2020 Fiscal Year Research-status Report
Research for understanding life course effect of childhood environment on health in later life among community-dwelling older people
Project/Area Number |
17K01864
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Research Institution | Hokusho University |
Principal Investigator |
小坂井 留美 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (20393168)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 幼少期 / 家庭環境 / ライフヒストリー / テキストマイニング / 高年齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,北海道の在宅高齢者を対象としたライフヒストリー調査,及びこれを基にした疫学的検証から,幼少期の家庭環境と高齢期の心身の健康との関連を明らかにすることを目的としている.今年度は,1)幼少期の近隣関係と高齢期の社会的健康の関連を検討し,2)COVID-19禍でのライフヒストリーに関する調査を実施した. 1)高齢者94名(平均年齢±SD:77.8±8.0歳)のインタビューデータから,「幼年期の近隣関係」の語りを抽出した.発言レコード総数41,743件のうち,近隣関係のキーワードが含まれた発言は49名にあり,発言割合は全体の約1%であった.社会的健康は,MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)の役割・社会的健康を示すRole-social component score(RCS)を用いて評価した.近隣関係発言の有無による比較では,有意なRCS得点の差はなかった(平均値±SD:なし群47.5±1.8,あり群48.8±1.7,p=0.576).RCS得点は,性差は認められず(男性47.1±2.7,女性48.5±1.4,p=0.651),年代差が認められた(60歳代48.1±3.0,70歳代52.7±1.7,80歳代以上43.5±1.8,p=0.002).年代別に検討したところ,60歳代において近隣関係の発言のなし群はあり群より有意にRCS得点が低値であることが示された(p=0.007).近隣関係の語りの感情種別による年代を調整したRCS得点比較では,ネガティブ(平均値±標準誤差:50.1±4.0)やポジティブ(同:50.0±2.5)な感情のみが抽出された人で高値を示す傾向が認められたが,有意ではなかった(p=0.841). 2)Lindらの報告(J.Gerontology B, 2020)を基に,COVID-19禍での生活における人生や記憶の反映について,2021年3月~4月に郵送調査を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は,幼年期の家庭環境の中で近隣関係に焦点をあて,高齢期の健康において近年重要性の増している社会的健康との関連について検討した. 幼年期の近隣関係の主な語りは友人との関連であったが,結びつきの強かったキーワードに「人」があり,個別の様々な人との関わりが語られた.直接的な結びつきとしては抽出されなかったが,「親」のキーワードは近隣関係の発言に限った場合でも最頻出の語であった.今後さらに,同年代以外の人との結びつきを抽出した分析や出来事の内容を掘り下げる定性的な検討が必要と考えられた. 今回の結果は,幼年期の近隣関係の結びつきが高齢期の社会的健康の維持に寄与するという仮説に向けては,明確な関係として示すことはできなかった.これに関わる要因として,本対象者全体の社会的健康が平均値において同年代の他の標準的な集団と比べて比較的高く保たれた集団だったことが上げられる.社会的健康得点の上位や下位に層別化した分析なども,今後検討していきたい.また,幼年期の近隣関係の語りはレコード数でみると,全レコードの約1%に過ぎず,寄与は限定的だったといえる.一般の地域在宅高齢者のライフヒストリーについては,まだ定量的な分析を加えた研究は多くないため,より適切なデータマイニング方法の確立に向けて知見を重ねていく. 疫学的検討にむけては,追加インタビュー調査やライフヒストリー調査対象地域での健康状態・生活習慣調査および体力測定は,2020年度はCOVID-19の影響を受けほとんど中止となった.COVID-19の感染拡大の影響は続いており,現在のところ調査再開の見込みはたたないことから,研究の進捗としては「遅れている」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究活動を行っている北海道では,現在2021年5月9~31日の期間でCOVID-19の感染拡大防止のためのまん延防止等重点措置が実施されている.本研究は高齢者を対象としていること,対面インタビューを主とした研究であることから,慎重に調査実施を検討していく必要がある.疫学的な調査においては,一部の地域において2021年度の健康状態・生活習慣調査および体力測定会の開催中止が決定しているため,申請時の計画からスケジュールの見直しが生じると予測される. 2021年度は,可能となった段階で2020年度に遂行できなかった追加インタビューおよびインタビューデータのテキスト分析を進める.今年度中に実施不可と判断された場合は,蓄積されたデータの分析を更に進め,高齢期の健康を予測する因子としての幼少期の家庭・家族要因の質問項目作成し,郵送による地域住民調査とその分析による検証を行っていく.
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大防止による研究活動の縮小により,インタビューとそのテキスト化委託料および調査補助者人件費で予定した金額の使用が下回った.今年度の研究活動もこの影響は続くと考えられるが,調査計画の見直しに沿い適正に支出をしていく.
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[Presentation] Effect of regular participation in physical fitness checkups on preventing weakness among community-dwelling older people in northern Japan2020
Author(s)
Kozakai R,Ueda T, Sasaki H, Ide K, Hanai A, Oda S, Kuroda Y, Takada S, Honda R, Ogawa H, Odajima M, Aiuchi T, Okita K.
Organizer
The 25th annual congress of the European College of Sports Science
Int'l Joint Research
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