2018 Fiscal Year Research-status Report
必修期の「表現系ダンス」における双方向的で創造的な学びを実現する指導モデルの構築
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17K01657
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
安江 美保 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 准教授 (80580729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 朱音 静岡大学, 教育学部, 講師 (40609301)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 固有の動きを有する題材に「2人の戦い」を選定 / 多様な質感を有する題材に「新聞紙を使った表現」 / 「見て分かったこと」を「やって分かること」に / 「ひと流れの動き」を意識させた学習課題の示し方 / 未熟練指導者の実践に向けて指導案モデルを再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,「表現系ダンスの指導案モデルの作成」と「熟練指導者・未熟練指導者の授業実践による指導案モデルの検証」を交互に重ねながら,表現系ダンスの指導の一般化へつなぐことを研究の目的として4年計画で取り組んでいる。2年目の今年度は,題材・テーマを決定し,熟練指導者の授業実践の成果と課題を明らかにすることにより指導案モデルの検証を行った。 取り上げる題材・テーマは,専門家チームによる検討を経て「2人の戦い」と「新聞紙を使った表現」に決定した。表現系ダンスの技能の柱は「ひと流れの動きで踊ることができる」と捉えられる。その技能を身に付けることに向けて,固有の動きの特徴を有する題材として「2人の戦い」を,多様な質感を有する題材として「新聞紙を使った表現」を取り上げ,舞踊教育の専門家3人,現場の熟練指導者2人を含むチームで指導案モデルを作成し,熟練指導者による実践(小学校3年,5年,中学校1年、中学1年)を行った。 その結果,「2人の戦い」は固有の動きを有するため,押さえるべき動きが明確で授業全体を通してそのポイントを意識した関わり(指導)を行うことができたという共通の成果がみられた。課題としては,「見て分かったこと」を「やって分かること」にしていく活動の仕組み方があげられた。一方「新聞紙を使った表現」では,児童・生徒が多様な質感の動きを楽しむことができた反面,「ひと流れの動き」をどう捉えているのか,「変化とメリハリのあるひと流れの動き」へどう導いていくのか等,熟練指導者の中でも曖昧な部分があるという課題が浮き彫りとなった。そして,これらのことを踏まえて,児童・生徒に捉えさせたい学習課題を分かりやすく示すこと,指導案に「学習活動」「活動の意図」「中心となる支援・言葉がけ」「困ったときの支援・言葉がけ」の4つを分かりやすく示すこと等の検討を要することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は,表現系ダンスの指導案モデルを作成し,熟練指導者による検証授業を行う計画であった。まず,ここ約20年間における体育科学習指導要領や,表現運動及びダンス領域に関わる書籍などから,例示として示されている題材・テーマの一覧を作成し,近年の傾向を概観した。そして,表現系ダンスの指導内容及び指導方法を探究し,指導の一般化へつなぐという研究の目的を踏まえつつ,取り上げる題材・テーマを専門家チームの会議にて検討した結果,「2人の戦い」と「新聞紙を使っての表現」の2つが選定された。実践する学年は,発達段階の観点からも分析していけるよう「表現運動」「ダンス」領域として位置付いている小学校中学年,高学年,中学校1,2年生とした。 実際に行った熟練指導者の授業実践は,昨年11月に岡山県の公立中学校1年生1クラス,12月に千葉県の公立中学校1年生1クラス,今年の2月に千葉県の公立小学校3年生1クラスで行った。予定していた岡山県の公立小学校5年生の実践は,諸事情により2019年6月に延期となり,そのため進捗状況がやや遅れている。実践した熟練指導者はいずれも実践経験25~30年間の女性教諭である。実践にあたっては,研究代表者,研究分担者で担当を決め,授業協力校へ出向いて授業観察,指導言語の録音,授業の録画を行った。また,授業後,児童・生徒に学習評価カードへ,授業者,参観者に省察カードへ記述を依頼し,指導言語のデータと合わせて分析の資料を得た。 3人の熟練指導者の実践を終えた3月末に専門家チーム会議を開催し,熟練指導者の実践から明らかとなった指導内容や指導方法についての課題を洗い出した。検証授業から得られたデータや,浮き彫りとなった課題をもとに,平成31年度(令和元年度)の未熟練指導者の検証授業に向けて,指導案モデルを再構築する段階に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,「表現系ダンスの指導案モデルの作成」と「熟練指導者・未熟練指導者の授業実践による指導案モデルの検証」を交互に重ねながら,表現系ダンスの指導内容及び指導方法を探究し,指導の一般化へつなぐことを研究の目的としている。この目的を見失わないよう,3年目の研究では,以下の内容を中心に推進していく。 1点目は,「ひと流れの動き」の捉え方を整理し,「2人の戦い」と「新聞紙を使った表現」の学習課題の示し方を検討する。2点目は,示範や見せ合い等で「見て分かったこと」を「やって分かること」にしていく学習活動の仕組み方を検討し,修正指導案モデル上に示す。 3点目は,指導案モデルに「学習活動」「活動の意図」「中心となる支援・言葉がけ」「困ったときの支援・言葉がけ」の4つを分かりやすく示す示し方を検討する。4点目は,熟練指導者の実践データを整理・分析するとともに,表現系ダンスの指導内容と指導方法について見えてきた成果と課題から,未熟練指導者の実践にどう繋げていくのかを学会で発表する。5点目は,未熟練指導者をどのように条件を揃えて決めるかを検討し,候補者をあげ,本人,所属長,対象クラスの児童・生徒,保護者の承諾を得て未熟練指導者を決定する。6点目は,熟練指導者の実践と未熟練指導者の実践と,表現系ダンスの指導内容及び指導方法の一般化をどのように関連づけていくのか,研究方法の詳細をつめていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,次の3点があげられる。 1点目は,熟練指導者の実践について,岡山県の実践を研究代表者が担当し,千葉県の実践を研究分担者が担当したことにより,交通費,宿泊費等を大幅に抑えることができたこと。2点目に,3名の熟練指導者が地方公務員という立場から,謝金を辞退されたこと。3点目は,授業で使用するCD5枚を人数分購入する際,amazon(アマゾン)を利用したことにより,代金を低く抑えることができたことが主な理由としてあげられる。 次年度使用額の使用計画については以下の通りである。物品費として図書費,撮影機器,映像記録機器,パソコン,消耗品などで70万円。旅費として国内出張で50万。人件費・謝金として指導・助言,研究補助等で50万円。その他として,学会参加費,通信費,テープ起こし等で40万円を計画している。
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