2018 Fiscal Year Research-status Report
Application of BirA enzyme-labeling methods for the discovery of health food ingredients to prevent muscle atrophy
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17K01847
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 修司 神戸大学, 農学研究科, 助教 (50379400)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BioID2 / 筋肉 / ヒートショック蛋白質 / HSPBs / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の骨格筋では、筋原線維蛋白質の変性、異化の促進、運動神経の脱落が生じ、分化能の低下、筋線維タイプの遷移の異常が起こり、筋力及び筋肉量が低下する。持続的な筋力トレーニング (運動負荷) は、蛋白質の同化を促進し、筋力・筋肉量の改善が期待される。高齢者においても運動負荷による筋力低下の予防効果が広く知られているが、一方で効果的な筋萎縮予防の実践には、過度な運動負荷による高齢者の身体への負担も懸念される。 本課題では、大腸菌ビオチン修飾酵素のビオチンリガーゼ変異体(BirA)を用いたBioID酵素標識法技術を基盤に、筋肉増加に関わるインスリン様増殖因子(IGF-I)及びヒートショック蛋白質(HSPBs)を介した細胞内シグナル伝達分子の探索を進め、高齢者の筋力減退予防に有益な動物性食品の新たな健康機能性の開発を目指している。 本年度は、運動負荷に伴う筋細胞のシグナル伝達におけるHSPBsの機能解析として、進展収縮刺激によるHSPBの上流シグナルの検討を行い、MAPKAPK2を同定した。また、A. aeolicus (超好熱性真正細菌)のBirAを用いたBioID2酵素標識法を導入し、HSPB5と相互作用する蛋白質の探索を行い、小胞体ストレス依存的に相互作用する蛋白質候補としてpolo like kinase 2 (PLK2) を同定した。さらに、筋細胞のIGF-I受容体の下流で筋肥大化に関わる候補蛋白質として検討を進めているSte20 like kinase (SLK)の活性化機構について、Rhoファミリー低分子量G蛋白質の結合ドメインの検討を行い、SLKのC末側の数十アミノ酸まで結合領域の絞り込みに成功した。また、筋萎縮予防に有益な健康食品成分の探索として、抗炎症効果を有する漢方成分を用いた検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿って、細胞伸展装置を用いて、筋細胞株に伸展刺激を与える実験系を構築することができた。また、HSPB sにBioID2酵素標識法を早期に導入することができ、BioID2酵素標識法とnonoLC/MS/MSを組み合わせた網羅的な解析により、小胞体ストレス依存的にHSPB5と相互作用する蛋白質を多数同定することができた。また、IGF-Iによる筋萎縮の抑制機構の解析では、BioID酵素標識法で明らかになったRhoAの新たな結合蛋白質であるSLKについて、昨年度に引き続き in vitro蛋白質結合実験を行い、SLKのRhoA結合領域として、C末側に存在する二つのコイルドコイルドメインの一方に絞ることができた。また、筋萎縮予防に有益な健康食品成分の探索では、抗炎症効果を有する漢方成分で検討を行い、有用な結果を得ることができた。これらの成果より、酵素標識法の開発は着実に進んでおり、本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の分析において、HSPBの結合蛋白質の同定、BioID2酵素標識法を用いた高感度検出系の構築、筋萎縮抑制に繋がる細胞シグナル伝達の解析など、当初に計画していた研究計画の大半を達成することができたため、残りの期間では、各研究で明らかになった成果の子細なデータを収集し、研究成果の取り纏めを進める予定である。また、有益な健康食品成分の探索については、筋萎縮予防の評価系を立ち上げ、有益な効果が期待できる成分について、更に広範囲に探索を進めると共に、余力があれば、その作用機序の研究など進める予定である。
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Causes of Carryover |
年度末の業務が立て込んでいたため、僅かな金額で、研究計画への影響がない理由から、試薬の購入の一部を先送りしたため、次年度に使用額が生じた。
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Research Products
(5 results)