値であった。独居高齢者は、認知機能低下の困難な環境にあっても、独居が可能な高齢者であり、独居不能になった高齢者はすでに施設などに移動していた。しかし地域社会の相互の信頼性は高く、近所つきあいのある高齢者は90%以上であり、ボランティアやサークル活動で積極的に社会参加している高齢者の身体機能および全体的健康感は高く、また「まわりの人は信頼できる」、「社会は不平等ではない」と考える人の精神的健康度は有意に高かった。信頼性や平等感などの社会的心理性は、高齢者の良好な精神的健康度とよく相関していた。 (2)高齢者の口腔環境(オーラルフレイルOF)についての解析 高齢者111名を対象とし、サルコペニアの分布とともに、アイヒナー分類(咬合箇所の温存状態)、嚥下機能、口腔湿潤度の三者の口腔機能低下の者をOFとした時、OF群は24名(21.6%)で、非OF群87名と比較して高齢だったが、性別には差はなく、OF群では上顎残存歯数が有意に少なく、自覚症状として「固いものが食べにくい」という回答に差があった(P <.05)また、OFに該当する高齢者は,同時にメタボリック・シンドロームおよびサルコペニアの傾向をもつことを示し,OFが全身的な病態と関連していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H29年度までの介護予防健診で、65歳以上の地域在住自立高齢者120名(男性47名、女性73名)の居住・社会生活環境、基本チェックリスト、ADL(老研式日常活動指標)、QOL(SF-36)、認知状況(MMSE, HDS-R)の情報を収集し、医科・歯科健診、理学評価(身体活動調査)の概要の評価を終えた。 (1)介護リスクが高いと想定される独居高齢者の社会・生活実態について報告した。(→論文「地域在住独居高齢者のQOLと社会・生活環境およびソーシャル・キャピタルについて」北海道公衆衛生学会誌;31:85-91,2017)高齢者評価において、身体機能ばかりでなく、社会的心理状態や認知機能、さらには移動手段や近隣との付き合いなど社会生活上の孤立や閉じこもりなどが重要であることを示した。独居の高齢者の日常生活活動度は比較的保たれ、自立的生活が可能なかぎりで独居であることが判明した。一方で認知機能が低下した状態の独居高齢者が少なからず存在し、家族あるいは近隣の社会的支援で独居が継続されていることが推定された。 (2)高齢者の口腔機能低下(オーラルフレイルOF)について報告した(→「高齢者におけるオーラルフレイルの診断とサルコペニアおよびメタボリック・シンドロームとの関連について」北海道栄歯学雑誌38:234-42,2018)。高齢者の口腔機能低下が、全身の生理的予備能低下(フレイル)の一部分症であるという仮説のもとに、咬合咀嚼機能(アイヒナー分類≧B4)、嚥下機能(反復唾液嚥下テストRSST<3)および口腔内湿潤度ペリオスクリーン<29.0)の低下をOFと定義した時、OF群が有意に肥満傾向であり、かつメタボリック・シンドロームの血清生化学的特徴を有し、かつサルコペニアと診断される割合が高いことを明らかにし、口腔機能低下とサルコペニアおよびメタボリック・シンドロームとの相互関連性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)サルコペニア・ダイナペニアの病態の解明 高齢者の加齢にともなう身体生理的予備能の低下がサルコペニア(筋量減少、筋力低下、身体遂行機能の低下)という病態で認識されているが、その病態概念が筋量低下の把握に焦点があるために、身体遂行機能との解離(筋量が保たれているが身体機能が低下、あるいは筋量が低下しているが身体機能が維持されている高齢者)がある。さらに筋量評価の方法(DXA, MRI, CT, BIA法)やその基準が十分に定まっていない。したがって、日常生活機能を支える基本動作としての身体遂行機能に焦点を置いた評価方法が必要であるという観点から、新たなる概念としてのダイナペニア(身体機能に重心をおいた病態概念)の診断の可能性を分析する。特に、歩行速度(<1.0m/sec)を男女共通の評価基準として、歩行機能が高齢者のADLやQOLに如何に反映されているかという、臨床的な診断の意義および目的を明かにする解析を実施する。さらにサルコペニアに関連するインスリン抵抗性が、いわゆる"sarcopenic obesity"を結果する病態についても解析を実施する。骨格筋のブドウ糖吸収障害として定義されるインスリン抵抗性が、筋量の減少によるものか、身体遂行機能の低下によるものかについて一定の知見を得る。 (2)フレイル病態の解明 加齢に伴う高齢者の虚弱性は、一方で「フレイル」という概念が提唱されている。サルコペニアが身体に焦点があるのに対し、フレイルは、①身体活動的側面ばかりでなく(サルコペニアはフレイルの身体的評価と考えられる)、高齢者の社会心理的側面(うつ状況)および認知機能(認知症の有無や程度)という②精神的機能に関する評価、さらに閉じこもりや孤立という③社会生活上の脆弱性の評価、という側面を含む。これらは高齢者の福祉やQOLを改善するために必要な政策を進めるために重要な調査である。
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Causes of Carryover |
分担研究者の旅費および諸雑費の端数が生じたため、次年度に引き継ぐ。
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Research Products
(10 results)