2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K01608
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
中村 隆 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (40415360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 貴之 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 学院(併任研究所), 学院教官 (30727160)
三ツ本 敦子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (50723780)
沖田 祐介 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 流動研究員 (00784357)
内藤 尚 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (40392203)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 義肢 / 適合 / 解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は切断肢と義肢(義手と義足)の適合評価とソケットの設計に関する研究である。具体的には、切断肢(以下、断端と称す)の内部組織構造、すなわち筋組織と脂肪組織の量と比率が断端の体積、形状および粘弾性に関与する重要な因子と考え、それらに基づく義肢ソケットの設計、および義肢の制御との関係を明らかにすることである。断端のMRIまたは超音波画像をもちいて断端の解剖学的評価行い、断端の成熟過程と成熟した断端に対するソケットデザインの提案および力の伝達効率等の義肢の制御効率との関係とを明らかにすることにより、客観的な義肢の適合評価を行うことを最終目的とする。 断端の内部組織(筋、脂肪)構造や硬さの変化は、切断者の活動量(義足でいえば歩行量等)や切断からの年数にも依存すると予想される。これらの調査により、断端の成熟の定義と、それに至る機序を明らかにすることができる。また、断端の硬さは断端の内部組織構造と関連することは容易に推測できる。したがって明らかにすべきことは、①断端内部の筋・脂肪組織比率と切断からの期間、年齢、切断高位等の因子との関係②筋・脂肪組織比率と断端の硬さ(いわゆる粘弾性)との関係③筋・脂肪組織比率と断端の硬さの切断後からの変化を観察することによる断端の成熟機序の解明となる。 一方、MRI画像データから断端の内部組織構造が把握できれば、それらと断端の粘弾性を関連付け、更にソケット装着による断端の形状変化と関連付けることが可能である。その結果、断端の形状からどの程度変化させれば適合しうるソケット形状となるかが推測可能となり、新たなソケット形状の設計手法が提案できることとなる。 さらに、断端内部組織構造と断端の筋力および歩行動作解析から得られるパラメータをスコアとし、適合したソケットを有する義肢とそうでない義肢で比較することにより、義肢の適合評価を行うことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MRI画像による内部組織構造の解析は順調に進んでおり、内部組織構造と断端の硬さやソケット形状との関係も見いだしつつある。 大腿切断者15名(片側切断者11名、両側切断者4名)のMRI画像を取得した。MRIより断端内部組織構造として筋・脂肪組織を定量した。片側大腿切断者においては非切断側である健側と断端で断端内部組織構造を比較し、片側大腿切断者と両側大腿切断者とで断端を構成する筋の断面積を比較した。片側切断者全てにおいて、断端は健側よりも萎縮し、萎縮率は年齢や切断歴と負の相関を示した。特に、断端内にある筋の中でも失われた膝関節に作用していた大腿四頭筋は大きく萎縮していた。一方、内転筋群の萎縮は小さかった。また、歩行量の少ない両側大腿切断者は片側切断者に比べて大殿筋が萎縮していた。 次に、健常者と片側大腿切断者の大腿部(以下、健側)ならびに断端の硬さを押し込み反力計で計測し、硬さに影響すると考えられる軟部組織厚との関係を明らかにした。健常者における脂肪組織厚と硬さとの関係には有意な負の相関があった。切断者の健側と断端における脂肪組織厚と硬さとの関係は、それぞれ弱い負の相関と正の相関が見られた。筋組織厚と硬さの関係は、すべてのグループにおいて負の相関が見られた。断端の筋組織厚と軟部組織の硬さの関係には有意な相関があった。この結果、MRIによる組織構造解析から断端の硬さを推測できる可能性が見いだされた。 さらに、大腿ソケットに対して、断端の横断面内において組織がどのように変形して収納されているのかを、軟部組織(筋組織、脂肪組織)の量と断端の弾性を因子として定量的に考察したところ、ソケット形状を表す値として軟部組織の圧縮率を算出し、それと軟部組織と弾性との関係を回帰式で定量的に表し、ある程度臨床と合致する結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きMRIによる断端の内部組織構造の解明を進めるとともに、義足歩行訓練に伴う組織構造の変化、内部組織構造と筋力の関係、ひいては義足歩行能力の関係を明らかにする。 特に、断端筋力の測定方法の妥当性が不十分であることから、それを検証し、筋力測定手法の確立を目指す。 ソケット設計に関しては立位状態でのMRI画像が金沢大学で取得可能であることから、立位状態でのソケット装着・非装着の状態差を明らかにし、断端形状変化と粘弾性分布の変化からソケット形状の最適解を求める。 MRI画像の取得は上肢切断端においても試み、特に筋電義手における電極設定位置の妥当性についてエビデンスを得る。
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Causes of Carryover |
超音波診断装置の仕様の決定と機種選定に時間を要し、次年度購入予定としたため。
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Research Products
(4 results)