2018 Fiscal Year Research-status Report
幼児初期の移動的・平衡的運動の形成過程における保育環境と指導方法の解明
Project/Area Number |
17K01890
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松嵜 洋子 千葉大学, 教育学部, 教授 (90331511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
無藤 隆 白梅学園大学, 子ども学研究科, 教授(特任) (40111562)
石沢 順子 白百合女子大学, 人間総合学部, 准教授 (40310445)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幼児初期 / 保育環境 / 身体活動量 / 運動発達 / 遊び / 身体活動の経験差 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動能力は幼児期以降だけでなく、それ以前の運動発達状況や保育環境が影響すると考えられる。本年度は幼児初期の子どもについて以下の調査を実施した。 2~3歳児クラスにかけての子ども(15名)を対象に保育時間内の身体活動量を追跡的に測定し、その変化を検討した。その結果、走・歩行などの移動量が増加し、強度の高い活動も増加する傾向がみられたことから、加齢に伴って活動の強さや速さも増大していることが推察された。一方、両時点において個人の活動性の高さは相対的には変化しない傾向がみられた。中・高強度活動時間の推移を比較したところ、主活動において活動量が多い傾向は共通であった。また3歳児クラスにおいては自由遊びの時間帯にも活動量が多くなっていたことから、子ども自身で活発な遊びができるようになっている可能性がうかがえた。 また2園を対象に、1歳児(26名)、2歳児(33名)の子どもの動作の獲得実態を調査し、動作獲得の発達と活発さとの関連を検討した。その結果、1歳児クラスよりも2歳児クラスの方が活発であり、高月齢の子どもの方が活発だった。18項目中6動作でほぼ全員について保育者は「できる」「概ねできる」と評定しており、園によって子どもの運動発達の違いはないことが示唆された。「できる」と評定された子どもがいる一方で、「したことがない」という子どもがおり、敷地面積や園庭面積などの環境、保育内容や方針によって、身体活動の経験差がみられた。保育者は様々な動作を獲得した子どもを活発であると評定したが、単に動作獲得の種類数だけで判断しているわけではなかった。 さらに3園の保育所において、0歳児クラスから2歳児クラスまでの子ども(合計101名)を対象に運動発達に関する質問紙調査および保育環境と指導法の観察、保育中の身体活動量の測定を実施した。データについては、現在分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究メンバーで打ち合わせやメール等のやりとりを随時実施し、研究内容や方法を検討した。必要に応じて、研究補助者の協力を得ることができ、調査をスムーズに進めることができた。 【研究1】幼児初期の保育環境と指導方法の調査は、1,2歳児クラスの担任保育者、または園長等に対して、身体を動かす環境に関する調査を実施した。 【研究2】保育施設場面における幼児初期の移動的・平衡的運動の現状と発達を把握するために以下の調査を実施した。 (1)予定していた検査に加え、Movement Environment Rating Scale (MOVERS) for 2-6years-olds provision等を参考に粗大運動に関して作成した項目を子ども一人ひとりに保育者に評定してもらい、聞き取りを行った。(2)この3施設を対象に、1,2歳児クラスの保育観察とビデオ撮影を行い、活動の内容や場面、時間と、指導内容等を記録した。(3)担任に一日の保育の流れや保育活動、特に園庭での活動や散歩に出かける目的や活動内容、場所、頻度等、戸外の活動の実態について記入してもらった。(4)3軸加速度計つき活動量計を装着して、観察時に身体活動量と活動強度の測定を行った。 【研究3】さらに1歳児、2歳児の動きの実態を明らかにするために、0.1歳児クラスの子どもを対象に身体活動量と活動強度の測定、保育観察、および運動発達項目に関する調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、29-30年度の研究結果をもとに、以下のように研究を進める。 (1)29-30年度に実施した研究の分析および、研究成果の公表を行う。文献調査、保育環境調査、幼児の実態調査の分析・検討を進め、学会等で発表する。また成果を論文としてまとめる。 (2)29-30年度の調査の分析結果をもとに保育環境調査を実施する。保育環境の現状を明らかにするとともに、保育方法や保育環境構成の意識や配慮などについて担任保育者に聞き取り調査を実施する。観察記録を研究補助者の協力を依頼して、効率的な調査の実施ができるようにする。 (3)これまで実施した質問紙調査や保育観察、幼児の身体活動量調査等から、幼児初期の移動的運動、平衡的運動の発達過程の特徴を検討し、幼児の動きを引き出せそうな可能性がある室内環境や指導方法などを見出す。その研究成果を元に、幼児初期の運動発達を促進するために必要十分な保育環境、内容、指導方法の解明・提唱を行う。
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Causes of Carryover |
調査協力園の事情によって調査時期が変更になり、平成31年3月末まで調査を実施した。そのため平成30年度内に結果を報告することができず、今年度調査協力施設に調査結果を説明する必要が生じた。そのことに伴う旅費や物品費、および、学会等での研究発表するための旅費・参加費等に充当するため。
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