2017 Fiscal Year Research-status Report
A study on integration and inclusion of sport in EU
Project/Area Number |
17K01720
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山口 泰雄 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (90094531)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | スポーツ政策 / EU / 統合・インクルージョン / ヨーロッパコミッション / スポーツ事業 / スポーツイベント / インクルージョン政策 / スポーツ都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、EUにおけるスポーツの統合・インクルージョン政策を、メール調査およびヒアリングをSWOT分析により検証する。具体的には、European Commissionが取り組んできたスポーツの統合・インクルージョン政策の内容分析を行う。 研究初年度は、EUのヨーロッパコミッション(European Commission: EC)の中にあるスポーツ局(Sport Unit)担当者とヨーロッパコミッションから受託事業を受けているTAFISA(The Association for Sport for All)事務局長等に対して、半構造化インタビューを行った。また、ECが実施している統合・インクルージョン政策をウェブ調査により収集し、内容分析を行った。ECは、障害者、少数民族、移住者、移民等の社会的受容の促進に対して、スポーツの役割を高く評価し、スポーツの機会が社会的受容の資源や動輪になると認識している。 ECによるスポーツ政策が開始されたのは2007年からで、Lisbon treatyという27カ国による合意がなされたことによる。ECからのスポーツ事業の申請には、EU28カ国の中で5カ国、5団体が最低基準になっている。これまでの主要事業は、①スポーツ都市ネット、②伝統スポーツプロジェクト、③健康づくりのためのスポーツクラブプロジェクト、ヨーロッパスポーツ週間、④障害者スポーツ事業、⑤アンチドーピング事業、⑥難民社会的受容プロジェクトなどが行われている。各事業は、5カ国、5団体等だけでなく、独自にパートナーやスポンサーを集めることが奨励され、各年度報告に対して、独立評価機関による事業評価(4分野)が行われ、81点/100点以上が、翌年の事業継続の基準になっている。これらのデータを分析し、ヨーロッパスポーツ科学学会(アイルランド)へ発表申請を行い、7月の研究発表が承認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、EUのヨーロッパコミッションにおける統合・インクルージョン政策の担当者(スポーツ局)とヨーロッパコミッションから事業受託しているTAFISA(The Association for Sport for All)事務局長への半構造化インタビューを行うことが主目的であった。スポーツ局担当者は、昨年11月に開催されたTAFISA World Congress(ソウル)でインタビューを行い、言語データの収集を行った。TAFISA事務局は、昨年9月にフランクフルト郊外にある同事務局を訪ね、事務局長だけでなく、3名の事務局員からも受託事業に関する情報を収集することができた。 2番目の目的であったEUスポーツフォーラムにおける発表テーマの内容分析であった。これもウェブサイトから過去のコングレス情報を収集し、内容分析を行った結果、「スポーツ都市」「伝統スポーツ」「健康づくりのためにスポーツクラブ」「障害者スポーツ」「アンチドーピング」「難民社会受容」の6つに分類することができた。 最後に、これまでの内容分析、インタビューの結果をもとにして、スポーツ政策の統合・インクルージョンに関するヒアリング調査票を作成した。次年度は、この調査票を基にして、EUにおけるスポーツ政策のステークホルダーに対して、半構造化インタビューを行う。また、2018年7月には、研究成果をヨーロッパスポーツ科学学会において、研究発表を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究初年度の成果と先行研究のレビューを通して、各国におけるスポーツ団体と事業およびスポーツ行政の統合・インクルージョンに関する調査票を作成する。調査票は、北米でPh.D.(スポーツ社会科学)を取得した4名のbilingual研究者により、back translationを実施し、翻訳・概念・尺度の対等性(equivalence)を検証し、妥当な英文調査票を作成する。次に、TAFISA-EUropeの会長(Peter Barendse氏・オランダ)に対して、英文調査票を送付し、妥当性およびワーディングのチェックを依頼する。完成した調査票をTAFISA-EUrope加盟国(代表者)へ送付し、メール調査を実施する。回収したデータ分析を行い、量的指標により統合・インクルージョンの現状を浮き彫りにする。研究成果を国内・海外学会において発表し、研究論文を投稿する。 次に、EUにおけるモデル国のケーススタディを実施する。EUにおけるスポーツ団体の統合化モデル国として、オランダ、ドイツ、フィンランドを選定した。フィンランドは、2017年にフィンランドオリンピック委員会(FOC)とフィンランドスポーツ連盟(FSF)が統合することが決定している。オリンピック委員会とスポーツ連盟が統合した3団体に対して、統合とインクルージョン(障害者スポーツ団体との統合・事業)に関するインタビュー用調査票を作成する。半構造化インタビューを行う。インタビューはICレコーダーに録音し、語学業者によりテープ起こしを行う。インタビュー調査の結果はSWOT分析を行い、スポーツ団体の統合化による強みと弱みを浮き彫りにする。3年間にわたる研究成果を総合・考察を行い、国内海外学会でのプレゼンと研究論文の投稿を行う。
|
Causes of Carryover |
2017年度助成金に残金が発生したのは、ヨーロッパにおける現地調査を2回計上していたが、オランダ・ドイツにおける現地調査の1回に留まったことによる。当初、ヨーロッパコミッションへの現地調査は、11月にソウルにおいて開催されたTAFISA World Congressにおいて担当者の半構造化インタビューを実施することにより代替が可能になった。助成金の残金は、2018年度において現地調査を行い、ステークホルダーへの半構造化インタビュー実施する。収集した言語データは、形態素解析を行い、スポーツにおける統合・インクルージョン政策の構造を明らかにする。
|