2018 Fiscal Year Research-status Report
Writing a Interdisciplinary and Transnational Sport History: Society and Physical Culture/Movement in the United States
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17K01694
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川島 浩平 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (60245446)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スポーツ史 / スポーツ人類学 / バスケットボール / YMCA / 筋肉的キリスト教 / 帝国日本 / 大日本体育協会 / スポーツの伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
5年計画の2年目にあたる本年、本務校を武蔵大学から早稲田大学へと移したことに伴う初動的業務が嵩んだが、研究活動に大きな支障はなく、概ね順調に計画を遂行した1年だった。1年目におこなったアメフト関係の調査を踏まえ、本年はバスケットボールを中心に調査をおこなった。まずバスケットボールに焦点をおきながら、アメリカスポーツ通史記述のために有用で最新の英語文献をインターネットで検索した。また5月に赴いたカナダのマニトバ州ウィニペグでの北米スポーツ史学会会場では、書籍コーナーにおいて最新の研究実績に直接触れて確かめることができた。こうして入手した情報に基づき、計画の遂行上不可欠の書籍を多数購入した。集めた情報を整理し、これをもとに本研究が目的とする通史記述のための準備を継続した。19世紀初頭から19世紀後半までの下書きを蓄積した。これら準備は本プロジェクトの土台にあたる作業である。 さらに1年目の課題を継続し、2年目の課題への取り組みを開始した。1年目の課題の継続としては、整理した資料に基づいて日本におけるアメフトの導入を主題とする論文の草稿を作成した。今後さらに推敲したうえで英語論文としての出版に取り組みたい。2年目の課題への取り組みとしては、主たるアーカイブスを新しい職場である早稲田大学図書館と東京YMCA、日本YMCA(YMCAはバスケットボールの日本への導入において開拓的な役割を果たしており、その図書館から貴重な資料を入手することができた)として調査を行い、その成果を2019年度5月に米国アイダホ州ボアシで開催される北米スポーツ史学会で発表するための原稿としてまとめた。こうして2年目の課題をおおむね達成した。 また研究成果を2冊の書籍(和文1、英文1)、2018年5月に開催された北米スポーツ史学会での発表、2019年3月に開催された日本スポーツ人類学会でのシンポジウム等で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の主要な課題は1.5年間を通しての作業であるアメリカスポーツ史の通史記述をおこなうための調査と2.2年目の特定作業である三大スポーツの一つバスケットボールの日本のおける導入と普及に関する調査である。 まず1についてはインターネットの書店や学術的サイトでの調査で情報を入手し、アーカイブス(図書館)にて閲覧可能な文書、複写可能な文書、購入すべき文書等をえり分け、適宜必要な支出をおこなった。文書は多読、精読の技法を使い分けながら情報を整理し、論文あるいは書籍として出版するための草稿にまとめた。今年度は19世紀を中心に情報入手と執筆をおこなった。またその成果の一端を、2019年3月に早稲田大学で開催された日本スポーツ人類学会でのシンポジウムで発表し、本プロジェクトを文化人類学的な観点から再検討した。 2については早稲田大学、日本YMCA、東京YMCAなどバスケットボールの黎明期についての情報に詳しいアーカイブスでの調査をおこない、1とおなじ方法により情報を整理し、出版のための準備をすすめた。この調査ではとくに一次資料の収集と講読をおこなった。2018年の5月にカナダで開催された北米スポーツ史学会での発表後アメフトに関する成果を整理して草稿としてまとめ、バスケットボールに関する成果を2019年5月の北米スポーツ史学会発表の原稿にまとめた。 調査の進捗は、早稲田大学のHPと個人のHPを通じて適宜広報した。さらに、成果の一部を邦語書籍の一章、英語書籍の一章として出版した。また広報の延長として、今後の共同研究や発表の機会を与えられた。その詳細は以下「今後の推進方策」に詳述するが、英語での共著プロジェクトとシンポジウム発表、邦語での黒人スポーツに関する執筆と報告、身体文化に関するセッションでの討論役、スポーツ史・文化に関する協同プロジェクトへの参加、概説書の共著プロジェクトなどである。
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Strategy for Future Research Activity |
図書館・アーカイブスでの調査を予定通り継続する。米国等での国際学会発表も予定通り進めてゆく。5年間を通しての作業としての通史記述、3年目の課題としてのベースボールについても予定通り継続する。その上で、以下にのべるような推進方策を具体的にとるものとする。 まず2019年3月におこなった日本スポーツ人類学会シンポジウムでの成果を、アムステルダム大学スポーツ人類学者ニコ・ベズニエ著The Anthropology of Sport (University of California Press, 2018)の翻訳へと発展させる。翻訳作業全体を通して、本プロジェクトを文化人類学、スポーツ人類学の観点から振り返る契機とする。2019年5月に予定されている北米スポーツ史学会でおこなう発表と、同年8月に予定されている東アジア人類学会でおこなう発表を、2年目のバスケットボールに関する研究成果をまとめ、さらに発展させる機会として活用する。2019年度から着手するジェラルド・ジェムズとの共著プロジェクトを、本プロジェクトの課題を新たな観点から見直す契機とする。またハーレム・ルネサンス期の黒人スポーツに関する発表を多民族研究学会でおこない、その成果を明石書店からの書籍で出版する予定だが、これらの機会を20世紀アメリカスポーツ史の盲点である時代の調査につなげる。2019年6月に予定されているアメリカ学会部会での討論のための準備を通じて、アメリカスポーツ史の文脈についての認識を、若手研究者の精力的研究活動からさらに深めるものとする。京都の国際日本文化研究センターでの近代日本におけるスポーツに関する共同研究への参画を通じて、本プロジェクトの課題を総合的に見直す作業をおこなう。明石書店から依頼をうけたアメリカ文化概説書の共著企画によって、本プロジェクトにかかわるテーマを部分的に補強する機会として活用する。
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Remarks |
(1)は科研費により個人で運営するHP、(2)(3)は所属大学のHPである。
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