2021 Fiscal Year Research-status Report
Research for understanding life course effect of childhood environment on health in later life among community-dwelling older people
Project/Area Number |
17K01864
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Research Institution | Hokusho University |
Principal Investigator |
小坂井 留美 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (20393168)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼少期 / 家庭環境 / ライフヒストリー / テキストマイニング / 高年齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は, COVID-19禍を踏まえて過去の経験と高齢期における困難への適応との関連を検討した.分析対象は,2021年3月~4月に実施した郵送調査において回答の得られた男性9名,女性41名(平均年齢80.5±6.4歳)であった.調査項目は,現在の生活状況,健康状態,COVID-19禍での生活状況や想起された過去の経験であった.主な結果を以下に記す. ・現在の生活状況・健康状態では,不調が心配される「ほぼ外出しない」の回答は10.2%,「健康状態が悪い」は14.3%であった.COVID-19禍以降に「より憂鬱を感じるようになった」25.0%,「よりなかなか眠れなくなった」7.3%と,COVID-19禍の影響と思われる不調が確認された. ・現在「心配なこと」(自由記述)をテキスト分析した結果,「感染(13件)」,「コロナ(8件)」が頻出語で上げられた.また「がん」や「糖尿病」など1語ずつの件数は少ないものの疾患名も多く抽出され,COVID-19感染やそれに伴う持病の悪化への懸念が示された.「大変と思うこと」では「会えない(5件)」,「外出(5件)」が多く,「家族」や「友人」に会えない状況が上げられた.一方,「良くなった/新しく始めたこと」に「時間(4件)」,「家(3件)」,「手洗い(3件)」が上げられ,家での活動を充実させている様子や手洗い習慣を前向きに捉える回答もあった. ・COVID-19禍でよりも大変な時代として,10代頃までに体験した「戦争」,「貧乏」,「病気」などが上げられた.これらの経験により「人や物を大事にする」,「我慢する」ことを学んだとの認識につながっていた.この時期のライフヒストリー分析から,「働き詰めであった」,「学校に行けなかった」,「住まいを転々とした」,「(死別等で)親と離れて暮らした」などの具体的経験が確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度も,疫学的検討に向けた追加インタビュー調査やライフヒストリー調査対象地域での健康状態・生活習慣調査および体力測定はCOVID-19感染拡大の影響を受けほとんど中止となった.2年に及ぶCOVID-19禍は,本研究の対象である高齢者の現在の生活や健康状態にも影響していることが懸念された.本研究計画当初とは対象者を捉える状況が異なることも考えられたため,その把握を行うとともに,COVID-19禍のような災禍への適応は過去の経験との関連が推察されることから,ライフヒストリーを用いた検討を行うこととした.本検討では,Lindら(Lind et al., 2020. doi: 10.1093/geronb/gbaa105)がライフヒストリーデータから提示した,COVID-19禍における高齢者の“強み”Life reflection,Adaptive use of personal memory,Generativityを基に整理を進めることとした.COVID-19禍において高齢者の脆弱性が強調される中,適応力にも着目すべきと考えたためである. 今回の結果は,COVID-19禍以降に健康面では憂鬱や入眠困難を感じる人が増えていることが示され,対象者の健康やQOLが一時的に悪化もしくは加齢に伴う低下の程度が大きくなった可能性が考えられた.一方,対象者の青年前期までの戦中・戦後に経験した生活の困難さが,高齢期における災禍での生活において想起されており,3分の1程度がその経験からの学びを得たと感じていた.Lindらの示す高齢者の“強み”を読み取ることができ,疫学的検討に向けた視点の一つを得た. しかし,疫学調査実施の具体的な見込みが立たなかったことから,研究の進捗としては「遅れている」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,現時点で研究活動を行っている北海道において昨年度の同時期に出ていた措置等は出されておらず,様々な活動が再開の方向にある.本研究は高齢者を対象としていることから,慎重に調査実施を検討していく必要があるが,本研究活動も可能な限り実施していく. 具体的には,今年度までに明らかにした,幼年期における家族との関わり,「よく動く」「作り出す」経験,高齢期までを通じた「遊び」の感覚,「貧困」や「働きづめ」に代表される困難からの学びを軸とした,追加インタビューおよびインタビューデータのテキスト分析を行う.最終の疫学的調査に向けては,幼少期に対する発言の多かった70歳以上を対象として,COVID-19禍の健康やQOLへの影響を考慮した検討を行う.
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Causes of Carryover |
繰越金の理由は,COVID-19感染拡大の影響が昨年度を上回り,調査活動はほぼ停止状態であったためである.予定したインタビューとそのテキスト化委託料,調査補助者人件費および研究打ち合わせや成果発表費は使用できなかった.2022年度は,研究推進方策に沿い,適切に執行していく.
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[Presentation] Effect of group exercise on functional capacity among community-dwelling older people in northern Japan2021
Author(s)
Kozakai, R,Ueda, T., Sasaki, H., Ide, K., Hanai, A., Oda, S., Kuroda, Y., Takada S., Honda, R., Ogawa, H., Odajima, M., Aiuchi, T., Okita, K.
Organizer
The 25th Nordic Congress of Gerontology
Int'l Joint Research
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[Presentation] Effects of communication-encouraged group exercise program on physical fitness in community-dwelling older people in northern Japan2021
Author(s)
Ueda, T.,Kozakai, R., Sasaki, H., Ide, K., Hanai, A., Oda, S., Kuroda, Y., Takada S., Honda, R., Ogawa, H., Odajima, M., Aiuchi, T., Okita, K.
Organizer
The 25th Nordic Congress of Gerontology
Int'l Joint Research
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