2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanisms of cancer cachexia-induced heart failure: Toward the development of novel cancer treatment combined with excise therapy
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17K01884
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
上野 晋 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00279324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 美希 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (60758077)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん悪液質 / モデルマウス / 心機能障害 / 自発運動 / ユビキチン・プロテアソーム系 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の成果として、がん悪液質症状ととともに心機能障害を伴うモデルマウスを確立できたことから、引き続きこのモデルマウスを作製し(イソフルラン/セボフルラン吸入麻酔下にてBALB/cAJcl-nu/nu nudeマウスの皮下にヒト胃がん細胞株85As2を移植;1×10^6 cells/site×2 sites)、今年度は悪液質症状に対する、回転かごによる自発運動の効果を検討した。自発運動負荷群は移植後2週目より回転かご付ケージ内で飼育することにより作製した。 悪液質/非運動群で認められた、悪液質の指標である体重および食餌摂取量の減少は、悪液質/自発運動群では有意に抑制されていた。さらに腫瘍の大きさも有意に抑制された。また心重量、肺重量、骨格筋重量、脂肪量の低下についても自発運動により有意に抑制され、心機能については左室駆出率の抑制も有意に改善されていた。また心筋および骨格筋の組織学的検査を行ったところ、骨格筋組織では悪液質/非運動群において筋線維の萎縮像が観察され、これまでに報告されている悪液質に伴う筋萎縮と類似した所見であった。一方、心筋組織では心不全状態で知られる心筋線維化は顕著ではなく、むしろ心筋細胞が融解変性しているような所見が得られた。さらに悪液質/自発運動群ではこの心筋変性部位が出現する割合が減少している傾向が認められた。 以上よりヒト胃がん細胞株85As2を移植したがん悪液質モデルマウスにおいて、自発運動の負荷は悪液質症状の進行ばかりでなく心機能障害の進行に対しても抑制する効果を発揮する可能性が示唆された。興味深いことに、心筋および骨格筋の病理組織像からは、心筋と骨格筋の変化が異なる機序によって生じている可能性が示唆されており、現在心筋および骨格筋各々の変性の分子機序について、ユビキチン・プロテアソーム系に焦点を当てて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していたがん悪液質モデルマウスの作製に引き続き、今年度計画していた悪液質症状に対する自発運動の効果についての検討についてもほぼ計画通りに進行している。悪液質症状である体重および食餌摂取量の減少、骨格筋重量の減少ばかりでなく、左室駆出率の低下という心機能障害も自発運動負荷により抑制されたことから、運動負荷により心機能障害を伴うがん悪液質が改善する可能性が示唆されている。 重量が減少した心筋および骨格筋の組織標本からは、骨格筋はこれまで報告されていた悪液質に伴う筋萎縮に一致する組織像が観察されたが、心筋ではこれまで知られている線維化というよりはむしろ融解変性に類似する所見が得られた。これまで報告されている悪液質モデルや心不全モデルでは心萎縮が報告されていることがほとんど無かったことから、本研究で確立したがん悪液質モデルマウスに特異的なものと考えられ、心筋および骨格筋に対するがん悪液質の影響およびその機序が異なる可能性を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に確立した心機能障害を伴うがん悪液質モデルマウスを用いて、今年度は本研究が目指す運動負荷の効果を検討した。その結果、自発運動負荷により悪液質症状のみならず心機能障害も改善されるという、期待した効果が得られた。特記すべきことは、このモデルマウスで出現した心萎縮である。心筋の組織学的検査からはこれまで知られている心筋の線維化のような所見とは異なる変性像が観察されており、さらにこの変性の程度も自発運動負荷により軽減している可能性が考えられている。今後はこの心筋における変化の分子機序を解明することも課題となるため、まずはユビキチン・プロテアソーム系に焦点を当てた解析を計画しており、その中でDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子解析を導入することを考えている。
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Causes of Carryover |
計画していた段階では、今年度海外で開催される国際学会での参加・発表を想定していたが、日本開催の国際学会に参加・発表したこととスケジュールの都合から実現できなかったため、旅費が想定よりもやや少ない使用額となったことが主な理由である。それ以外の費目については当初の計画通りに研究が進んでいることもあり、概ね予定していた使用額となっている。 次年度は分子機序解明のための分子生物学的解析が中心となり、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析も計画しているため、その解析費用の増額の必要性が考えられることから、この次年度使用額をその一部に充てることを計画している。
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Research Products
(5 results)