2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Homer's Thought of Athletic Culture
Project/Area Number |
17K01631
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 日出至郎 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (10195802)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 運動競技 / 身体力 / 魂 / 英雄 / 神々 / 競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ホメロスの英雄叙事詩における運動競技を研究し、人間の幸福に結びつく運動文化思想を解明することである。この研究を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念;「競争」「力」「勇気」「知性」「普遍的存在」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の解明が必要である。 平成29年度は「『オデュッセイア』におけるメノスに関する研究-神々と英雄の関係を中心として-」(新潟県体育学会平成29年度大会)の研究発表を行ない、運動競技と命懸けの「競争」において、「力(メノス)」「身体」「魂」等の関係性を論考し、英雄の特性を検討・分析し、時代と地域を超越する運動競技に関する本質解明の基礎的研究を行った。 平成30年度は「『オデュッセイア』の運動競技に関する研究―知性と身体力の関係を中心としてー」(日本体育学会第69回大会、2018年8月、徳島大学)の研究発表を行ない、その研究成果は『新潟体育学研究』(新潟県体育学会、2019年3月)に掲載され、令和元年度の「『オデュッセイア』の運動競技に関する研究―運動競技と忍耐力の関係性を中心として-」(日本体育学会第70回大会、2019年9月、慶應義塾大学)の研究では、英雄の忍耐力の分析・考察を行い、「知性」(ヌース、メーティス)「辛抱」(トルメーエイス)「身体力」(メノス、ステノス、アレテー)が重要であることを明示した。 以上の研究成果を踏まえつつ、令和2年度には「ホメロス叙事詩の運動競技に関する研究―英雄の精神性に焦点化して-」(日本体育・スポーツ哲学第42回大会、2020年11月、東海学園大学Zoom)を発表し、運動競技に関して戦士的精神性と「名君」的精神性が尊重されていることを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の目的に対する令和元年度における研究達成度は、研究全体の3分の2程度であると判断する。理由は以下の通りである。 本研究の目的は、ホメロスの英雄叙事詩における人間の競争を研究し、人間の幸福に結びつく運動文化思想を解明することである。この目的を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動競技の解明が必要である。 平成29年度は、『オデュッセイア』の戦場と運動競技場面における「闘争」「競争」状況を分析・探究し、英雄の「力」「身体」「魂」と神々の関係を再検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する「力」(メノス)の基礎的研究を行った。また平成30年度の研究では、命の安全性が確保された「競争」として、パイエケス人との運動競技、乞食イロスとの拳闘、弓射競技の代表的場面が再確認されると共に、それらの場面における「知性」(ヌース、メーティス)と「身体力」(メノス、ステノス、アレテー)の関係性が明らかにされ、令和元年度の研究では、運動競技と関連する英雄の忍耐力を再検討・分析し、その忍耐力には「知性」「辛抱」(トルメーエイス)「身体力」が関係していることが明らかとなった。そして令和2年度の研究においては、これまでの研究を踏まえ、叙事詩の運動競技に関して、戦士的精神性と「名君」的精神性が理解された。 しかし、これまでの研究成果を踏まえたホメロスの運動文化思想、人間の幸福に結びつく運動文化や競技の検討・分析、「普遍性」「知性」「力」等に関する構造化と関係性の解明は、今後の研究課題である。 以上が、現在までの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究の推進方向は、『イリアス』『オデュッセイア』の運動文化について、「普遍的存在」と英雄という観点から、戦士的精神と「名君」的精神の関係性を探求しつつ、「知性」「辛抱」「身体力」を分析・把握し、時代を超越する人間の幸福に繋がる運動文化の思想解明に向けて研究を進める。 本研究の目的は、ホメロスの英雄叙事詩における人間の競争を研究し、人間の幸福に結びつく運動文化思想を解明することである。この目的を達成するためには、時代と地域を越える本質理解ための鍵概念;「普遍的存在」「競争」「知性」「勇気」「力」等の再検討、これらの構造化と関係性の解明に基づく運動競技の本質把握、及び、人間の幸福に結びつく運動文化の解明が必要である。 平成29年度は、『オデュッセイア』の戦場と運動競技場面における「闘争」「競争」状況を分析・探究し、英雄の「力」「身体」「魂」と神々の関係を再検討し、時代と地域を超越する運動競技に関する「力」(メノス)の基礎的研究を行った。平成30年度の研究は、命の安全性が確保された「競争」に関して、運動競技場面における「知性」(ヌース、メーティス)と「身体力」(メノス、ステノス、アレテー)の関係性を明らかにし、令和元年度の研究では、運動競技と関連する英雄の忍耐力を分析・検討し、それには「知性」「辛抱」(トルメーエイス)「身体力」の関係性が理解され、令和2年度の研究では、運動競技に関する戦士的精神と「名君」的精神の重要性が明らかになった。 令和3年度は、令和2年度までの研究成果を踏まえつつ、叙事詩における英雄の精神性や運動競技、「知性」「辛抱」「身体力」等の分析・検討を進めると共に、ホメロスの運動競技の本質を探究し、人間の幸福に結びつく運動文化の解明に向けて研究を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は次の通りである。平成29年度は、新潟大学教育学部附属長岡小学校校長、同大学教養教育;健康スポーツ科学部門長、同大学保健体育・スポーツ科学講座長等に任命され、全学・学部改革に関する会議・業務等が多忙化し、基本的活動である定例研究会や学会等へ出席があまり出来ず、研究が例年のように進行せず、また、平成30年度は、引き続き、先の部門長や入試運営委員等に任命され、国内外の定例研究会等に参加ができず、令和元年度は前年度委員の継続による公務を行ないつつ、実技検査主任等になり、令和2年度においては新型コロナウイルス感染防止対応により、研究が停滞したことが、主な理由である。 令和3年度の研究費使用計画は、令和2年度までに実施できなかった研究を推進するため、昨年度までの研究費を使用すると共に、「普遍的存在」と英雄の精神性について探究しつつ、時代と地域を超越する人間の幸福に繋がる運動文化の思想を解明するため、研究費を使用する計画である。 以上のように研究を進めるため、文献入手、研究者からの専門知識の供与、および国内外の研究会等への参加と情報・資料収集を行い、また、令和3年度の研究成果は、開催予定の体育・スポーツ関連学会および研究機関誌等において公表する計画である。
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