2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K01734
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鯉川 なつえ 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (70338424)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 女性アスリート / LEP / FAT / IGF-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、健康な女性アスリートおよびFemale Athlete Triad(以下FAT)アスリートにおけるLEP服用による副次的効果を明らかにすることを目的とした。 本年度は検査項目の検討と基礎データの継続的収集を実施した。対象者は研究に同意した大学生女子長距離ランナー15名であった。対象者を正常月経を有しFAT症状がみられない8名(19.75±0.71歳)の正常群と、続発性無月経等のFAT症状がみられる7名(18.43±1.13歳)のFAT群に分類した。対象者には年間を通して定期的に、身体組成測定、血液検査、骨密度測定(DEXA)、運動量(走行距離)調査および栄養調査を実施した。 貧血関連項目は両群に差はなかった。腰椎骨密度の若年成人比較%(Young Adult Mean:YAM)は、正常群が98.76±6.09%、FAT群は84.00±9.71%であり、FAT群は著しく低い骨密度であった。骨代謝に関連する項目においては、ビタミンDが正常群が30.23±5.82 pg/mL、FAT群は24.86±0.90 pg/mLでありFAT群の方が有意(p<0.03)に低かった。女性ホルモンのE2は、正常群が74.11±49.54mIU/ml、FAT群は9.93±7.10mIU/mlであり、FAT群は有意(p<0.005)に低値であり、女性アスリートに推奨される値 (20mIU/ml以上)を満たしていなかった。また、成長ホルモンの分泌に影響を及ぼすIGF-1は、正常群が229.88±22.40pg/ml、FAT群は183.00±30.43pg/mlであり、FAT群は有意(p<0.004)に低値を示し、20歳女性に必要な基準値を大きく下回っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は、検査項目の検討を実施したが、貧血項目に有意差がみられなかった。その理由として、大学生長距離ランナーは貧血に気を配っていることから、自ら鉄サプリペント等を積極的に摂取しており、正常群とFAT群との間に差がみられなかったと考えられる。しかし、FATは栄養問題であることから、引き続き栄養不足関連の血液検査項目を定期的に調査する必要性があると思われる。女性ホルモン関連項目および成長ホルモン関連には有意な差が認められたため、継続的なデータ収集が必要であることが明らかとなった。DEXAによる骨密度データでは、FAT群の明らかに低骨密度であることが明らかとなった。そのため、今後栄養指導からのLEP処方での改善を継続的に確認する予定である。また、骨代謝マーカーに関しては、トレーニング量に影響されることから、運動量(走行距離)との関連を確認中であるが、関連性についてはまだみられていない。 FATの治療は、第一に栄養指導(栄養改善)、次いでトレーニングの軽減(停止)、それでも改善が見られない場合は薬物療法といわれている。日本においては、栄養指導はなされるものの、トレーニングへの介入が非常に難しく、米国のようにスポーツドクターが強制力を持ってトレーニング量をコントロールさせることは非常に難しい。本研究においては、FAT群は、約6ヶ月間栄養指導が実施された。それにより続発性無月経に改善がみられなかった3名が、医師の診断によりLEP服用が開始された。今後、正常群とFAT群の全てのデータに関して継続的に検討をすすめていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、昨年度検討した血液項目を中心として、継続的にデータを収集する。FAT群でLEP服用までに至る対象者の数が確保しづらいのが現状である。そこで、FATでなくとも、月経調整や月経困難症等の改善を目的としてLEP服用を希望している女性アスリートを広く研究ボランティアに募り、対象者の数を増やしていく予定である。また、食事調査データと血液検査データおよび骨密度データとの関連性および、トレーニング量と血液データとの関連性について詳細な分析を進めていく。 今秋には、日本において学会発表を予定している。また、米国の研究では、さまざまな理由からFATアスリートに対するピルの服用にはネガティブな姿勢である。そこで、同研究に精通する米国研究者に本データをみていただき、日本と米国との違いおよびFAT治療の可能性について意見交換を試みる予定である。そのディスカッションを元に、最終年度(31年度)には、日本人FATアスリートの現状とLEP服用によるさまざまなデータの変化をまとめ、パイロットスタディとして国際学会にて発表できるようにしていきたい。
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