2017 Fiscal Year Research-status Report
適切な脳内ネットワークの切り替えを促す身体活動の効果
Project/Area Number |
17K01614
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小谷 泰則 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 助教 (40240759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大上 淑美 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 研究員 (30456264)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スポーツ心理学研究 / 脳活動 / 末梢 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究により、人間の脳内には様々なネットワークが存在することがわかってきた。その中でも、「顕著性ネットワーク」と呼ばれる神経ネットワークが人間の「安静状態」と「活動状態」を切り替える役割をしており、この切り替えが不調をきたすと、うつ病や統合失調症になることが 分かってきている。さらにこの顕著性ネットワークは、身体の状態の影響(内受容感覚)を強く受けることもわかってきた。 そこで本研究では、運動経験の有無によって顕著性ネットワークの働きに差があるのかを検討し、顕著性ネットワ ークから脳の他の領域(活動状態時に賦活する実行系ネットワーク、安静状態時に賦活するデフォルトモードネ ットワーク、その他の脳領域)への働きかけ(切り替え)に運動経験の有無が影響を与えるか否かを明らかにす ることを目的とした。 初年度は、顕著性ネットワークによる切り替え機能に運動経験の差異が見られるか、特に、顕著性ネットワークの中でも身体からの情報を受け取る機能と切り替え機能に注目した。実験課題として遅延フィ ードバック・タイミング課題を用いた。この課題では、被験者に指定された秒数が経過したらボタンを押すように指示し、そのボタン押しから3秒遅延させた後にボタン押しの正誤に関するフィードバック情報を与えた。 その結果、ボタン押しの前には、運動関連脳領域の賦活を確認できた。また、フィードバック刺激前には顕著性ネットワークにおいて中心的な役割をなすといわれている島皮質の活動を確認できた。運動経験との関連性については、3年目に計画している脳のネットワーク分析を行った後に検討することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、fMRIで測定される脳活動を指標として、脳のネットワーク、特に顕著性ネットワークに関連する脳領域の活動を捉えることが大きな目標のひとつとなる。そのため、これまでの研究で顕著性ネットワークの活動惹起において有効性が指摘されていた遅延フィ ードバック・タイミング課題を用いた。 その結果、当初の仮説通りに、ボタン押しの前には課題実行と関連する脳領域の賦活が確認でき、またフィードバック前には、顕著性ネットワークにおいて中心的な役割をなす島皮質の活動も確認できている。顕著性ネットワークが本研究の議論のターゲットとなるので、実験により顕著性ネットワークの賦活を確認できたことは、研究デザインの有効性を確認することとなった。また、次年度に予定しているfMRI・脳波統合ダイポール分析に必要な脳賦活データも収集することができた。運動経験との関連性については、単純な群間比較では、明確な傾向が観察できなかったものの、3年目に計画しているネットワーク分析によって検討する方がより妥当であると考えられる。 以上のように、仮説と一致した脳領域の活動を捉えることができたことからも、研究の遂行は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の予定通りに脳波のデータも収集し、脳波のデータと本年度収集したデータを統合したダイポール分析を行い、同定された脳領域の活動を、脳波データの高い時間分解能を利用して、ミリ秒単位で推定することを予定している。また最終年度においては、ネットワーク解析を行い、運動経験との関連性を詳細に検討する予定である。
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