2017 Fiscal Year Research-status Report
性差医学に基づいた肥満小児の病態把握と食事・運動療法に対する応答
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17K01844
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
冨樫 健二 三重大学, 教養教育機構, 教授 (10227564)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥満小児 / 生活習慣病 / 性差 / 内臓脂肪 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人における高血圧症や脂質異常症、2型糖尿病など、生活習慣病の病態には大きな性差が存在することが知られているが、将来の生活習慣病発症リスクが高く、早期対応が必要な肥満小児において性別にみた病態、性差を考慮した対応策の検討は十分なされていない。 平成29年度は肥満度20%以上の小児98名について主に病態の性差に関する横断的解析を行った。平均年齢、肥満度に性差は認められなかった。腹部脂肪分布として、ウエスト径、内臓脂肪面積で肥満男児が有意な高値を示したものの、皮下脂肪面積に性差は認められなかった。血圧に性差は認められなかった。中性脂肪、総コレステロール、LDL-Cに性差は認められなかったが、HDL-Cは肥満女児において有意な低値を示した。肝内脂肪蓄積の指標である肝臓CT値/脾臓CT値は肥満男児で低値を示し、肝内脂肪の蓄積が進んでいることが示唆された。また、それに伴い肝機能のマーカーであるAST、ALT値や痛風の原因物質である血清尿酸値も男児において高値を示した。空腹時血糖値は男女とも正常範囲内であったが、肥満女児においては空腹時インスリン値が男児に比べ有意に高値を示した。 同年齢、同程度の肥満であっても男児において内臓脂肪の蓄積や肝内脂肪の蓄積が進んでおり、肥満女児においてはHDL-Cの低値ならびに空腹時インスリンの高値が認められた。本研究より、肥満男児においてはNAFLD、肥満女児においては2型糖尿病への進展が危惧されるなど、小児においても性差に基づいた病態の理解や対応について検討する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、平成29年度は外来通院群約100名、入院治療群約20名よりデータ収集を行うことができた。外来通院群に関しては予備的な統計処理も終了し、概ね予定どおり進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は外来通院群の症例数を増加させるとともに、出生から現在までの成育過程について、および、栄養の摂取状況について性差を検討する。また、レプチン、アディポネクチンなどのアディポサイトカインについて測定・解析を進めるとともに、細胞間クロストークのマーカーとして細胞外小胞(Extracellular vesicles; EV)の性差についても新規に検討を進める。入院治療を行う肥満小児の症例数を増やし、運動療法、食事療法を進めるとともに治療前後の各パラメータの変化量について性差を検討していく。
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Causes of Carryover |
分析キットのロット違いによる結果の誤差を減らすためアディポサイトカイン等の分析を一括して行うこととしたため。また、新規に細胞外小胞の解析を行うため分析キットや消耗品が必要となる。
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