2020 Fiscal Year Research-status Report
過栄養性脂肪肝発症における膵臓―脳―肝臓の臓器間ネットワークと腸内細菌叢の関与
Project/Area Number |
17K01855
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
加隈 哲也 大分大学, 保健管理センター, 准教授 (80343359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正木 孝幸 大分大学, 医学部, 准教授 (00423715)
後藤 孔郎 大分大学, 医学部, 講師 (10457624)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス / 肝臓メタボローム解析 / 脂肪肝抵抗性 / 脂肪合成低下 / 嫌気性代謝亢進 / アミノ酸代謝亢進 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年までの研究成果で、膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス(TNFαTgマウス:TransgeneがLow copyの個体)に過栄養負荷(60%高脂肪食、30%高ショ糖食)を行った際の肝臓メタボローム解析では、TNFαTgマウスは野生型マウスと比較して、過栄養負荷に対する肝臓内代謝変動が明らかに少なく、それが脂肪肝抵抗性を示した一因であると考えられた。 本年度はさらに具体的な解析を進めた。MetaboAnalystによるPathway解析とEnrichment解析をしたところ、野生型マウスではde novoの脂肪合成が有意に活性化していたが、TNFαTgマウスではそれが観察されなかった。つまりTNFαTgマウスは元来、肝臓内の脂肪合成は低下したマウスと判断できる。一方で、TNFαTgマウスではペントースリン酸経路が活性化していた。つまり解糖系が亢進しているマウスであることがわかる。中でもWarburg効果が高く、これは酸化的リン酸化によるATP合成を抑えて、解糖系によりエネルギーを得る代謝リプロプラミングが起きていることを示している。つまり嫌気性代謝が亢進したモデルマウスとなる。特に高脂肪食負荷ではケトン体代謝が活性化していた。同時に、TNFαTgマウスでは、概してアミノ酸代謝が亢進しており、特に高ショ糖負荷においては、それが顕著であった。 これらの結果は、少なくとも肝臓においては、相対的にはグルカゴン作用の方が有意であることを示している。TNFパラクラインしたTNFαがラ氏島由来のホルモンの機能的障害を引き起こし、そのバランスがこのマウスの表現型を規定していると考えているが、そのエビデンスとして非常に興味深い結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス(TNFαTgマウス)で認められた糖尿病抵抗性、肥満抵抗性、脂肪肝抵抗性という表現型が、どのようなメカニズムによって発症するのかを検証している。本年度は肝臓メタボローム解析をさらに進めた。TNFαTgマウスの肝臓では、脂肪合成は低下しており、嫌気性代謝、アミノ酸代謝が亢進していること、またそれが過栄養負荷においては、より顕在化することが判明した。以上は、本マウスの少なくとも肝臓においては、インスリン作用よりグルカゴン作用の方が有意であることを示している。しかしながら、パラクラインしたTNFαがラ氏島由来のいずれのホルモンも機能的障害を引き起こしており、インスリン/グルカゴンともに本来の機能より低下していると思われる。その微妙なバランスがこのマウスの表現型を規定していると考えられ、非常に興味深い結果であった。 まとめに入る時期でもあるが、昨年同様に家庭内の事情(妻が脊髄腫瘍で、一昨年の秋に手術。子供が小学生であり、家族のフォローに時間が必要)とともに、保健管理センターに勤務のため、新型コロナ感染症への対応で時間がとられ、研究エフォートが顕著に減った。そのため科研費の執行を越年させていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、まさに新型コロナウイルス感染症の対応(発症者、濃厚接触者への対応、職員や学生のワクチン接種など)に奔走しているところであるが、研究的には大体終わっている。早く論文化に向けて頑張っていきたいと思っている。
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Causes of Carryover |
一番大きな理由は家庭内事情と新型コロナ対応により、絶対的な研究エフォートが減ったため、研究が進行できず予算に余りがでたことである。今年の一番の目的は論文化であり、未使用額の予算を使用したいと考えている.
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Research Products
(1 results)