2018 Fiscal Year Research-status Report
障害者スポーツ選手の熱中症事故を防ぐ-2020年東京パラリンピックを見据えて-
Project/Area Number |
17K01723
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福原 幸樹 広島大学, 病院(医), 理学療法士 (80644971)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 博 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70314713)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 障害者スポーツ / 下肢切断者・選手 / 体温調節機構 / 熱中症 / 身体冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は暑熱環境下の運動時における下肢切断者の体温調節反応を人工気象室内で健常者と比較検討した(基礎的研究)。その結果は、下肢切断者の直腸温は健常者と比べて、差がなかった。そのため、今後の研究の推進方策として、さらに厳しい環境条件を設定し、同一の運動方法で下肢切断者の体温調節反応の検討を挙げ、平成30年度はこの課題に対して取り組んだ。 平成30年度は高温多湿環境を設定し、運動時における下肢切断者の体温調節反応を健常者と比較検討した。また、平成29年度で下肢切断者の非切断側において、代償性発汗を示唆されたため、平成30年度は前額部と胸部の局所発汗量の測定を追加した。平成30年度の研究成果として、①高温多湿環境においても、下肢切断者の直腸温は健常者と比べて差がなかった。②下肢切断者の全身発汗量は健常者に比べて多く、特に発汗の多い部位は胸部であった。 下肢切断者は下肢の一部を失っているため、熱中症になりやすいと言われているが、平成29年度と平成30年度の研究では、体温上昇に大きな違いを示さなかった。この研究は、運動強度や環境条件を統一した初めての研究であり、下肢切断者が健常者と比べて、高体温になりやすいわけではないことを示した。下肢切断者の体温が上がらない理由は、下肢切断者は発汗量を増やすことで、熱放散を行っていた。つまり、残された皮膚で代償的に発汗量を増やし、体温上昇を抑制していた。一方で、下肢切断者の全身発汗量は健常者と比べて多く、また脱水率が高いことを示した。全身発汗量の増加は脱水の進行をもたらす。これらの結果は、今後の研究に大きな意義を持たせるものであり、熱中症予防策につながる有用なデータとなりうる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は暑熱環境下の運動時における下肢切断者の体温調節機構を人工気象室(基礎的研究)とフィールド調査(実践的研究)から明らかにし、下肢切断者の障害者スポーツ中の熱中症予防策を提案することを目的としている。 平成30年度の研究計画は基礎的研究であり、おおむね順調に進んだ。本研究課題の研究計画段階では、身体冷却の有効性を検討することであったが、前年度の今後の研究の推進方策で、さらに厳しい環境条件で基礎的研究を行うことを提案し、その研究は予定通り実施することができた。また、昨年度の課題として挙げていた対象者数が少ない点については、対象者数を増やして実験することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度と平成30年度の研究結果から、下肢切断者は高体温になりやすいわけではないが、脱水状態になりやすいことを示した。本研究課題の研究計画段階では、身体冷却の有効性の検討を挙げていたが、身体冷却ではなく水分補給を優先すべきか、再検討している。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、次年度に国際学会を控えており、渡航費または学会参加費に費用を使用したいため。また、国際学会誌に投稿準備を進めており、英文校正費や投稿費を考えた場合、次年度の予算のみでは、資金不足が予想されたため。
|
Research Products
(4 results)