2018 Fiscal Year Research-status Report
保健体育科授業におけるアクティブ・ラーニングの理論と実践-知識と言語の視点から-
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17K01638
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
日高 正博 宮崎大学, 教育学部, 教授 (80452853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 幸弘 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 名誉教授 (00047391)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アクティブ・ラーニング / 主体的,対話的で深い学び / 内化と外化の往還 / 技能の向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,アクティブ・ラーニングを志向した体育科の学習モデルを試案した。すなわち,先行研究にあたり,体育の学習におけるアクティブ・ラーニングは,「問題解決学習」と「協働学習」のまとまりであるとするモデルを考究した。問題解決学習はエンゲストローム(2010)の示した学習プロセスをもとに「動機付け→方向づけ→内化→外化→批評→統制」のサイクルをたどるとし,なかでも内化と外化の往還が重要であることを考察した。一方,協働学習は「身体運動をする自己と他者」の間に成立する身体的・言語的コミュニケーションが重要であることを指摘した。そのうえで,学びの深まりを導く授業づくりの手立てとして,「共通課題の設定」「共通課題に対する発見・解決につながる糸口の提供」「解決結果等を伝えあう機会の確保」があげられることを考究した。 また,上記の結果を受けて,中学生を対象としたマット運動のアクティブ・ラーニングによる体育学習プログラムを作成した。 さらに,作成したアクティブ・ラーニングによるマット運動学習プログラム(10時間編成)の授業と,従来の学習プログラムの授業を,中学校1年生を対象として比較検討した。その結果,学習活動の量的、質的な検証から、AL(アクティブ・ラーニング)群の方がNL(ノーマル・ラーニング)群よりも友達に対する教え合い活動が多くみられ,「主体的,対話的」な学びの姿が認められた。そして,技能もNL群よりも向上していることが認められた。また,AL群の生徒の方が1つの技に対して「内化と外化の往還」が多く生起し,深い学びが実現できていたと考えられた。すなわち,作成したアクティブ・ラーニングによる体育学習モデルは,今後の体育学習の一つのモデルになり得ると考えられた。 上記の内容は,日本教科教育学会第44回全国大会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的枠組みを考究することができたことと,その枠組みに沿った学習プログラムを作成することができたことにとどまらず,そのプログラムを授業実践することができ,授業分析も終えることができた。 ただ,陸上競技領域で授業実践する予定であったが,授業予定者の異動により都合がつかなくなり,来年度の実践に持ち越しとなった。 以上のような理由で「(2)」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
中学生を対象にしたアクティブ・ラーニングによる体育授業は2つの実践を行うことができた。来年度はそれを小学生を対象に行う。 また,知識の学習との関連がまだ不十分であるので,来年度は実技(陸上競技)の授業と体育理論の授業を関連させた学習プログラムの作成にあたる。その後,授業実践まで行い,結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
陸上競技領域の授業を計画しており,そのための物品購入費用が発生するはずであったが,授業が来年度に移行したため執行されなかった。そのため来年度は,陸上の授業も含めて,授業実践が複数予定されるので,その際に必要となる物品の購入費を確保しておく必要があった。
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