2019 Fiscal Year Research-status Report
メンタルヘルス不調のリスク低減要因を抽出する追跡研究
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17K01826
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川口 英夫 東洋大学, 生命科学部, 教授 (50416921)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心身の健康 / メンタルヘルス不調 / 予防 / 筆跡情報 / 運動習慣 / 食習慣 / 睡眠 / 介入手段 |
Outline of Annual Research Achievements |
ボランティア学生111名(2年間通しての参加者110名)に毎年4月にデジタルペンを用いた内田クレペリン検査、生活習慣を測定する質問票DIHAL.2、食習慣を測定する質問票BDHQ、ストレスを測定する学生版ストレス認識調査票、睡眠の質を測定するPSQIを実施した。デジタルペンで取得した筆跡の時間情報からストローク間隔時間比を算出し、参加者を高リスク群と低リスク群に分けた。2群間における経年変化を調べるため、各質問票の年間変化量Δ(2年次データ-1年次データ)を算出して用いた。 1年次における参加者の平均年齢、男女比、居住条件、BMIは、高リスク群、低リスク群間に有意差はみられなかった。一方、生活習慣では、Δ現在の運動の仕方で、高リスク群は低リスク群と比較して有意にスコアが下がっていた(p < 0.05)。また、DIHAL.2各尺度スコアでは、高リスク群は低リスク群と比較してΔ休養スコア、特にΔストレス回避行動が高かった(p < 0.10)。食習慣では、BDHQによるΔ栄養素およびΔ食品群の摂取割合で、高リスク群は低リスク群と比較してΔ不溶性食物繊維とΔ食事バランススコアが有意に下がっていた(それぞれp < 0.05)。睡眠では、Δ睡眠効率で、高リスク群は低リスク群と比較して有意にスコアが下がっていた(p < 0.05)。さらにストレスに関しては、2群間で有意差はみられなかった。これらのスコアの変化を用いて多重ロジスティック回帰分析したところ、Δ睡眠効率とΔストレス回避行動はメンタルヘルス不調のリスクと有意に関連していることが分かった(OR = 3.47,95%CI:1.31-9.16,OR = 0.72,95%CI:0.53-0.99)。 以上の結果から、生活習慣の改善、特に睡眠の改善がメンタルヘルス不調のリスクへの介入手段になり得ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、メンタルヘルス不調のリスクが高い場合、そのリスクを低減する要因をコホート調査(追跡調査)で抽出し、個人が実行可能な対処方法に昇華させて提示することにある。実際に、ボランティア大学生を対象として、個人レベルでコントロールできるものとして、生活習慣、特に運動習慣と食習慣、さらに睡眠に着目した調査を実施した。統計的な検討の結果、メンタルヘルス不調のリスク低減の介入手段となり得る要因の抽出に成功した。さらに、本研究の成果を国際学会等で発表し外部評価を受けることで、研究方針が妥当かどうか検証したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究と並行して実施した活動量計を装着する予備検討で、精神健康度が有意に向上する知見を得た。そこで、1ヶ月間のウェアラブル活動量計(スマートウォッチ)の装着有無におけるメンタルヘルス不調のリスク軽減を調べる。また、1ヶ月間のメンタルヘルス不調のリスク変化と生活習慣の関連性を調べ、メンタルヘルス不調のリスク軽減方法を検証する。これらの介入調査を実施し、メンタルヘルス不調のリスク軽減方法を明確にすることを目指す。
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