2018 Fiscal Year Research-status Report
性差医学に基づいた肥満小児の病態把握と食事・運動療法に対する応答
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17K01844
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
冨樫 健二 三重大学, 教養教育院, 教授 (10227564)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥満小児 / 生活習慣病 / 性差 / 内臓脂肪 / インスリン抵抗性 / 細胞外小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は昨年度に引き続き外来通院群、入院治療群における症例数を増やすとともに細胞間クロストークのマーカーとして細胞外小胞(Extracellular vesicles; EV)の性差についても新たに検討を進めた。肥満小児104名(男児69名、女児35名)を対象とし、血清検体を用いたフローサイトメトリーによりEV数を定量した。EV数は肥満男児24990.8±17589.6個/μL、肥満女児24111.2±19967.9個/μLであり、全体でみた場合、性差は認められなかった。しかしながら、肥満男児では体重、肥満度といった体格要素とEV数に正の相関関係を認めた(それぞれr=0.480, r=0.567, P<0.001)が肥満女児においてその関係は認められなかった。皮下脂肪面積、内臓脂肪面積とEV数の関連においても肥満男児ではそれぞれr=0.345、r=0.346(P<0.05)の正の相関を示したが、肥満女児では認められなかった。血圧、血液生化学などの生活習慣病危険因子とEV数との関連においては男女とも中性脂肪とEV数との間に有意な相関関係が認められた(肥満男児r=0.629、肥満女児r=0.573, P<0.01)。以上の結果より、肥満男児では脂肪量の増加にともない細胞間の情報伝達に関わるEVが増加し、他の臓器とのクロストークが増加している可能性が示唆された。 入院治療群6名(男児3名、女児3名)において、入院にともなう肥満の改善とEV数の変化について検討した。EV数は41921.3±34384.0個/μLから21852.3±6097.8個/μLへ低下したが有意差は認められなかった(P=0.116)。一方、中性脂肪の減少率とEV数の減少率は有意な相関を示し(r=0.825、P<0.05)、性に関わらず中性脂肪の変動がEV数と深く関わる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、平成30年度は外来通院群約200名、入院治療群約40名よりデータ収集を行うことができた。分析等も順調に進んでおり概ね予定どおり進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年の8月頃まで外来通院群、入院治療群の症例数を増加させ、腹部脂肪分布や血液検体の分析を行う。また、対象者が予定数に到達次第、性差を検討するための統計解析を進める。
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Causes of Carryover |
理由:一部血液検査項目(内分泌物質等)は同じ測定系で測定した方が測定精度が高まるため臨床検査会社へ依頼するのを保留している。
使用計画:サンプル数が揃った段階で速やかに臨床検査会社へ測定を依頼する予定である。
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