2018 Fiscal Year Research-status Report
A study on integration and inclusion of sport in EU
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17K01720
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山口 泰雄 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (90094531)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スポーツ政策 / 統合・インクルージョン / EU / ヨーロッパコミッション / スポーツ事業 / スポーツイベント / インクルージョン政策 / スポーツ都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、EUにおけるスポーツの統合・インクルージョン政策を、メール調査およびヒアリングをSWOT分析により検証する。2018年度は、2017年度の研究成果とEU Sport Forumの発表演題の内容分析を通して、統合・インクルージョンに関する調査票を作成した。調査票は4名の研究者によってback translationを実施し、英文調査票を作成した。次に、シンポジウムのために来日していたTAFISA-Europe会長に、英文調査票の妥当性およびワーディングのチェックを依頼し、若干の修正を行った。調査票をTAFISA-Europe加盟国へ送付し、メール調査を実施した。現在は調査票の回収中で、データ入力の後に量的指標により統合・インクルージョンの現状と段階を分析する。 第1回TAFISA-Europeスポーツ・フォー・オールゲームズがオランダのフリースランドで開催され、現地調査を行った。同ゲームズは、NOC*NSF、TAFISA、スポーツフリースランド等が連携・協働し、Europe CommisionのErusmus+の補助金で運営した。参加国はヨーロッパを中心に20ヵ国、合計50種目の伝統スポーツの約500名が参加し、観客は数十万人に上った。同ゲームズの目的は、EU諸国における民族の誇りを伝統スポーツにより確認し、健康増進を図り交流することにある。EUへの加盟により、国境が無くなったが、それぞれの民族の誇りを伝統スポーツに見出し、参加型イベントの開催により、EUの統合とインクルージョンを進めようとしていることが伺えた。オランダを訪ねた際に、国立スポーツナレッジセンターを訪ね、オランダにおけるスポーツの統合・インクルージョン政策に関する予備調査を実施した。また、アイルランド・ダブリンにおいて開催された第23回ヨーロッパスポーツ科学学会において、研究成果の口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、EUのヨーロッパコミッションにおける統合・インクルージョン政策の担当者(スポーツ局)とヨーロッパコミッションから事業受託しているTAFISA(The Association for International Sport for All)事務局長への半構造化インタビューを行った。また、EUスポーツフォーラムにおける発表テーマの内容分析を行った結果、「スポーツ都市」、「伝統スポーツ」、「健康づくりのためのスポーツクラブ」、「障がい者スポーツ」、「アンチドーピング」、「難民の受容(インクルージョン)」の6つに分類することができた。 研究2年目の2018年度は、スポーツの統合・インクルージョンに関する現状と達成度を測定する調査票を作成した。バイリンガル研究者によるback translation(再翻訳)の後、妥当性を高め、対等性を保証する英文調査票を完成した。完成した英文調査票によりTAFISA-Europeに加盟する会員に対してメール調査を実施した。今年度は、データ入力を行い、EU諸国全体の統合・インクルージョンの現状とステップを明らかにする。また、ヨーロッパコミッションとTAFISA等の連携事業の現地調査を実施し、EUへの加盟により、国境が無くなったが、それぞれの民族の誇りを伝統スポーツに見出し、参加型イベントの開催により、EUの統合とインクルージョンを進めようとしていることが伺えた。また、研究最終年度の2019年度のモデル国のケーススタディの予備調査をオランダにおいて実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2019年度は、まず、TAFISAのEU加盟国に対するメール調査の結果を分析する。その際、統合・インクルージョンの現状とステップを分析する。分析の成果は、日本生涯スポーツ学会等の国内学会と国際スポーツ社会学会等の国際学会において、研究発表を行う。 次に、EUにおけるモデル国のケーススタディを実施する。EUにおけるスポーツ団体の統合・インクルージョンのモデル国として、オランダ、ドイツ、フィンランドを選定した。ドイツはアテネオリンピックにおける惨敗により、ドイツオリンピック委員会(DOC)とドイツスポーツ連盟(DSB)が2006年に統合し、DOSB(ドイツオリンピックスポーツ連盟)に再編成された。オランダは翌2007年に、オランダオリンピック委員会とオランダスポーツ連盟が統合した。フィンランドは、2017年にフィンランドオリンピック委員会(FOC)とフィンランドスポーツ連盟(FSF)が統合することが決定している。オリンピック委員会とスポーツ連盟が統合した3団体に対して、統合とインクルージョン(障害者スポーツ団体との統合・事業)に関するインタビュー用調査票を作成する。完成した調査票により、オランダではNOC*NSF理事、ドイツではDOSB副会長、フィンランドではFOC事務局長に対して、半構造化インタビューを行う。インタビューはICレコーダーに録音し、語学業者によりテープ起こしを行う。インタビュー調査の結果はSWOT分析を行い、スポーツ団体の統合化による強みと弱みを浮き彫りにする。3年間にわたる研究成果を総合・考察を行い、国内海外学会でのプレゼンと研究論文の投稿を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度において残金が発生したのは、ヨーロッパにおける現地調査を3回、国際学会における研究成果の発表を1回計上していた。しかし、ヨーロッパにおける現地調査が1回、そして国際学会における研究発表1回で、研究計画がほぼ達成できたことによる。というのは、調査票の妥当性およびワーディングのチェックを依頼し議論する予定だったオランダのPeter Barendse氏が、日本スポーツクラブ協会のスポーツクラブサミット(東京)に招待され、その際に、調査票のチェックができたことによる。また、2月28日~3月10日にかけて、別の公益財団法人の依頼によりライプチッヒ大学に滞在中、TAFISA事務局長に新たなErasmus+事業に関するヒアリング調査をすることが可能になったからである。
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