2019 Fiscal Year Research-status Report
介護専門職の包括的ストレスマネジメント教育プログラムの開発
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17K01786
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
稲谷 ふみ枝 鹿児島大学, 法文教育学域臨床心理学系, 教授 (00343723)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 認知症介護 / ストレスマネジメント / 職業性ストレス / 共感性 / 視点取得 / 教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、認知症介護の心理的負担とバーンアウト軽減を目的に介護専門職のためのストレスマネジメント教育プログラムを開発することである。平成29年度は、介護専門職にアンケート調査を行い共感性と共感疲労、バーンアウトとの関連の検討から、メンタルヘルスへの影響因子を探るため、国内約800名を対象に多変量解析(解析対象は650名)を行った。平成30年度は3つの学会、日本ストレスマネジメント学会、日本心理学会、九州心理学会で発表し、介護専門職を対象として,共感性の認知的要素が感情的要素を介してQOLに影響を及ぼすという仮説モデルを共分散構造分析によって検証した結果,頻繁にBPSDに対応している介護専門職のQOL支援として,共感性を高める介入は有効であり,共感性の中でも「視点取得」の向上をねらった介入がより効果的である可能性が示唆された。 そこで平成31年度(令和元年)は、新しい介護ストレスマネジメント教育プログラム、すなわち「視点取得」を促進するプログラムの構成を行い、介護施設等において横断的な介入研究をデザインし、その教育プログラムの効果検証をスタートした。 新プログラムのプロトタイプ版として、共感的コミュニケーションスキルとストレス対処スキルから構成した教育プログラムを作成し教育プログラムを冊子にした。介護職49名を2群に割り付けて、従来の「ストレスの気づきと日常のストレス予防に資する」プログラムとの統制比較を行った。その結果、2つのプログラムともに職業性ストレス度において介入効果が示された。しかしながら2つのプログラムに、視点取得、共感的要因の得点に差は示されなかった。その結果を日本ストレスマネジメント学会(第18回)で発表した。また成果物として、学術論文を北九州市立大学文学部紀要(人間関係学科)に投稿掲載、全国社会福祉協議会発行の介護プロ向け雑誌「ふれあいケア」に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度までに、調査研究より介護ストレス・バーンアウト、共感性疲労を軽減するための要因を分析検討し、包括的ストレスマネジメント教育プログラムの方向性を定めることができた。今年度は、4月にフランス・介護専門職に共感メソッドであるバリデーションの専門家からエキスパートとしての指導助言を受けて、新しい介護ストレスマネジメント教育プログラム、すなわち「視点取得」を促進するプログラムの構成を行い、介護施設等において横断的な介入研究をデザインし、その教育プログラムの効果検証をスタートし、新プログラムのプロトタイプ版を冊子にした。介護職49名を2群に割り付けて、従来の「ストレスの気づきと日常のストレス予防に資する」プログラムとの統制比較を行い、日本ストレスマネジメント学会で発表した。さらに九州臨床心理学会でも地域包括ケアシステムに位置づけて、自主シンポジウムに座長として参加した。国際心理学会(ICP2020)に介入分析データの一部を発表する予定である。 来年度が最終年度であるが、プログラム評価を行ったのちに、再度介入プログラムの統制比較研究の実施が残されている。当初の予定より若干遅れ気味であるが、ステイクホルダーである介護施設からの協力と連携がスムーズであるため、実施環境を整えて介入研究につなげる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、プロトタイプのプログラムを認知症ケアの専門家およびプログラム評価の専門家も交えて評価を行い、介入研究の効果をフランス、スウェーデン等の大学研究機関や実践者らとの研究会議を継続し、その結果を踏まえて、最終的な教育プログラムを再構成し、介入研究を行う。来年度は研究機関の最終年度であるため、すでに国際学会1つ、国内で2つの学会発表を予定している。3月時点で、世界的なCOVID-19の影響で、2020年度に開催予定であった国際学会が2021年に延期が決定していることや高齢者施設等での介入研究ができないことを危惧しており、研究が計画通りに進まない時の対応として、2021年度まで研究期間を延長し、研究をまとめ公開を進める予定である。
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Causes of Carryover |
介入研究が来年度に継続するために、謝金と旅費、その他として会場費などの一部が使用できなかった。来年度は成果物としてのマニュアル冊子等、また国内外の学会旅費等にまわす予定である。
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