2019 Fiscal Year Research-status Report
保育における「おもしろさ」の生成過程に関する現象学的研究:園文化の視点から
Project/Area Number |
17K01897
|
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
東村 知子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (30432587)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 保育 / 遊び / おもしろさ / 園文化 / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「保育における『おもしろさ』は実践の中でいかに生み出されるか」を「園文化」という視点から明らかにしようとするものである。令和元年度は、協力園(A園・B園)でのデータ収集を継続しながら、保育実践と園文化を考える鍵となる「関係」という概念について、理論的検討を行った。 データ収集については、前年度から引き続き行っている幼児クラスの定期的な保育観察と保育者のインフォーマルインタビュー、園内研究会や職員研修会への参加に加え、食と保育との関わり、職員間の情報共有、子どもの安全と遊びのおもしろさのバランスという三つの新たな視点から、給食室や情報共有に使用されているツールに着目した観察も行った。これらを通して、表にあらわれる保育や遊びのおもしろさの背景にあり、それを支えている仕組みやツールに焦点をあてる必要性が明らかになった。A園で収集したデータの一部については、オランダで行われた国際学会International Learning Festivalでのワークショップ企画で発表し、参加者との意見交流を行った。また、B園の保育者による保育学会でのポスター発表にも理論的な観点から協力した。「関係」概念の理論的検討については、社会構成主義の第一人者であるケネス・ガーゲンの著書Relational Beingを翻訳し(2020年8月に出版予定)、組織学会年次大会でガーゲンを招いて実施されたシンポジウムで話題提供を行った。 令和元年度は理論的検討に多くの時間を要し、収集したデータの分析が十分にできなかったため、研究期間延長を申請した。次年度は、これまで収集したデータの分析を行い、それらを統合することで、A園・B園の園文化と、その中で保育における「おもしろさ」がいかに生み出されているかをまとめていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述の通り、協力園での定期的なデータ収集は行ったものの、理論的検討に予想以上に多くの時間を要し、収集してきたデータの分析が十分にできなかったため、研究期間延長を申請した。そのため、遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去3年間に実施してきたA園・B園での保育観察と研修会の参与観察のデータに加え、保育者への追加インタビューを実施し、分析を行う。新型コロナウィルスへの対応により園の訪問が難しくなっているため、インタビューはオンラインでの実施も検討している。保育場面のデータ分析は、特に2年間にわたり継続的に観察を行ってきたクラスのデータから、子どもたちの関係がどのように作られ変化したか、保育者はどのような援助を行ってきたか、それらが遊びと保育のおもしろさにどのように関わっているかに焦点をあてて行う。また研修会および保育者のインタビューデータは、保育者が子どもや保育についてどのように捉え、語る(語り合う)のか、という観点から検討する。それぞれの園での分析結果を統合して園文化を描き出すとともに、異なる園のデータの比較、および分析結果を踏まえたフィードバック・インタビューから、園文化や遊びと保育のおもしろさの園による違いおよび共通点についても考察する。
|
Causes of Carryover |
予定していた出張が中止になったため、次年度使用額が生じた。期間延長で翌年度分の助成金はないため、データ分析に必要な物品及び書籍の購入に充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)