2017 Fiscal Year Research-status Report
Effects of evolutionary mindset on decision making and control strategy of a motor task under pressure
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17K01673
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関矢 寛史 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40281159)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心理的プレッシャー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,心理的プレッシャー下で知覚する心拍数の上昇等の生理的変化や不安の増加などの心理的変化が,人間の進化の過程で有効に機能したという進化論的マインドセットを運動スキルの遂行者に教示して,その教示の効果が人間の意思決定に利用される価値関数と確率加重関数にどのような影響を及ぼすかを調べるものである。平成29年度は,実験1として計画されていたプレッシャーがない条件における価値関数と確率加重関数の測定を行った。進化論的マインドセット教示を与えた群と与えなかった群の両群において,価値関数の損失回避性,感応度逓減性が統計的に有意な水準で認められた。また,両群において,確率加重関数の測定においては,客観的成功確率が30%以下の領域においては,主観的成功確率が客観的成功確率より有意に高く,客観的成功確率が約40%の地点においては,主観的成功確率と客観的成功確率に有意な差が認められず,プロスペクト理論の確率加重関数の予測を支持する結果となった。しかし,投擲課題として用いた最も難易度の低い課題の成功率が50%を超えなかったため,客観的成功確率が高い領域における主観的成功確率が測定できず,その領域における確率加重関数の変化は不明となっている。また,進化論的マインドセット教示の内容について,プレッシャー下でのその教示の有効性を5段階評定の主観評価で回答させた結果,その平均が「3.どちらでもない」との有意差を示さなかった。したがって,平成30年度においては,進化論的マインドセットの教示内容の見直しと,客観的成功確率が50%を超える領域に入る難易度の投擲課題の追加を行った上で再度実験を行い,さらに心理的プレッシャーを負荷した条件で実験2を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験1の結果から課題の難易度の設定を見直し,より難易度の低いターゲット条件を加えて確率加重関数の再検討を行う必要がある。また,進化論的マインドセットの教示内容に対する実験参加者の主観的評価が,心理的プレッシャーを負荷した状況における有効性を予測させない値であったため,教示内容の再検討を行う必要がある。しかし,価値関数の損失回避性や感応度逓減性の発現ならびに客観的成功確率が40%以下の領域における確率加重関数については,プロスペクト理論を支持する結果が得られており,上記の修正を行うことにより進化論的マインドセット教示が心理的プレッシャー下での意思決定に及ぼす影響を包括的に測定することが可能となることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
投擲課題のターゲットの位置を変更することにより,課題の難易度を下げた条件を設け,確率加重関数で客観的成功率が50%を超える領域における主観的成功確率を測定できるように変更を加える。また,進化論的マインドセットの教示文について,心理的プレッシャーが負荷された状況における教示文の有効性が予測できることを確認した上で心理的プレッシャーを負荷した実験2を行う。実験1についても,進化論的マインドセット教示を与えた群については,修正した教示を与えて測定を再度行い,実験1と実験2の結果を比較できるようにする。
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Causes of Carryover |
実験1のデータ分析の途中経過を精査した結果,課題難易度の変更(課題難易度の低いターゲットの追加)の必要性ならびに進化論的マインドセット教示文の修正の必要性が明らかになった。それらの修正を加えて実験1の追加データ収集するためには,新たな実験参加者が募集できる次年度を待つ必要があり,そのデータ収集に必要な消耗品ならびに人件費の確保が必要であったため,次年度に繰り越すこととした。また,次年度に購入予定である高速カメラの値段が本研究費申請時より上昇したため,その購入費を確保する必要もあり,次年度使用額として繰り越しを行うこととした。
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