2018 Fiscal Year Research-status Report
市民的教養を培う教養野外教育の展開―沿岸域の総合管理と環境創造の推進に向けて
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17K01635
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
藤永 博 和歌山大学, 経済学部, 教授 (20238596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 野外教育 / 環境教育 / 市民教育 / ボランティア学習 / 持続可能な開発のための教育 / 環境保全 / 自然再生 / 自然共生社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、沿岸域の「総合管理」と「環境創造」の当事者となる市民を育成する教養野外教育プログラムを開発するため、その理念、目的等を明確にするための「理論的研究」と、内容・方法を検討する「プログラム・教材開発」を進めている。平成30年度の研究実績は次のとおり。 <理論研究> 野外教育分野の代表的な教科書『Outdoor Education―Method and Strategies』の第1章「野外教育の定義」を翻訳した。それを参考にして、本研究で開発を目指す野外教育プログラムの理念、定義、概要を次のとおりまとめた。このプログラムは、①総合的科学としての環境教育学に基づく「環境教育」である。②「市民的教養」を培うことを目的とした「市民教育(市民性教育)」である。③市民教育の一つの手段となりうる「ボランティア学習」を取り入れる。④「環境に対する責任ある行動」につながる参加者主体の自然体験学習を実施する。このプログラムが最終的に目指すところは、市民による「自然共生社会」と「プラチナ社会」の実現である。こうした社会について考察する視点として、①「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)」、②「環境・生命文化社会」、③「生態系サービス」、④「生態系と社会システムの共進性」、⑤「マイナーサブシステンス」などを取り上げる。平成30年度は、翻訳文とプログラムの理念、定義、概要を研究ノートにまとめた。 <プログラム・教材開発> 昨年度作成したリーフチェック(サンゴ群集調査・生物多様性調査等)のための教材を、実際の授業で使用できるように再編集した。また、あらたにドローンを利用した沿岸域環境調査のための教材作成(法規、操作技術、空撮動画・静止画資料等)を企画し、業者に委託して作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、沿岸域の「総合管理」と「環境創造」の当事者となる市民を育成する教養野外教育プログラムを開発するため、その理念、目的等を明確にするための「理論的研究」と、内容・方法を検討する「プログラム・教材開発」を次のとおり進めている。 <理論的研究> ①野外教育分野の代表的な教科書『Outdoor Education―Method and Strategies(K. Gilbertson et al.)』の第1章「野外教育の定義」の翻訳、および野外教育と環境教育の定義、理念、概念のレビューを行う。②従来の標準的な野外教育理論との違いを明確にしながら、「環境市民性」を育む教養野外教育の理論、ミッション、教育目標(到達目標)を明確にし、学習過程・成果を評価する方法・ツールを開発する。 <プログラム・教材開発> ①沿岸域総合管理と環境創造の概念や方法などを環境行政、環境倫理、生態学などの分野と関連づけて編集し、教養教育に適した教育コンテンツの企画・作成準備を行う。②従来の体験型海洋実習に環境創造の要素を取り入れ、より主体的かつ創造的な実習に発展させていくために、吉野熊野国立公園やラムサール登録湿地(串本サンゴ群生地)などで、環境省自然保護官や自治体・NPO 法人の関係者の協力のもと、現地のニーズを把握するための企画調査を行う。 「研究実績の概要」に記載したとおり、「理論的研究」はほぼ完了し、研究ノート(「環境市民性を高める教養野外教育プログラムの開発に向けて―理念とミッションの構築―」『経済理論』和歌山大学経済学会)に研究概要をまとめた。「プログラム・教材開発」については、沿岸域での具体的な環境調査実習および環境創造実習(環境保全を意識させるスポーツ・レクリエーション実習等)の案と、実習で使用する教材を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、これまでの2年間に行った研究の成果を実際の授業で活用しながら、到達目標の階層化、学習過程・成果を評価する方法・ツール(ルーブリック等)について検討を行う。沿岸域での体験実習については、参加者主体のプロジェクトを授業で試みる。特に、プラスティックごみ(マイクロプラスティック)の調査と環境保全・自然再生の取り組みを組み合わせたプロジェクトや、ドローンの空撮画像を利用して沿岸域環境マップ(モニタリング用)を作成するプロジェクトは、継続的なプログラムへの進展を図る。 今後は、本研究の成果をもとに、「環境市民性を高める教養野外教育」を実践するための新たな授業の開講を目指す。さらに野外実習の現場である沿岸域の自然環境と、受講後の学生の「環境市民的行動」を継続的にモニタリングする仕組みをつくり、教育効果・学習成果の把握に努める。そのために、より組織的な科学研究費支援事業の継続を図る。
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Research Products
(1 results)