2017 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋由来の細胞外小胞を介した新しい代謝促進メカニズムの解明
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17K01843
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小林 由直 三重大学, 保健管理センター, 准教授 (70378298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 暁子 三重大学, 医学系研究科, 特任助教(研究担当) (00598980)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運動量 / 細胞外小胞 / 骨格筋量 / 中性脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
75gの経口糖負荷試験を行った203人(男性76人、女性127人、平均年齢54歳)を対象に、多機能インピーダンス法を用いた身体測定データや血液データ測定を行い、併せてライフコーダを用いて1週間の運動解析を行った。血中細胞外小胞 (EV)数は、フローサイトメトリーにて測定した。 運動量の解析において、低強度運動量 (<4 METS) は、BMI, 体脂肪率、収縮期及び拡張期血圧、中性脂肪と有意な負の相関を示し、HDL-コレステロール (HDL-C) とは有意な正の相関を示したことより、強度の低い運動であっても肥満や脂質代謝の改善に寄与していることが示唆された。また中~強強度運動量(4~9 METS)は HOMA-Rと有意な負の相関を認め、比較的強い運動がインスリン抵抗性の改善改善に寄与していることが示唆された。 血中EV数は女性と比較して男性の方が有意に高く (p<0.001)、TGが上昇した人で有意に高い (p<0.001) ことが明らかとなった。 スペアマン解析により、血中EV数は骨格筋量を含む様々なメタボリック因子と相関することが明らかになり、BMI, 骨格筋量, ウエストヒップ比, 収縮期及び拡張期血圧、ALT, γ-GTP, 総コレステロール, 中性脂肪, 空腹時血糖, 及び HOMA-Rとは正相関し、HDL-Cとは逆相関が認められた。これらの中で最も強い相関を示したのは中性脂肪 (ρ=0.597, p<0.001) であり、HOMA-RとHDL-Cとも強い相関を示した。 重回帰分析により血中EV数と有意に相関する因子を解析したところ、全体では中性脂肪とHOMA-β、男性では中性脂肪のみ、女性では中性脂肪とHOMA-βであった。また、健常者では中性脂肪と骨格筋量であり、健常者においてのみ血中EV数と骨格筋量との相関が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
住民健診受診者を中心とする対象者において、運動調査、身体測定、血液サンプルの採取を行い、血中EV数と各種メタボリック関連因子データとの関連を統計学的に明らかにすることができた。健常者において骨格筋量とEV数が相関したことより、骨格筋由来のEVの存在が示唆されたが、この相関は他の多くのメタボリック因子の異常によりマスクされている可能性が示唆された。 現在はEVの成分解析を行っており、脂肪細胞や肝細胞などに由来する臓器特異タンパク質の定量的検出を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行なっているEVの成分解析において、臓器特異タンパクに加え、マイクロRNAの解析も加える。 骨格筋由来のEVを得るために、運動量の異なる患者血清、あるいはエルゴメーター負荷後の血清から骨格筋由来のEVを分離し、運動により変動するEV成分をプロテオミクス解析やmicroRNAの定量的解析により特定する。 さらに、得られた骨格筋由来のEVを培養細胞に添加し、標的細胞の代謝の活性化を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
投稿した論文の査読に時間がかかり (Scientific Reports)、2回の査読で約6カ月を要した(現在も査読中)。そのため追加実験の方向性を決定するのが遅れた。 今年度は、プロテオミクス解析やマイクロRNA解析などによるEV成分の解析や、培養細胞実験におけるEV効果の確認(mRNAやタンパク解析)を行い、適切に予算を執行する予定である。
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