2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K01893
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
西村 倫子 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (30773791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 教使 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (80206937)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 学校風土 / 項目反応理論 / 情動行動 / いじめ / 不登校 |
Outline of Annual Research Achievements |
いじめや不登校をはじめ、教育現場における子どもの情動行動の問題への対応は喫緊の課題である。本研究は、教育現場における課題を正確に把握するためのデータの蓄積に主眼を置いている。この際、個々の児童生徒が抱える問題のみならず、学校風土など学校全体が内包する特性にも焦点を当てる。このため、学校風土を測定する尺度を開発することを第一の目的とする。そしていじめや不登校について、児童生徒の情動行動、家庭背景、学校背景から多面的かつ縦断的にとらえることを第二の目的とする。 学校風土尺度の開発について、欧米で開発され、信頼性・妥当性が確認された3つの尺度から日本の学校現場に即した項目を抜粋し、さらに国立教育政策研究所が実施する全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙と、福岡県で実施された「学校生活・環境多面的調査」質問紙の中から学校風土に関連する項目を抜粋し、計101項目を調査対象とした。最初に、文部科学省委託事業「子どもみんなプロジェクト」ワーキンググループにおいて検討を行い、適当ではないと考えられる17項目を除外した。残り84項目について、H市内の小中学校生394名を対象に調査を行い、5件法による回答を得た。項目反応理論を用いて検討を行い、各項目の識別力の値が低く、各回答から学校風土に対する感じ方を十分識別できていない項目、困難度の値が高く、極端にネガティブな感じ方を持っている場合しか回答がないような項目を除外した。また、各項目のitem information function及びitem characteristic curvesから、ほとんど情報量を持たない項目や、5つの回答カテゴリが十分に機能していない項目を除外した。最終的に52項目を除外し、残り32項目を「日本学校風土尺度(Japanese School Climate scale; JaSC)」とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
諸外国で用いられている尺度と、日本で用いられている尺度から項目を収集し、項目反応理論による検討を行い、日本学校風土尺度(JaSC)の開発を行った。さらに大規模なサンプルで本尺度の因子構造を確認し、本尺度のスコアといじめなどの子どもの情動行動の問題との関連を調べるため、H市の小中学校27校(小学校19校、中学校8校)、H市に隣接するI市の小中学校8校(小学校5校、中学校3校)、計35校に協力を得て、2074名の小中学生を対象に、JaSCを用いた調査を行った。H市、I市の両サンプルを対象に、それぞれ探索的因子分析と、確認的因子分析を用いた多母集団同時分析を行い、因子構造の確認を行っている。また、I市のサンプルでは、児童生徒を対象としたいじめ調査、保護者を対象にSDQ(子どもの強さと困難さアンケート)を用いた情動・行動問題の調査も行っている。これらをもとに、児童生徒個人の学校風土に対する感じ方にどのような要因が影響を与えるのか、multilevel modelingを用いて検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降も調査を継続し、以下のことについて解析を進める予定である。 ①いじめ被害・加害についての危険因子と保護因子の探索:いじめ被害(victim)、いじめ加害(bully)、被害・加害(bully/victim)それぞれの群に属する児童生徒について、いじめに関係していない児童生徒と比較して、何が危険因子となるかを明らかにする。また、bully/victim群については、どの群からの移行がみられるのかといった、時系列による変化について明らかにする。Bullyまたはvictim群からbully/victim群への移行がみられる場合、様態を悪化させる危険因子が何かを明らかにする。また、bullyの状態が継続する場合(慢性的ないじめ)の危険因子についても明らかにする。一方で、いじめへの関与が解消する場合は、何が保護因子として働いたのかについても明らかにする。解析にはMultilevel mixed modelを用い、学校間のばらつきを考慮したモデルで解析を行う。 ②不登校傾向のタイプの特定と危険因子の探索:不登校傾向の時系列による変化について、あるいは不登校傾向に至った要因(情動・行動の問題等に起因するもの、家庭背景に起因するもの、学校でのいじめや人間関係に起因するもの等)について、どのようなタイプに分類されるかを明らかにする。タイプの特定にはlatent class growth analysisを用いる。また、Multilevel mixed modelを用いて、特定されたタイプごとの危険因子の探索を行う。 ③児童生徒、保護者、教師間の認識の違いについて:いじめと不登校について、三者間での認識のズレについて比較を行う。解析にはconditional logistic regressionを用いる。
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Causes of Carryover |
調査実施対象者が当初予定していたより少なくなり、印刷費、データ入力費等に差額が生じた。また人件費・旅費に予算を充てることができなかった。今年度以降は、調査補助の人件費や、出張旅費等に予算を使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)