2018 Fiscal Year Research-status Report
Associations between sleep patterns and neurodevelopment in early childhood: a birth cohort study
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17K01892
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
奥村 明美 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (40767943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高貝 就 浜松医科大学, 医学部, 特任教授 (10447807)
土屋 賢治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (20362189) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳幼児 / 睡眠 / 神経発達 / 潜在成長曲線モデル / ASD / ADHD |
Outline of Annual Research Achievements |
子どもの良好な発達にとって睡眠は重要な要素であるが、わが国では諸外国と比較して乳幼児の就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い傾向にある。このような乳幼児期の睡眠習慣がその後の児の神経発達にどのような影響を及ぼしているかについて、本研究では、一般人口を反映した浜松母と子の出生コホート(HBC study)を用いて乳幼児期から児童期まで睡眠の様相と神経発達の変化を縦断的に追跡し、乳幼児期の睡眠がその後の神経発達に及ぼす影響について検証している。 研究1.【8歳までの出生コホートの追跡】では、浜松母と子の出生コホート (HBC)に継続参加の承諾を得た約1,000名の児とその母親を対象としてい。8歳 (小学校3年生)時に、母子で検査室に来室していただき、直接面接によりBISQによる睡眠の評価とWISC- IVによる神経発達の評価している。 得られたデータは潜在曲線モデルで統計的に解析され、睡眠の偏りと神経発達の縦断的な変化との関連を検証した。その結果、生後10カ月で入眠時刻の遅い群は標準的な減と比較して生後32か月までの表出言語の発達が遅れることを見出した。 研究2.【乳幼児期の就寝時刻後退とADHD・ASDとの関連】では、生後60カ月と8歳の直接面接検査で、ADHD RS-IVによるADHDの評価と、ADOS-2、SRS-2および、分担研究者らが開発したGazeFinder (視覚情報処理の測量機器)によるASDの評価を施行している。得られたデータは潜在曲線モデルで統計的解析することにより、睡眠の偏りと神経発達の縦断的な変化との関連及びADHD・ASD児の特異的睡眠パターンの有無を検証している。 養育環境等の睡眠の背景要因との関連についても検討を進め、乳幼児をとりまく家庭的背景や養育・睡眠環境についても考察を加えることで、乳幼児期の健全な睡眠を保障するための予防的介入や社会政策への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【発達検査の実施】出生コホート参加承諾を得た参加者全員を対象とした生後60カ月での直接面接による発達検査施行を、研究分担者とともに全て完了した。対象者のうち926名(78.9%)についてMullen Scales of Early Learningによる神経発達評価、Vineland-II 適応行動尺度による適応機能発達評価、ADOS-2による自閉スペクトラム症の査定、ADHD RS-IVによるADHDの査定、GazeFinder (視覚情報処理の測量機器)を用いた社会性発達評価の測定データを得た。 加えて、8歳時での直接面接による発達検査施行については、平成30年度までに8歳となった対象児のうち529名の測定を終了し、BISQによる睡眠の評価、WISC-IVによる知的能力評価、SRS-2による自閉スペクトラム症の査定、ADHD RS-IVによるADHDの査定、GazeFinder (視覚情報処理の測量機器)を用いた社会性発達評価の測定データを得た。 【データ解析】平成30年度末時点で生後48カ月までの全データ入力、およびデータクリーニングを完了した。さらに、生後48カ月、および8歳での測定データについても順次データ入力を並行して進めており、乳幼児期の睡眠パターンと神経発達の縦断的な発達、知的能力、ADHD・ASDの発達障害との関連について統計学的解析による検討を行っている。 【学会発表および論文執筆】これらのデータをもとに、生後10, 32カ月の就寝時刻および睡眠時間と、生後10カ月から32カ月の神経発達の縦断的な変化との関連について、潜在成長モデルを用いた統計解析を行った。その結果、生後10カ月での就寝時刻後退が、その後の神経発達の遅れと関連することが明らかとなった。この結果は第119回日本小児精神神経学会で報告した。また、現在は研究分担者、および連携研究者の指導助言をもとに考察を深め、英文査読付きジャーナルでの掲載を目指して論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
【発達検査の実施】出生コホート対象者約1000名のうち、未施行の373名に対し、8歳の発達検査を研究分担者とともに直接面接により施行し、継続して測定を行う。 【データ解析】施行済みデータを順次入力し、入力完了後速やかにクリーニングを行う。統計的解析では生後10カ月の就寝時刻および睡眠時間と、生後10カ月から38カ月のMSELスコアの縦断的な変化との関連を検討には、潜在成長モデルを用いて解析を行う。生後10カ月から38カ月にわたる6回のMSELスコア測定値から、この期間のスコアの縦断的な変化量を潜在成長曲線によって算出し、成長度合いの変化量と、生後10カ月時の就寝時刻及び夜間睡眠時間との関連について検討する。潜在クラス成長モデルを用いて生後10~32カ月における睡眠の縦断的変化から、乳幼児期の睡眠パターンの下位集団を特定する。これらの睡眠パターンとMSELによる神経発達の縦断的な発達、WPPSI、WISC-IVによる知的能力、ADHD・ASDの発達障害との関連を検討することに加え、乳幼児期の睡眠に影響を与えるメディアへの曝露や母親の就労等を含む養育環境や父親母親の属性など、背景要因との関連についても検討を行う。 【検討と考察】 データ解析結果をもとに連携研究者の指導助言を受けながら、検討を加えてまとめ、考察を深める。乳児期・幼児期の睡眠が児の神経発達に与える影響は社会が注目する領域であり、HBCの長期コホートデータからもたらされる成果は学術的な意義のみならず国民生活全体への影響と貢献が期待される。 研究により得られた成果は、随時、児童精神、小児神経及び疫学、脳認知機能に関わる国内外の専門誌をはじめ、国内および、国際学会で広く公表していく予定である。また、積極的なプレスリリース及び浜松医科大学のウェブ上でも、随時一般向けに公表していく(http://rccmd.org/)。
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Causes of Carryover |
当該年度の所要額に、参加者への謝礼とデータ入力作業人件費を見込んでいたが、参加者への謝礼については、連携研究者および研究分担者の研究費からの充当が一部可能となった。また、データ入力作業については、研究分担者や所属先のスタッフと協力して進めることで、専任者を雇用しなくても対応することができた。次年度は、直接面接による検査施行をさらに進めるため参加者への謝礼が必要になることと、蓄積されたデータは膨大であり、新たにデータ入力作業をする人員を確保するための人件費が必要となるため、次年度使用額が生じた。
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