2019 Fiscal Year Research-status Report
総合型クラブの育成支援を担う複数の民間スポーツ組織の相補的関係性が創出する公共圏
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17K01739
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水上 博司 日本大学, 文理学部, 教授 (90242924)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 総合型地域スポーツクラブ / 社会関係資本 / スポーツの公共圏 / スポーツプロモーション / クラブマネージャー / ラディカル・デモクラシー / 社会運動論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究成果の一つを日本スポーツ社会学会編集企画委員会が刊行した共著「2020東京オリンピック・パラリンピックを社会学する:日本のスポーツ文化は変わるのか」に所収した。論文タイトルは、第9章の「地域スポーツの行方:地域のスポーツプロモーションはどのような人々が担うのか」である。 この論文では、東京オリンピック・パラリンピック後の地域スポーツのあり方を「スポーツプロモーション」と呼ぶことにした。スポーツプロモーションとは、行政といった官主導ではなく、民主導でスポーツ振興を主体的に実施することを意味する。本論文では、スポーツプロモーションのために何が欠けているのか、何が必要なのかを論文の「問い」にした。この「問い」を突き詰めていくと人材が必要であることに行き着いた。本論文では、日本の生涯スポーツの中核的人材となっている総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)のクラブマネージャーに着目した。クラブマネージャーはスポーツ指導者の公認資格である。すでに20年以上の歴史をもつ資格でありその実績は高く評価すべきだ。そこで、実績を確認するために、本論文ではクラブマネージャーの交流型研修会という社会空間に着目した。この社会空間は、クラブマネージャー間の社会関係資本をつくる基盤と位置づけ、研究の仮説的枠組みに位置付けた。社会関係資本は、官主導ではなく民主導のスポーツプロモーションを推進する人的資源となるからである。さらに、この社会空間の創出には、行政だけではなく、総合型クラブや民間スポーツ統括組織、また競技団体や地域団体など、多様な社会集団の相補的関係性が必要であるからである。 こうして本論文では、クラブマネージャーが交流型研修会という社会空間を通じて社会関係資本を創出し、その関係性が地域のスポーツプロモーションを担う主体となっていることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果は、1997年から2018年までの約20年間にわたり筆者が設立運営した総合型クラブの情報ネットワーク支援NPO(以下、支援NPO)を研究対象としている。これまで3篇の論文で、その20年間の活動を記述してきたが、2006年から2011年については未だ分析が手付かずである。 2006年から2011年は、戦後政治史において、はじめて政権が自由民主党から民主党に変わった政変の期間にも当てはまる。この政権下では民主導の政治への市民参画の道筋をつけるところとなった。その印象的な事業の一つをあげてみよう。国家予算に関わる諸手続きにおいて、国民に広くその事業予算の無駄を知らしめた「事業仕訳け」は、その議論の公開性が「新しい公共」の主体とされるNPOにも強いインパクトになった。生涯スポーツ政策にも大きな影響を及ぼしたと言える。総合型クラブは、この「事業仕訳」において、「廃止」「縮小」の仕訳対象となった。総合型クラブ関係者は、大きなショックを受けると同時に、こうした事業の「仕訳対象」にならないよう社会に対して声をあげた。総合型クラブの結束が呼びかけられた。この一連の活動を社会学的には「社会運動論」の研究枠組みから論じることができる。2020年に公表を予定している研究論文では、このような視点から総合型クラブと支援NPOの関係性を社会運動の一つとして分析する。とくに、人的資源としてのNPO人材、一方のボランティア人材との比較検討をすることで社会運動を論じることができる枠組みを提示した。そうすれば、スポーツにおける社会運動が、どういう意味をもっているのかを論議することができるからです。さらにスポーツプロモーションのあるべき社会形態を考えることにつながる。ともすれば、スポーツの民主主義論を論じることにもなろう。そういう論議が2020年の研究論文において可能になることを願っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、スポーツにおけるデモクラシー論の研究枠組みを整理する。社会運動論やラディカルデモクラシー論の基礎文献をスポーツ現象との間でその関連性を整理し、スポーツ界における民主化を実現するための研究視点の提示をする。スポーツ界には、旧来型の非民主的なガバナンス組織が多い。閉鎖的なスポーツ集団は、スポーツ界の特徴だ。さらにスポーツを社会運動論やラディカルデモクラシー論で論じるような研究者はほとんどいない。どのような視点で研究すればよいのか、という研究情報も少ない。本研究計画では、スポーツを社会運動論やラディカルデモクラシー論で論じる際には、どのような手法があるのか、そのための視点には何があるのかを明らかにできるような論文をまとめる。そうすれば、これまでの研究論文の共通軸のようなものを提示することができる。 二つ目には、スポーツ組織の相補的関係性が創出されるために必要な個別的なスポーツ集団機能を明らかにすることである。これまで日本スポーツ界では、運動部や実業団といったスポーツ集団がチーム型として結束のシンボルとなっていた。業績主義や結果主義にはマッチする集団論であった。しかし一方で、その結束原理がスポーツ界のさまざまな非民主的側面を残存させてしまった。コンプライアンスに抵触するスポーツ課題には、日本型のスポーツ集団がソトからの意見を極端に排除する閉鎖性が原因だ。そういうスポーツ集団を根底から見直し、集団間の相補的関係性、つまり集団間が協働主体になれるようなスポーツ集団のあり方を提唱することである。今後、チーム型のスポーツ集団の限界を整理し、複数のチームや集団が連携共存するクラブ型のスポーツ集団の必要性を提唱する。それはスポーツの民主化とスポーツプロモーションを創出する最も基盤となるスポーツ集団の考え方である。日本型のスポーツ集団や組織の再検討は急務なのである。
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Research Products
(3 results)