2017 Fiscal Year Research-status Report
Research about new-type welfare devices such as speech assist device controlled by myoelectric signal
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17K01602
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Research Institution | DAIICHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
大惠 克俊 第一工業大学, 工学部, 准教授 (80388123)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人工喉頭 / 表面筋電位 / 食道発声法 / スピーキングバルブ / 生体計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては,電気式人工喉頭制御用パラメータの最適化およびスピーキングバルブの形状最適化を最重要課題とした.これらのうち,研究体制の変化に伴いスピーキングバルブに関しては研究を保留した.またその他の課題として挙げていた音源形状および小型ポンプの最適化についても,スピーキングバルブと同様の理由で保留とした. 電気式人工喉頭のパラメータ最適化に関しては,これまでどおり発声音のピッチ周波数と同時に筋電位信号を計測・記録してそれらの相関係数を求めて評価を行った.今年度は特に,被験者数を増やして被験者に因らず高い精度の制御を行うことの出来るパラメータの導出を目指して研究を実施した.この結果から,優れた制御関数であると考えられていた指数関数が,被験者を問わず他の制御関数と比較して高い制御性を持つことが確認された.また練習回数による制御の上達に関する評価も実施した.この結果からは,二次関数と指数関数はほぼ同等の習得性を持つことが明らかとなった.これらに関しては翌年度も継続して実施する予定である.またこれまでは制御を高音・中音・低音の3段階で行ってきたが,医師から高音・中音の2段階でも充分高い諒解度が得られるとの意見があり,本年度は本件についての検証も行った.この結果から,3段階制御と比較して制御が容易である2段階制御では,複数の被験者において90%を超える制御精度を実現した. 本年度は上記に加え,筋電位信号を用いた食道発声法訓練用デバイスの基礎研究に着手した.これは研究計画書にて提案したEMG玩具から派生したもので,食道発声法の効果的な訓練に活用するためのものである.本年度は本デバイスの基礎研究として,食道発声法のメカニズムについて筋電位信号により解析を行った.この結果から,食道発声時に使用する筋肉とその動作順序についての知見が得られ,翌年度以降の研究につながることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピーキングバルブ形状の最適化に関しては,研究参加人員が削減されたこともあり,今年度は保留とした.しかし研究活動の中で試作に協力してくれる企業が見つかり,来年度以降の速やかな研究の進捗が期待できる.音源形状に関しては低周波数の発生に限界が見え始めたため,ミッシング・ファウンダメンタル現象を用いた新しい手法を提案した. 制御パラメータの最適化に関しては,被験者を増やしたことで指数関数の優位性の確認が取れた.また研究計画にはなかった訓練回数と上達度合いに関する評価も一部実施し,将来的な筋電位信号制御型人工喉頭の習得時間を見積もるための基礎データを収集した.さらに現場の医師からの提案に基づき,制御する音階を3段階から2段階へと減じたことでより高い精度で制御することが可能であった.この結果から,現段階で得られた制御関数が2段階制御であれば実用の域に近いことが明らかとなった. また本年度から新たに食道発声法の訓練デバイスに関する研究に着手し,その基礎データとして食道発声法使用者の筋肉の動作する順序を調べた.これは食道発声法の科学的な訓練方法がないことから,これまでに行ってきた筋電位測定およびEMG玩具の技術を応用して効果的な訓練を行うためのデバイスの実現を目指すものである.本年度は基礎的なデータ収集・解析を行ったのみであるが,これは来年度以降の研究に活用できると考えられる. 本年度は研究体制が縮小されたことにより積極的な研究を行わなかったテーマがあるが,これらについても何らかの新しい知見が得られたものもあり,予定通り実施できた内容に関しては計画通り進捗し,またこれまでの研究結果から見出された新たな研究テーマや,今年度から新規に取り組みが始まったテーマに関しては初年度から順調に基礎データの収集を行うことが出来たため,全体として順調に推移していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は研究体制が改善されるため,本年度得られた結果を発展させる内容に加え,本年度は実施しなかった内容についても可能な限り研究を実施する予定である.以下に項目毎に整理する. 電気喉頭の制御パラメータ:指数関数の優位性が明らかとなってきたため,より高い制御性を求め,個人に合わせた制御パラメータについての考察および測定を行う.ここでは個人に合わせたパラメータを簡潔に求める手法の確率を目指す.また練習回数と上達度合いに関する評価を被験者を増やして実施し,実際に使用する際の練習方法の目安にするべくデータ収集を行う.音程の2段階制御に関してはこれまでに充分な精度を得られているので,音声認識ソフトを使用して,明瞭度の客観的評価を行う予定である. スピーキングバルブ形状:これまでに整流板の使用による高性能化が見込まれているので,形状に関するパラメータをより詳細に検討し,有限要素シミュレーションを用いて形状の検討及び性能評価を行う.また,研究協力企業に依頼し,現有設備では作製不可能な精度を持つ試作品の作製までを実施する予定である. 食道発声法訓練デバイス:これまでに食道発声時に使用する筋肉の同定,およびそれに基づいた測定箇所の決定が行われている.平成30年度においては被験者数を増やして,個人差に関する評価を行う.また現段階では測定筋が舌,横隔膜のみであるが,腹筋や背筋など他の筋に関しても測定し,よりう正確な使用筋の特定を行う予定である.
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Causes of Carryover |
(理由) 研究申請当初,平成29年度においては.いくつかのデバイスの試作及び性能評価を行う予定であった.しかし,人員不足や新しいパラメータの発見,新しい研究テーマへの取り組み等による研究進捗の遅れや方針転換などにより,現段階では試作を行うレベルには達していない.従って計上していた試作費および測定に用いるために購入予定であった物品費が不使用となったため,残高が発生したものである. (使用計画) 平成30年度においては前年度までの経過を踏まえ,多くのデバイス試作を行う予定である.またこれらの評価に用いるための測定機材の購入費,さらに被験者を増やすために被験者への謝金などが必要となると考えられる.次年度の助成金と併せて,これらの部品費,試作費,物品費,謝金などに使用する予定である.
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