2018 Fiscal Year Research-status Report
過栄養性脂肪肝発症における膵臓―脳―肝臓の臓器間ネットワークと腸内細菌叢の関与
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17K01855
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
加隈 哲也 大分大学, 保健管理センター, 准教授 (80343359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正木 孝幸 大分大学, 医学部, 講師 (00423715)
後藤 孔郎 大分大学, 医学部, 助教 (10457624)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス / 糖尿病抵抗性 / 肥満抵抗性 / 脂肪肝抵抗性 / インスリン分泌 / 迷走神経遮断 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回使用した膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス(TNFαTgマウス)は糖尿病抵抗性、肥満抵抗性、脂肪肝抵抗性という極めてユニークな表現型を呈している。血中TNFαは上昇しないことから、TNFαによる直接作用ではなく、パラクラインしたTNFαがラ氏島由来のホルモンの機能的障害を引き起こし、それがTNFαTgマウスの表現型を規定していると考えている。そのメカニズムについて、さらなる検証を行った。ブドウ糖負荷時の経時的なホルモン動態を検討するためには、通常同一個体での実験を行う。しかしながら、複数の一個体から経時的に、短時間に十分量の採血をすることは難しいと判断し、群間での比較を試みた。12匹の同一個体から、随時、絶食時、再摂食時に採血した際の血糖値は、それぞれ8匹ずつ3群のマウスから採血した際の血糖値とほぼ完全に一致した。同条件下で下大静脈から採血した際のインスリン値は、両マウスともに、摂食状態に応じて同様に変化していた。一方で、IPGTTの前置と40分後の血糖は、絶食時、再摂食時と同様の変化を示したが、TNFαTgマウスのブドウ糖負荷40分後のインスリン値の増加は完全に欠如していた。前者の食事負荷は経口摂取、後者のIPGTTは腹腔内投与という違いがある。つまり消化管を介した作用の有無が、TNFαTgマウスのインスリン分泌を制御している可能性を示している。一方、TNFαTgマウスでは、ADHが恒常的に過剰発現していることがわかっている。この中枢での発現変化、また肝臓での変化が神経を介した経路による可能性を考え、迷走神経膵臓枝の切断術を実施した。術前への回復を確認できたマウスに高脂肪食負荷を行ったが、摂食量、飲水量、随時血糖値、肝臓重量、副睾丸脂肪重量、病理組織、ALT、TC、TG、インスリン、グルカゴン、GLP1のいずれも有意な変化は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス(TNFαTgマウス)で認められた糖尿病抵抗性、肥満抵抗性、脂肪肝抵抗性という表現型が、どのようなメカニズムによって発症するのかを検証している。迷走神経膵臓枝の遮断では、上記の表現型に全く変化が観察されなかった。つまり、これらの変化は神経シグナルを介していないことが判明した。その結果、膵臓ラ氏島局所で行った変化は血流を介した液性情報をメインなシグナルとして、本マウスの特徴を支配していると考えられた。またTNFαTgマウスではIPGTT時のインスリン分泌が欠如していることから、消化管を介した作用の有無が、TNFαTgマウスのインスリン分泌を制御している可能性を示している。このことは、前年度に報告した腸内細菌叢の特徴的な変化と関係しているのかもしれない。つまり血流を介した液性情報に、特徴的な腸内細菌叢の介在が疑われる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、多くの時間を迷走神経遮断術の実験に費やしたが、迷走神経の遮断では表現型には変化がないことが判明した。本年度は肝臓のメタボローム解析を中心に研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
一番大きな理由は神経遮断実験に時間を費やしたことである。4回ほど同様な実験を繰り返したが、結果的に表現型には全く変化を認めなかった。従って、当初予定していた肝臓のメタボローム解析がほとんど進行しなかったため予算に余りがでた。本年度は肝臓のメタボローム解析を中心に、未使用額の予算を使用したいと考えている.
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Research Products
(1 results)