2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Homer's Thought of Athletic Culture
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17K01631
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 日出至郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (10195802)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 力 / 競争 / 魂 / 身体 / 英雄 / 神々 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ホメロスの英雄叙事詩における運動競技を研究し、人間の幸福に結びつく運動文化思想を解明することである。この研究を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念;「競争」「力」「勇気」「知性」「普遍的存在」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の解明が必要である。 本研究の特性は、西洋最初の代表的古典、ホメロス作品の運動競技を探究し、人間の幸福と関連させつつ、時代・地域を超越する運動文化の思想を解明しようとするところにある。ホメロス作品に関する本研究の視点、人間の幸福と関連する運動文化思想の解明は、身体教育学分野における新たな研究である。 平成29年度の研究実績は「『オデュッセイア』におけるメノスに関する研究 -神々と英雄の関係を中心として-」(新潟県体育学会平成29年度大会、新潟大学、10月21日)の研究発表である。運動競技で活躍する英雄の特性に関して、命懸けの「競争」と命が尊重されるその場面において、「力(メノス)」「身体」「魂」等の関係性を論考し、英雄の個性及び共通性を分析・検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する本質解明の基礎的研究を行った。 『オデュッセイア』の身体的競争場面における「力」:メノスは、「魂」と「身体」に関係しつつ、戦場・闘争と運動競技場面に分けることが可能である。命懸けの「競争」場面において、神々が影響する「力」の発揮があり、命の安全性が確保された「競争」場面においては、英雄の「力」に関するそのような直接的記述はなかった。 以上が研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の目的に対する平成29年度における研究達成度は、研究全体の4分の1程度であると判断する。理由は以下の通りである。 本研究の目的は、ホメロスの英雄叙事詩における人間の競争を研究し、人間の幸福に結びつく運動文化思想を解明することである。この目的を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念;「競争」「力」「勇気」「知性」「普遍的存在」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の解明が必要である。 平成29年度は、『オデュッセイア』の戦場と運動競技場面における「闘争」「競争」状況を分析・探究し、英雄の「力」「身体」「魂」と神々の関係を再検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する「力」:メノスの基礎的研究を行った。この叙事詩における身体的競争場面の「力」は、「魂」と「身体」に関係しつつ、戦場・闘争と運動競技場面に分けることが可能である。命懸けの「競争」場面において、神々が影響する「力」の発揮があり、命の安全性が確保された「競争」場面においては、『イリアス』に描写されるような英雄の「力」に関する直接的記述はなかった。 しかし、『オデュッセイア』の戦場と運動競技場面における「競争」「闘争」状況を分析・探究し、知恵、才覚、思慮の本質と、これらの概念と「力」の関係性については、これからの研究課題である。また、以上の研究成果を基本として、ホメロス作品における「勇気」「普遍的存在」「魂」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の精神性の解明も、今後の研究課題である。 以上が進捗状況に関する理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究の推進方向は、『オデュッセイア』を中心に、「普遍的存在」と「競争」「闘争」という観点から、「知性」の本質を解明しつつ、この概念と「力」の関係性について研究を進める。また、「知性」「力」と「勇気」の関係性についても明らかにしたい。 本研究の目的は、ホメロスの英雄叙事詩における人間の競争を研究し、人間の幸福に結びつく運動文化思想を解明することである。この目的を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念;「競争」「力」「勇気」「知性」「普遍的存在」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の解明が必要である。 平成29年度の研究では、『オデュッセイア』の戦場と運動競技場面における「闘争」「競争」状況を分析・探究し、英雄の「力」「身体」「魂」と神々の関係を再検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する「力」:メノスの基礎的研究を行った。この叙事詩における身体的競争場面の「力」は、「魂」と「身体」に関係しつつ、戦場・闘争と運動競技場面に分けることが可能である。命懸けの「競争」場面において、神々が影響する「力」の発揮があり、命の安全性が確保された「競争」場面においては、『イリアス』に描写されるような「力」に関する直接的記述はなかった。 平成30年度は、平成29年度の研究成果を踏まえ、『オデュッセイア』を中心として、「普遍的存在」との関わりから「競争」「闘争」の場面を検討・分析しつつ、「知性」に関する「知恵」「才覚」「思慮」について理解し、「力」との関係性を明らかにする。また、これらの概念と「勇気」の関係性についても研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)平成29年度は、新潟大学教育学部附属長岡小学校校長、同大学教養教育;健康スポーツ科学部門長、同大学保健体育・スポーツ科学講座長等に任命され、校長業務、全学・学部改革に関する会議・業務等が多忙化し、基本的活動である次のような定例研究会や学会等へ出席があまり出来ず、研究が例年のように進行しなかったためである。日本体育学会体育哲学領域定例研究会、日本体育学会(体育哲学領域)、国際スポーツ哲学会等である。 (使用計画)平成30年度の研究費使用計画は、平成29年度に実施できなかった研究を推進するため平成29年度の研究費を使用すると共に、英雄の「知性」の理解とこれらの鍵概念の関連性を解明しつつ、「力」「勇気」等の関係性を把握し、時代と地域を超越する人間の幸福に繋がる運動文化の基本的要素と関係性を探究するため、研究費を使用する計画である。 以上ように研究を進めるために、専門領域の文献入手、研究者からの専門知識の供与、および国内外の研究会等への参加と情報・資料収集を行う計画である。また、平成30年度の研究成果は、国内で開催予定の体育・スポーツ関連学会および研究機関誌において公表する計画である。
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