2020 Fiscal Year Research-status Report
Writing a Interdisciplinary and Transnational Sport History: Society and Physical Culture/Movement in the United States
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17K01694
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川島 浩平 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (60245446)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スポーツ史 / スポーツ人類学 / 北米アメリカ史学会 / スポーツ史学会 / スポーツの伝播 / バスケットボール / アメリカンフットボール / 野球 |
Outline of Annual Research Achievements |
5年計画の4年目にあたる本年、早稲田大学就任3年目であり、教育業務や大学執行部としての業務環境に慣れてきた反面、新型コロナウィルス禍の影響が深刻に継続したために計画変更を余儀なくされたものの、研究活動は3年目までの積み重ねを踏まえ、概ね順調に計画を遂行した1年だった。本年もこれまで同様一次、二次資料の収集と読み込みをおこない、執筆、発表、あるいはメディアを通じての広報活動などに従事した。5月に予定されていた北米スポーツ史学会等、関連学会はすべてオンラインに変更となった。アメリカスポーツ史の情報が多く、なおかつ人類学の方法論でより広い観点からスポーツの歴史と現在を網羅する意欲的な概説書『スポーツ人類学』の翻訳を完了した。 5年間の研究計画のための準備年(1年~3年目)と研究をまとめる最終年(5年目)を架橋する位置にある本年は、調査や準備以上に発表および執筆に力を注いだ。本年度に取り組んだ、あるいは着手したプロジェクトは論文3点、図書5点、発表6点、その他8点である。 4年目の活動として特に力を注いだのは次の3点である。1.『スポーツ人類学』の翻訳作業、とくに本プロジェクトのテーマであるアメリカスポーツ史に関連する箇所の文献を入手し、また精読して、本書の解説のなかでアメリカスポーツ史をより広い文脈のなかに定位した。2.北米アメリカ史学会への投稿論文、ここではスポーツ史をめぐる研究環境の日米差を明らかにすることで、今後のこの分野の研究のための土台作りとなる考察を試みた。3.イギリススポーツ史学会の定期刊行ジャーナルへの投稿論文の執筆、ここでは1932年のロサンゼルス五輪を、日米のスポーツ史の交錯点として再照射した。本年度に完了したのは1のみであり、2は第一査読を修正要でパスし、修正稿を提出したところであり、3は現在審査中である。後二者については最終年度には発表できる見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年目の主要な課題は、準備期間としての1年目~3年目と成果をまとめる最終年の橋渡しを行なうことである。そのために成果のまとめと発表作業にとりかかった。主な内容は、1.論文執筆、2.図書関連の執筆、3.学会発表の三者である。 まず1については、研究成果を海外に発信するために米国と英国のスポーツ研究の拠点である北米スポーツ史学会およびイギリススポーツ史学会の定期刊行物への投稿をおこなった。詳細については上記「研究実績の概要」に記したとおりである。また翻訳書『スポーツ人類学』の合評会を原稿としてまとめた。これは日本体育大学の定期刊行物での掲載が決定している。 2については、上で述べた翻訳作業に加え、20世紀のアメリカスポーツ史の盲点であった「ハーレム・ルネサンス」(1920~30年代)におけるスポーツ事情をスポーツと人種主義というより広い文脈のなかでとらえ直した論考を、共著の一章として執筆した。またアメリカスポーツ史を「政治」、「人種」、「ジェンダー」、「Eスポーツ」の観点から解説した論考を別の共著の四つの章として執筆した。さらに20世紀を「アメリカのオリンピック世紀」として捉え、この100年間における社会正義の実践とその展望についての論考を、別の共著の一章として執筆した。また英語による共著では、アメリカスポーツ史と私自身のかかわりを自分史的な形でまとめ、一つの章として執筆した。いずれも第4年目に執筆作業は終了しており、最終年度の報告また計画全体の報告のなかで、あらためてその内容と位置づけについて記述する予定である。 3については、国際学会NASSHでの発表がコロナ禍により2021年度に延期となったのは残念であったが、日米のスポーツ交流および関連テーマを扱う3つの発表とともにまとめ直し、より視野の広いセッションとして再編成して本年度5月末にオンラインで公開することが決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに述べたように本年度まで研究計画は概ね順調に進展している。以下では紙幅の関係でここまで述べられなかった諸点について記述し、今後の推進方策に代える。 学会発表について、国際学会NASSHについては先述のとおりである。2020年度のその他の活動として翻訳書『スポーツ人類学』の合評会が国際日本文化研究センターで2回、日本体育大学スポーツ文化研究会で1回開催された。同書は日経新聞、図書新聞の書評欄で取り上げられ、『体育史研究』でも取り上げられる見通しである。本科研プロジェクトの成果の一端として今後も広報してゆく。日本スポーツ人類学会ではバスケットボールの日本での伝播を「男性化(マスキュリナイゼーション)」という観点からとらえ直すことを主旨とする発表をおこなった。このテーマもこれまでの研究成果の一つであり、今後英語論文での執筆を準備中である。またスポーツ史、スポーツ人類学、スポーツ社会学などスポーツ研究の人文・社会科学分野に係る方法論について、日本アメリカ史学会のシンポジウムで発表する機会を提供され、本科研プロジェクトを方法論の面から補強する企画として引き受けた。2021年9月に発表の予定である。 その他の機会8点については以下の通りである。イギリスの人類学関連雑誌より、アメリカ人研究者による『阪神タイガース』エスノグラフィーの研究書の書評を書く機会を与えられた。野球に関する日米交流という観点からも注目すべき書である。日本教育新聞、ジャパン・タイムズ、東京スポーツ、スポーツ・ピックス(オンライン雑誌)、朝日新聞、赤旗、毎日新聞から本科研プロジェクトに関連するテーマについての取材を受けた。今後も広報活動に一貫としてメディアには積極的に応答する予定である。 最終年度は、現在手掛けているプロジェクトに加えて新たに、本プロジェクトのまとめにつながる英語論文一本を執筆する見通しである。
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Causes of Carryover |
70円は使い残した額である。最終年度は残額がないよう十分配慮する
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